第3話 レベルアップ

「結構デカいな」


街中で人気のない場所に移動し、転移を使って魔物の居る森へと移動する。

普通に歩いたら1時間以上かかる距離だが、転移のお陰で一瞬で済むのが凄く良い。


更に、俺には広域サーチがある。

半径一キロ以内に居るターゲットを見つけ、転移で近くに移動してその様子を伺う。


角ウサギは呑気に地面に生えている草を食っていた。

その体長は1メートル近くあり、想像よりかなりデカい――サーチでは細かいサイズまで乗ってはいなかった。

額の角も30センチ程はあるだろうか。

薄い青色表示だったので俺よりは弱いのだろうが、素手で戦ったら負けてしまう可能性大だ。


まあ勿論、素手で挑む気なんてないけどな。


俺の腰には、街で購入した剣が下がっていた。

それを引き抜き、そして転移する。


「そりゃ!」


瞬時に背後に現れた俺に、魔物は気づかない。

俺は手にした剣を、全力でその無防備な角ウサギへと振るう。


「ぴぎゃ!?」


振るった剣が、角ウサギの背中を大きく切り裂く。

そのまま魔物は倒れ込み、動かなくなる。


「不意打ちなら、まあ楽勝だな」


初討伐は、あっけない程あっけなく終わった。


「さて、処理するか」


俺は太い木の枝に、事前に用意していた紐で角ウサギの死体を足から吊るす。

そして血ぬきの為に、その首筋を切り裂いた。

まあ殺した際の背中の傷からでも血は抜けてくれそうだったが、念には念を入れて、だ。


「内臓っと……」


俺は吊るしてある死体を左手で押さえ、右手に持ったナイフで今度は腹部を裂く。

そして腸などの端を切り裂き、手早く内臓を取り出した。


こういうのに慣れてるのは、爺ちゃんが狩猟免許を持っていたからだ。

子供の頃にはそれによくつき合わされて、血抜きなんかを手伝っていた。

今だと、そういうのは児童虐待扱いされそうだけどな。


「しかし、これで2、000円か。俺は転移があるから良いけど、普通なら絶対やらないだろうな」


ここまでなら、まあそれ程でもない。

多分弱い魔物だろうからな。

問題はこの後だ。


処理した角ウサギは、街まで持ち換える必要があった。

重さにして約20キロ弱。

これ持って狩場から帰るだけで、確実に2、000円以上の労力が発生していると思われる。


少なくとも、俺はこんな重い物担いで1時間も歩きたくねーぞ。


「ま……取りあえずこいつはここに吊るしておいて、他のを狩りに行くとしようか」


今日の目的はレベルアップだ。

上がると色々と能力が上がる、ゲーム的なアレである。

折角異世界に来たのだから、その辺りも体験しておきたい。


その後、サーチと転移で3匹ほどウサギを狩った所でレベルが上がった。


「お、すげー力があがったな」


試しに今狩った角ウサギを持ちあげて見た。

さっきまでは凄く重く感じていたのに、今では片手で軽く振り回せる程だ。


「レベルアップスゲー」


これなら角ウサギを担いで帰っても、それ程苦にはならないだろう。

成程。

レベル2でこれなら、レベル3や4ならもっと運搬は楽になる。

数匹纏めて運べるのなら、実は1匹2,000円と言うのもそこまで酷くはないのかもしれない。


……いやまあ、普通に依頼が残りまくってた時点でそれは無いか。

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