4章 1話 2人の魔法使い1

ファンデーションの完成を祝して最後に皆で集まりパーティーをする事になった。

研究所の横にテーブルを何個も置いて、料理を持ち寄り、お酒を飲んで

皆がお互いを労い合って楽しい時間が流れた。

最初は本当に祝う雰囲気だったが、時間が経つにつれて

大変だったけれど充実した日々が今日で最後なのだと実感して

嬉しさよりも悲しさが上回って来た。


日が暮れて、皆が居る場所から一人離れて居るユリウスにサナが声を掛けた。

「私達、これからどうなるんでしょうね」

「どうって?生きるか死ぬかじゃないのか?」

「うーん…そうなんですけど…生きられるとしての未来を全然考えてなくて。そもそも私はこのせか…国で、メイクが出来るとは思っていなくて。だからメイクを出来ただけで、もう夢が叶っているようなものなんです」

サナの話をユリウスは何も言わずに聞いている。

空気が澄み切って、抜ける様な月夜下で話していると

サナは最初の隣同士の牢獄で話した日を思い出していた。


「もう化粧品はこの国の貿易品になりつつあるし、これからも生産を続ける事になると思います。多分私はこれからも開発に携わっていくでしょう。でもユリウスさんは、好きにして良いんですよ」

その言葉の後、いつも言葉が溢れかえる二人の間に初めて長い沈黙が流れた。


その沈黙を破ったのはユリウスの口から発せられた「あぁ」という言葉とも言えない短い音だった。



王女に完成品を披露する当日

城には使用人違が全員揃っていた。

当然カタリナや陛下の執事のミゲル、料理長のダンテにブラントとフランの姿もあった。

カタリナはサナに近付き握手を求めたが、その手は恐怖で震えていた。

「頑張ってね…」

「大丈夫よカタリナ。いつもとやる事は変わらないわ」

「そうかも知れないけど…」

尚もカタリナは心配そうだった。これからの行いで友人が処刑されるかもしれない状況で完全に不安を取り除く事など出来る訳がない。

心配からいつまでもサナの手を離せないでいるカタリナに、ユリウスが歩み寄る。

「もう俺達が出来る事は全てやったはずだ。後はサナを信じよう」

カタリナは目に浮かぶ涙を押さえるように拭うと、いつもの笑顔に戻り

「えぇ、そうね。頑張って」

と送り出してくれた。

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