7-AIandW-加賀癒し

「あ・・・ぅあ」


あ・・・ありのまま今起こった事を話すぜ!

「艦娘みんなが寮で寝ている深夜、誰も居ないはずの工廠から歌声が聞こえてきたから注意しにいったんだが、そこで加賀が歌っているのを見てな・・・赤面した加賀に僅か二秒で艦上戦闘機発艦及び攻撃を食らわされた」

な…何を言っているのかわからねーと思うが俺も何をされたのかわからなかった・・・。頭がどうにかなりそうだった・・・。

小口径主砲だとか潜水艦魚雷だとかそんなチャチなもんじゃあ断じてねぇ。もっと恐ろしいものの片鱗を味わったぜ・・・。


んで今いるところは医務室と。窓の外を見るとすでに日が昇っている事から、あそこで気絶してから多分六時間くらい経ったか。

「いやぁ、びっくりしましたねハハハハハ!」

幸いにして飛んできた瓦礫が頭に当たったのと爆風で皮膚がちょっと火傷しただけで命の危険は無い。いや。艦娘基準で言われてもね。

一応椅子に座れるくらいだからそこまでではない、のか?

とりあえず明石に包帯を巻かれる。消毒した腕の部位がちょっとだけ染みる。

「笑うな明石・・・。つーか工廠で何やってたんだよ」

明石がキャピと笑う。

「"誰が一番うまく歌えるか!?カラオーケストラ大会"ですね☆」

それに釣られ鈴谷も明石と同じポーズをして「ですね!」と言い笑う。

ツッコみたいところが沢山あるんだが・・・とりあえず無邪気に笑うな、明石と鈴谷よ。

「で提案者は誰だよ」

「ああー。うん。それ、は」

質問に対して鈴谷が言い渋っていると、医務室の扉がゆっくりと開けられる音が聞こえてきた。

「ご、ごめんなさい、提督」

開けられた扉の方を見ると、そこには加賀が立っていた。


いつものように冷静沈着な表情だが、その顔色は少し青ざめていた。

「私が・・・提案したんです」

加賀は申し訳なさそうな顔をして、しかしはっきりと言った。

俺はため息をつく。まあ雰囲気からして察していたけどさ。

「お前なぁ。こんな時間に工廠なんて使ってるから何かと思ったぞ」

「ごめんなさい・・・」

しゅんとした様子で謝る加賀。

俺はもう一度大きくため息をついた後、「別に怒ってねえよ」と言ってやった。

「ほ、本当ですか?」

「嘘ついてどうする」

「よかった・・・」

安心したように胸を撫で下ろす加賀。

そして何故か明石がドヤァという擬音語が見えるような得意げな笑みを浮かべている。なんなんだ一体。

「それで、だ。加賀は何を歌ってたんだ?」

加賀は一度俯いて考え込んだ後、顔を赤くして再び口を開いた。

「・・・か、加賀岬、です」

「・・・そ、うか」

まさかのそれ。

加賀って意外と情熱的な曲歌うタイプなのか? そういえばこの前第六駆逐隊に頼まれて一緒にカラオケに連れてった時も、加賀は演歌とかばっかり歌ってた気がする。

「私も歌いたいなって思ってましたけど、なかなか機会が無かったんですよねー」

明石が言う。確かに鎮守府内で艦娘が歌える場所は少ない。食堂と娯楽室は基本立ち入り禁止だし、かといって自室で大声出して歌ったら隣室に迷惑がかかるだろうしな。

「でも加賀さんがどうしてもっていうから、私達と一緒に歌いましょう!って工廠で歌うことにしたの!」

えへへと笑う鈴谷。こいつらが夜中にこっそり工廠に行ってたのはそういうことらしい。

俺としては特に止める理由も無いので「程々にしろよ」とだけ言っておいた。とはいっても報告はしておく事も言うが。

ちょうど話しを終えると明石の携帯が鳴る。

「おっと、工廠に北上さん置いてきたんだった。ヘルプ来てるからちょっと行ってくるわ」

「あー、そういえば私、時雨ちゃんに演習の指導頼まれてんだった。行かないと」

ぺこりと頭を下げてから去っていく二人を見送る。

「ふぅ。ったく、騒がしい奴らだ」

そう思いながら椅子に深く腰掛ける。すると、不意に俺の服の裾が引っ張られた。見ると、加賀が俺の顔をじっと見つめている。

