3章 4話 赤の女王4

研究室に戻り、皆に陛下が喜んでくれた事を報告したが、喜びに浸っている間もなくまたファンデーション作りの最終調整に戻った。

それでも皆の胸にあるのは、迫る死への恐怖よりも人を喜ばせる快感だった。


数日後

「自分達の作ったもので、まさか女王陛下が喜んでくれる日が来るなんてな」

「偶然私達が処刑対象になっていなければ、一生出来ない体験だったでしょうね」

そう口々に言い合いながら作業をしていると

研究所のドアが小さくノックされた。


1番近くに居たミアが開けると、そこには女王陛下の専属執事のミゲル立っていた。

「え!?ミゲルさんどうされました!?」

「今日は皆様にご報告があり、参りました。突然の来訪の御無礼お詫び申し上げます」

「いえいえ…あ、皆さんこちら女王陛下の専属執事のミゲルさんです」

ミゲルは上品なお辞儀をすると、背筋にピッと力を入れた

「今日は皆様にお礼を申し上げたくて参りました。女王陛下の容態が、回復傾向にあります」

その言葉に一瞬静まり返ったが

ドッと爆発したように研究所内は喜びの感嘆詞で溢れ返った。


「陛下はご自身の【ネイル】を大層気に入られて、ネイルを見ながら食事をするのが楽しくなったのかご自身の手で食事を採れるようになり、起き上がって読書まで出来るようになって…読書の合間ですら、ご自身の爪を嬉しそうに眺めていらっしゃいました」

その言葉を皆、目を潤ませながら聞いていた。

「化粧が病気を治した訳ではありませんが、女王陛下の容態を回復させたのは間違いなくあの【ネイル】のお陰です。ありがとうございました」


突然大工のアーロンが口を開いた

「俺は自分の命助かる為に化粧品を作ってたけどよ……まさか化粧品が他人の命を救うなんて思って無かったよ…」


その言葉に皆が頷く。


「もう少しです!今度は王女を救う番ですよ!」

サナが満面の笑顔で叫ぶと、皆も賛同の雄叫びで返した。


ミゲルからの嬉しい報告で更に士気が上がったサナ達は、作業スピードも今までより上がった。




そして、その報告から3日後

_____ファンデーションが完成した。

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