04.頭を撫でられると泣いてしまう死神

狂戦士きんにくだるまさんの言葉に、また歓声が沸く。そして恐れていた事態が発生する。


「告死天使様、私にも死をください」


「私にも」


「俺にも」


「僕にも」


大変だ、城内の人々が僕にみんな近づこうとする、怖い。


「皆の者、クイル様の力は分かったと思うが、みんなに一気にその力を使ったらクイル様が死んでしまう」


力うんぬん以前に知らない人に取り囲まれたら死神やっかいなニートは死んでしまうんだよ。コミュ症を舐めないでほしい。僕はシオン王子を見つめる、それは某金融会社のCMに出ていたチワワさんくらいうるんだ瞳で見つめた。


しかし、何故か何を誤解しているのかシオン王子がちょっと頬を赤らめているのが気になるけど、申し訳ないBL展開はノーセンキューでござる。


「おい、お前ら告死天使様を脅かすヤツは俺がぶっ殺す!!」


そして、何故か狂戦士きんにくだるまさんが僕を庇うように立っている。


「シオン殿下、早く告死天使様を別室へ」


「ああ、ありがとうスオウ。クイル様、こちらへ」


今にも僕に飛び掛かりそうな人々を制して、シオンさんと狂戦士きんにくだるまさん、もといどうやらスオウさんに連れられて僕は豪華な、天蓋付きのベッドとかがあるような広い部屋に連れてこられた。


元土蔵警備員かんきんされしものには広すぎて落ち着かない部屋だ。思わずソワソワしていると、申し訳なさそうにシオン王子が話しかけてきた。


「怯えさせてしまってすまない。この世界の者にとって「死」とは恵みなのです、祝福なのです。だから貴方の力は我々にとって喉から手が出るほど欲していたものなのです、だから誰もが皆、貴方に救いを求めてしまう」


「あ、あの……」


「でも、安心しろ。告死天使様のことは俺が必ず守る、あんたは俺のだからな」


スオウさんが、さっきの怖い顔ではなく、むしろ物凄い笑顔で僕に跪いている。多分これあれだ、臣下の礼ってヤツだね。前にアニメでみたことある。


しかし、スオウさんのような筋肉の権化に跪かれる日が来るなんて、ここは綺麗で強い女戦士が良かったという願望はとりあえずおいておいて、その手をとる。この人滅茶苦茶強そうだから味方ならすごく心強い。まぁ、まだ知らない人怖いモードひとみしりは解除されていないけども。


「あっ、ありがとうございます……」


震えながら答えたら、スオウさんが僕の頭を撫でた。その瞬間、僕は泣いてしまった。それは怖かったとかではなくって……


(田吾作さんのこと思い出した……)


死神やっかいなニートは基本的に村人から恐れられていたし、僕の面倒を見る使用人はみんな機械的だった。でも、田吾作さんだけは違った。僕に人間らしいことの多くを教えてくれたのもPCを調達したり組み立ててくれたのも田吾作さんだ。あの人が居なかったら僕はきっともっと何も感じられない人ではないものだったかもしれない。


その様子に何か勘違いしたように、スオウさんが焦る。


「どうして泣くんだ。何か俺が気に障ることしちまったか?」


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