第3話

「ヨナさん!」


誰だ?


「あぁ、君か…。ん?」


ヨナさんとやらがこちらを振り向いた。


え?スゲェ美人…。


「おい。この子は?」 


「はい!このガ…子供が盗みを働いたと聞いて捕縛しました!」


自信満々に行ってるけど、冤罪だからな。


「そうか…。こんな子供が…。」


「俺はやってないって言ってるだろ!事実確認もしないで!」


感情的になったふりをして、事実確認をしていないことを漏らす。


「何?どういうことだ?ブモ。」


はい、釣れた―!


「あ…いえ…その…」


ブモとやらがあたふたしてるぞ。


「どうやら…君にはじっくりと話を聞かないと行けないみたいだ。」


「はい…」


「君は少し待っていてくれ。」


そう言って、ヨナさんたちは扉の向こうに消えた。


◆◆◆


「済まない。待たせてしまったな。」


すこし経った後に、ヨナさんが帰ってきた。


どうやらブモは犯罪奴隷落ちになるらしい。


「衛兵に嘘の報告をした者は後で捕縛するので許してくれないか?」


「分かりました。」


「ありがとう。」


「とりあえず、ここから出してくれませんかね?」


「あ!済まない…。今すぐに出してやろう。」


出してもらった。 


「君の名前は?」


「ルイです。」


「ところで君は、一人できたのか?」


「はい。隣の小さい村から来ました。」


「お使いか?偉いな。では、お詫びも兼ねて送っていくとしよう。」


そんなことがあって、今ヨナさんと道を歩いていた。


でもいい人だよな。村まで送ってくれるって。


「ヨナさんは何で衛兵の仕事をしてるんですか?」


「さぁ?もう忘れてしまったな。」


「そ、そうなんですね。」


「ああ。」


……気まずい!


「ところで君の歳はいくつなんだ?」


「5歳です。」


「え!?そうなのか!?大人びているから、もっと上だと思ったのだが…。」


「よく言われます。」


そんなやり取りをしていると、いきなりヨナさんが腰に刺してある剣を抜いた。


「ど、どうしたんですか!?」


「魔物だ。」


え!?魔物!?


「どこにいるんですか!?」


「右の茂みに3体、向こうの木の上に2体、左の茂みに3体だ。」


確かによくよく見てみれば、何かがいる。


『武術スキル《索敵》を取得しました。』


良し!ラッキーだ。


「来るぞ!」


ヨナさんがそう叫んだ瞬間、醜い緑色の何かが現れたと思ったら、何かが持っている棍棒で殴られた。


「ルイくん!」


「だ、大丈夫です!」


大した痛みじゃない。


それよりも…。


「今殴ったのは何なんですか!?」


「ゴブリンだ。」


ゴブリン…魔物の中ではとても弱い部類だが、知恵があり、道具を用いて戦うと、父さんにきいたことがある。


「ルイくんは逃げろ。」


「何でですか?」


「私はまだしも、君はまだ5歳だ。ゴブリンには勝てない。」


「そんな…」


「大丈夫だ。すぐに行くから。」


「…分かりました。頑張ってください。」


「あぁ」


そして俺はそこで逃げ出した。


でも、本当にこれでいいのだろうか。


いや…多分良くないだろう。


彼女を見捨てるのか?


向こうの世界の両親が、俺にしたみたいに?


…絶対に嫌だ!


気づけば走り出していた。


そしてヨナさんのところに戻った。


まずい、ヨナさんがゴブリンに押さえつけられている!


俺は、更に勢いをつけて、ゴブリンに向けて、ナックルを放った。


その衝撃で、抑えつけていたゴブリンたちが、吹き飛んた。


「ルイくん!?何でここに!?」


「加勢しにきました。」


「私は逃げてと言った。」


「別にいいじゃないですか。それよりも今は…」


「そうだな…。今は向こうに集中しよう。」


残っているゴブリンはあと3体か。


「俺が態勢を崩すのでそこを剣で切りつけて下さい。」


「分かった!」


俺はスキル《体術》の効果、〈投技〉を使い背負投げのようにして、地面に叩きつけた。


そこに、すかさずヨナさんが剣で切りつける。


「まずは一匹ですね。」


「あぁ。」


油断していた。


ヒュッ!という風切り音が聞こえたと思ったら、錆びた剣で殴られた。


「ルイくん!


「ッ大丈夫です!」


幸い、錆びていたから、そんなに出血していないが、痛いものは痛い。


「お前!」


怒った俺は、がむしゃらに殴ったり蹴ったりした。


だが、俺のステータスの値が低いからか、決定打にはならない。


「ルイくん!使え!」


ヨナさんが何かを投げてきた。


「これって…」 


「短剣だ!それを使え!」


「有難うございます!」


ヨナさんから貰った短剣でゴブリンを斬りつける。


だがやっぱり浅い。


どうすれば…。


『武術スキル《短剣術》の熟練度が上がりました。〈刺突〉を獲得しました。』


これを使えば!


「〈刺突〉!」


俺が放った短剣術はゴブリンの胸部を貫いた。


そして、ゴブリンは動かなくなった。


「何とか勝てたな。」


ヨナさんもちょうど終わったみたいだな。


「ルイくん!君は凄いな!5歳でこの強さとは末恐ろしいよ。」


「いやぁ、それほどでも…。あ!ヨナさん。短剣貸してくれてありがとうございました。お返ししますね。」


「いや、その短剣は君にあげる。」


「え!?良いんですか!?」


「あぁ」


「ありがとうございます!」


「では君の家に送るぞ。」


「はい!お願いします。」


こうして、家路についた。




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