「どした?」

加賀は何も言わずに俺の隣に座った。

「提督。お願いがあるのですが」

「ん?何だよ改まって」

加賀が膝の上に手を置き、こちらに向き直った。真剣な表情をしている。

「今度、二人で出かけませんか?」

「・・・は?デートのお誘いならもっと色気のある言い方をしてくれ」

「ち、違いますっ。そうではなくて・・・」

加賀が慌てて否定する。冗談だったのだが真面目に受け取られてしまったようだ。

加賀が恥ずかしそうに目を逸らす。

「ただ、私は提督とお話したい事があるんです」

「何の話だよ」

「それは、その」

加賀にしては珍しく歯切れが悪い。普段のクールな彼女からは想像できない姿だ。

しばらく黙っていたが、やがて意を決したのか加賀が再び話し出した。

「最近、他の子ばかり構うので、その、少し不満なだけです」

「・・・はい?」

思わず聞き返す。

加賀が頬を赤らめて視線を逸らした。

「だから、最近の貴方は他の艦娘とよく遊んでいるでしょう。私だってたまには構ってほしいです」

拗ねたような口調で加賀が言った。

「お、おう」

俺は少し困惑しながら答える。

加賀が不機嫌そうな顔になった。

「どうしてそんな顔するんですか」

「いや、まあ・・・」

そりゃいきなりこんな事言われたら困るよなぁ。俺だってどう答えればいいかわかんねえよ。

しかし加賀は尚も食い下がってくる。

「私がこんな事を言っているのが変だとでも言いたいのですか?」

むっとした表情になる加賀。どうにも今日の彼女は感情的になっているようだった。

俺は頭を掻いてから口を開く。加賀は普段からあまり自分から意見を言う方ではない。それが今日は妙に積極的だ。まあ、それだけ寂しかったということなんだろうけどさ。

とりあえずここは加賀の話を聞こう。

俺は小さくため息をつくと、加賀に向かって言葉を投げかけた。

「なぁ加賀。お前はなんでそう思ったんだ?別に、いつも一緒にいるだろ」

「確かに一緒にいます。でも最近は出撃も遠征も別行動が多いじゃないですか」

「そうだな」

ここのところ加賀はずっと秘書艦として俺の傍にいる。だが先日の大規模作戦以降、俺は主力部隊を率いて北方AL海域の攻略をすることが多くなった。その為、今は鎮守府に残っている艦娘達と任務をこなすことが多くなっているのだ。

「私といてもつまらなさそうですし」

「おい」

流石にそこまで言われると俺でも傷つくぞ。

加賀の奴、完全にいじけモードに入っている。普段は冷静で大人びているくせに、こういう時は子供っぽくなるんだよな。

「あのな加賀。俺が加賀を嫌いなわけないだろ」

「本当ですか?本当に私の事が好きなのでしょうか」

「当たり前だろうが」

「じゃあ証明してください」

「どうやってだよ」

「・・・キスして下さい」

加賀が小さな声で呟いた。

「は?」

「私にキスをしてください」

真っ赤になりながら俺を見つめる加賀。俺は額に手を当てて大きな溜息をついた。

「お前、また何か勘違いしているだろ」

「えっ!?そ、そうだったんですか・・・」

途端にシュンとなる加賀。

「加賀さんってば可愛い~」

いつの間にか戻ってきた明石が扉を少し開けて楽しげに笑っていた。

明石の存在に気付いた加賀は首をゆっくりとそちらの方へ振り向かせる。

「い、いつから、そこ、に」

「うんにゃ?キスして下さいってとこから。ひゅー、情熱的!」

「ち、違うのです!これはそういう意味ではなくて」

慌てる加賀を見てクスリと笑う明石。

「わかっているよ。提督を困らせちゃダメだよ?」

「・・・うぅ」

「ま、頑張ってね。加賀ちゃん」

そう言って手を振りながら部屋を出ていく明石。

その後、加賀は俯きがちに医務室から出ていった。

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