第13話 キング

ある日ある時ある場所で王様の話


オシャレで新しい物好きな王様がいました。

新しい服が欲しくなったので、仕立て屋さんを呼び出しこう言いました。

「誰も見たことも聞いたこともない新しい服を用意しなさい」

「そ……それは……」

「期限は1ヶ月」


仕立て屋さんは悩みました。そんな物用意できるはずないと……いよいよ期日が迫ったある日……

もうこれしかない……仕立て屋さんは一着の服を完成させたのです。あらゆる生地の切れはしを繋ぎ合わせ、ツギハギだらけの【誰も見たことも聞いたこともない】服を……


王様は世界に一着の服を気に入って、パレードまでして国民に自慢したのです。

仕立て屋さんはゴミ同然の服だと黙っているのが辛くなり、夜中にコッソリ穴を掘って叫んだのです。

「王様の服はタダの服〜」

ところが何故かその話は王様の耳にまで届き、再度仕立て屋さんは呼び出されました。


「仕立て屋 最近私の服に嫉妬しタダの服と吹聴する者たちがおる」

「そ……そのような者たちが……?」

「そこで【正直者にしか見えない服】を作りなさい」

「そ……それは……」

「期限は1ヶ月」


仕立て屋さんは再びの難題に悩みついに諦めました。

納品の日仕立て屋さんは言いました。

「こちらが正直者にしか見えない服でございます」

そこには何もありませんでしたが、誰もが無いとは言えず、王様は大層気に入りました。

「それではこれを【全国民に無料配布し着用を義務】とする 皆タダの服を着れてうれしかろう」


今度ばかりは仕立て屋さんが穴に埋めるまでもなく、国民が皆裸なのは一目瞭然であり、子どもたちは大人に聞きました。

『何で皆ハダカなの?』

大人たちは目を覚ましました。子どもたちに見えない服などあるわけがないと……

子どもたちのためにもこのままではダメだと……


その後……王様は玉座より降ろされ国外追放となり、国民は皆空へ叫んだのでした。

『王さまの国は我々の国〜!』


解説

ええまあ王さま繋がりですね。

王様の耳はロバの耳と裸の王様。

混ぜてみたら何だかダメな王様が誕生した話。

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