第6話 一番怖いのはやっぱり人間です。

 森から脱出し、漸く都市に到着した俺は彼に手招きされ、そのまま後を付いていった。

 するといつの間にか王宮のような場所に来たと思えば、黙ってついて行くと円柱型に本棚が天井高くそびえ立つ、図書館らしき場所に来る。


 そしてさらにその奥の1つの扉を開くと、長い白髭を生やした丸い片眼鏡をするお爺さんの所まで案内された。


「どこ、ここ?」


「ᛁᛏ ᛁᛋ ᚨ ᛚᛁᛒᚱᚨᚱᚣ」


「האם אתה דוגמה」


 そのお爺さんの言葉も相変わらず分からない。というかお爺さんの方がより発音が複雑に聞こえた。

 そう俺はお爺さんの小部屋を見渡していると、お爺さんからとてつも無く聞き覚えのある発音が聞こえて来た。


「コトバ、ワカル?」


「え!? 日本語喋れんの!?」


「ココ、コトバ、アル」


 異様にカタコトすぎて、自分で意味を汲まねえと分からねえレベルだなこれ。

 異世界に日本語があるっつーことは、誰かが日本語を教えたに違いねえよな?


 にしてももっと教えるべきことあったろ!? とりあえず会話が成立すれば良いってレベルだぞこれ……。


 さてと、あのお爺さんが持っている本であれば、異世界人にも言葉が通じる訳だが……今更通じてもな、不便でしかないんだよなぁ……。


 俺にはスキルに言語理解もある。ここは異世界人の本を読む方がスキル成長するんじゃね?


「えっと……それで?」


「コレ、ツカウ、コトバ、ツタエル」


 あーそういうことね。はいはい。


「いや、それは要らないからとにかくなんでも良い。本を読ませてくれ。いくら翻訳書があってもそれを持ち歩くのは不便にも程があるだろ」


「ワカッタ。ココ、ショモツ、ツカウ」


「あいよ」


 多分自由に使ってくれと言っているんだろう。なら今から片っ端から読み漁ってやる!


──────────────────

ショック死無効、光属性無効、恐怖無効、刺突耐性0.2%、食らいつき耐性0.3%、グロ耐性0.1%、精神的苦痛耐性10%、言語理解5.0%、獣耐性0.1%


 どうやら一冊読み切れば0.1%あがるようだ。つまりこれで俺は50冊読んだことになる。

 いやこれ、予想以上に疲れんぞ……? 特に腰と目が……。ふぅ……。


ショック死無効、光属性無効、恐怖無効、刺突耐性0.2%、食らいつき耐性0.3%、グロ耐性0.1%、精神的苦痛耐性10%、言語理解5.0%、獣耐性0.1%、疲労耐性0.1%


「うわあああぁ!! ゆったり本くらい読ませろやこの野郎!!」


 あーやべぇ。えーとここは都市に初めて到着したところか。図書館の場所なんて覚えてねぇぞ。まぁ、彼が教えてくれるから良いか。


「ᚹᚺᚨᛏ ᚺᚨᛈᛈᛖᚾᛖᛞ ᛋᚢᛞᛞᛖᚾᛚᚣ!?」


「気にするな」


 それから俺は図書館に案内され、言葉が通じるであろうお爺さんに訳を話して、本を読ませてくれることになったので、とにかく本を読みまくった。


 刻一刻と時間が過ぎる。体感的には二十四時間読んでるけど、疲れで朝を迎えたことが無いので、二日以上は経っていないことになる。

 その際に疲れる度に俺は死んだ。良い加減その頃には図書館の道は覚え、本を真っ先に血眼になるほどに読み漁った。


ショック死無効、光属性無効、恐怖無効、言語理解、刺突耐性0.2%、食らいつき耐性0.3%、グロ耐性0.1%、精神的苦痛耐性10%、獣耐性0.1%、疲労耐性3.0%


 累計1000冊! 読み終わったあああぁ! 俺は大声で叫びながら欠伸をすると、彼の声が鮮明に聞こえた。


「順調か?」


「うおおおぉぉ!? 分かる!」


「へぇ。すごいな。お前の言葉も理解できるようになったよ。そうかそうか……それは良かった。な!!」


「へ……!?」


 俺は何故か思いっきり棒のようなもので殴られた。

──────────────────

《エラー:想定外のバグが発生》

《バグの修正を完了しました。》

《エラー:一部データが破損していたため、データ削除・再構築をします》

《データの引き継ぎ完了》

──────────────────


 俺ははっと目を覚ます。たしか殴られたから死んだ筈だが、そこは都市の目の前では無かった。

 とても暗く、空気は冷たく、そして何故か俺は椅子に縛られ、拘束されていた。


「え!? 何これ?」


「やっと目を覚ましたか。良いか? これから俺の質問だけに答えろ。素直に答えれば、すぐに楽にしてやる。

 嘘はだめだぞ。嘘付いたら痛い目にあうからな」


「え……あ、はい」


「まず一つ。俺の部下が南東の森にて狩りに出掛けていた所、物乞いをするお前を見つけたようだ。部下は仕方がないと思ってお前を助けたようだが……。

 翌日になると、何故飢えていたのか分からない程に、弓矢の作成や、弓の扱いが卓越していたらしい。

 これはどういうことなんだ? サバイバル術を熟知していたのに、何故飢えた? あの森に特別な用事でもあったんだろう?」


「あー、忘れていただけですよ。あの人に教えてもらった時に、思い出したんです」


「ほう。教えてもらったか……ふん!」


「ぶっ!?」


ショック死無効、光属性無効、恐怖無効、言語理解、殴打耐性0.1%、刺突耐性0.2%、食らいつき耐性0.3%、グロ耐性0.1%、精神的苦痛耐性10%、獣耐性0.1%、疲労耐性3.0%

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