1.7

“どこに行くの?”


と言うと、倉庫だよ、と言われる。



倉庫?誘拐?なんてことも考えたが、私が誘拐されたところであげられるものなんて何も無いからメリットはない。


誘拐だって分かったらそう教えてあげよう、そう思いながら握られた手に力を込めた。


何故か、またコンビニに戻ると、大きな車の前にやってきた。


「ゆうちゃん、この子?」


「うん。いおりちゃんだよ。」


可愛いのに声が低いから男の子なんだと思う。その男の子が私の視線に合わせて屈んだ。


「初めましていおりちゃん。僕は紫苑って言います。北村紫苑。よろしくね」


ニコッと笑ってくれた紫苑くんにぺこりとしてからスマホを取り出して、


“花岡伊織です。お話が出来なくてごめんなさい。耳は聞こえてます。よろしくお願いします。”


と打って紫苑くんに携帯を見せた。


「んーん、僕は言葉じゃなくても話出来ることが嬉しいよ、ありがとういおりちゃん」


と、言ってくれた。


そんなこと言われたの、初めてだし笑ってくれるのも触れてくれるのもこの人たちが初めてだ。


ああ、嬉しいなぁ

この人たちは、優しいなぁ…


“ありがとう”


それだけ打った。






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