第36話 ボッタクリ場

1960年、アメリカ。

一人の男が武器屋に入る。

「銃を一つくれ。

安いのだ。安ければ安いだけいい」

「じゃあこいつだ」

一丁の拳銃をカウンターの上に置く店主。

「今ならたったの100ドル」

「おい、馬鹿にするな。

そいつはサタデーナイトスペシャルってやつじゃあないのか?

この辺りならガキでも持ってる銃だ。

その質ならもっと安いだろ。

50ドルでどうだ」

「悪いな、この店では100ドルで売ってるんだ。うちで一番安いのはこいつだ」

「ふざけるな、ボッタくるんじゃねぇ」

男は持っていた弾を早業で銃に込め、店長に向けてぶっ放す。


しかし、銃弾は放たれることなく暴発した。

銃身は弾け飛び、破片が男を襲う。

呻き声をあげる男。

「あんた、自分で言ったろ。

そいつはサタデーナイトスペシャル、とんでもない粗悪品だ。

こんなもんを100ドルで売ろうとするうちはとんでもねぇボッタクリ屋だが命までボッタくる気は本当は無かったんだぜ。

運が無かったね、旦那。

楽にしてやるよ」

別の銃を取り出して男の頭を撃ち抜く店主。

なんでもない土曜日の夜の事であった。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る