海外行きたきゃ、ワクチン打ちな。

URABE

郷に入るには郷に従え


米国政府は、11月8日午前12時01分(米国東部標準時)以降に出発する米国便に搭乗する外国人は、新型コロナウイルスワクチン接種を完了した証明を提出することを義務付けた。これにより米国入国後の隔離は不要となる。


ちなみにワクチン接種完了証があるだけでは足りず、出国前72時間以内に行った検査での陰性証明も必要。さらに随時連絡が取れるようにCDC(米国疾病予防管理センター)への情報提供も必要となり、簡略化されるどころか手間が増える形となった。


とはいえ我々日本人にはそう感じるが、昨日まで入国禁止だった国(中国、イギリス、ヨーロッパ、ブラジル、インド、南アフリカなど30ヶ国以上)からしたら、どうやっても入国できなかったアメリカの地へ降り立つことができるわけで、非常にありがたい条件緩和といえるだろう。



実際にどのような条件の書類が必要なのかを調べてみると、ワクチン接種完了証に関しては、2回目の接種完了後14日が経過していることが条件となる。


この入国制限の変更については、先月25日にホワイトハウスより発表があり、今月8日から実施するとのことだった。しかしその時点ですでに渡米の予定を立てていた人でワクチン接種未完了の人にとっては、絶望的なルール改正となったのだ。



なおCDC(米国疾病予防管理センター)のサイトを見ると、ワクチン接種未完了でも入国できる人もいる。たとえば18歳未満の子ども、医学的にワクチン接種が不可能な人、緊急の渡航者で適時にワクチン接種を受けることができない人などがそれに該当する。

だが限定的な条件のため、それを証明する「書類」を入手するのに、これまた面倒な手続きが必要と思われる。よって、一般的な観光客やビジネストリップの場合はワクチン接種完了証がなければ「無理」という解釈で間違いない。



ちなみにANAのサイトでは、新型コロナワクチン接種を終えていない人について、


「米国へのフライトに搭乗することはできません(搭乗拒否)」


とハッキリと書かれていることからも、入管で揉めて強制送還されるくらいならワクチン接種を完了させなさい、という強いメッセージなのだろう。



もう一つの必要書類として、出国から72時間以内にPCR検査などにより、新型コロナ陰性であることを証明し、それを「有効なフォーマット」で作成してもらう必要がある。

フォーマットは外務省のサイトから入手できるが、これでなければ「搭乗拒否」もありうるというから恐ろしい。



今日、電話で話したアメリカ系航空会社の担当は、


「新ルールが今日からのスタートなので、我々も手探り状態です」


と、搭乗者と同じく振り回される側であることが伝わってくる。当該航空会社のアプリでは、パスポートを読み込むシステムが「謎のエラー」を起こした。さらに「米国滞在中の居所確認のための情報提供」はチェックイン時に行うため、通常のチェックインにプラスする形でシステム改変を行ったのだろうから、リアルな初日となる本日はてんやわんやの一日となっただろう。



「羽田空港で陰性証明を提出された際に、『所定のフォーマットではないから』と、出発地まで戻された方もいると聞きました」



なんということだ。検査は陰性にもかかわらず、フォーマットが外務省指定のものではないからと、出発地まで戻らせて再検査・再作成させるとは、本末転倒も甚だしい。

とはいえあまりに杜撰な証明内容であったのならば仕方ないが、いつものごとく「お役所仕事」でそれをやられたのでは腹の虫が治まらない。


必要なのは「検査結果が陰性」であることであり、所定のフォーマットを埋めることではないはずだから。



そして日米の陰性証明のフォーマットをよくよく見比べると、日本へ入国の際に必要な陰性証明の検査方法と、米国へ入国の際に必要なそれとは若干内容が異なる。

たとえば、米国では有効な検査方法として「抗原定性検査」「抗原定量検査」がともに認められているが、日本では「抗原定性検査」は認められていない。


また検体についても、日本は「咽頭ぬぐい液」は認められない。「鼻咽頭ぬぐい液」「唾液」「鼻咽頭ぬぐい液と咽頭ぬぐい液の混合」の3種類ならばOKらしい。素人にとっては「鼻」という字がつくかつかないか程度の違いだが、間違って「咽頭ぬぐい液」で検査をしてしまった日には、上陸拒否の可能性すらあるわけだ。



この他にも、国ごとに「誓約書」を提出しなければならないため、個人情報を惜しげもなく公開させられたり、誓いをたてさせられたりするのだ。



日本においては帰国後14日間(ワクチン完了者は10日間に短縮可能な措置あり)、My SOS(入国者健康居所確認アプリ)で常に居場所を監視される。そして毎日このアプリ経由で健康状態を報告し、さらに一日2回程度の居所確認をクリアしなければならない。


しかしこの「居所確認」がなんとも恐ろしいのだ。そもそもGPSで居場所を把握されているにもかかわらず、ビデオ通話がかかってくると、


「居所確認のため、ご自身の顔と背景が写るように撮影してください」


といわれて、おとなしく自宅にいるかどうかをチェックされるのだ。人によっては、


「カメラをぐるっと回して周辺の様子を写してください」


といわれることもあるようで、仮設スタジオではなく本物の自宅であることの確実な証明が必要となる。



――こんなこと、コロナ以外では使えるはずもないプライバシー侵害だ。コロナならば何でもあり、何でも従わなければならないのか。



コロナを中心に、テクノロジーの進化と汎用が加速度的に広がっている。それは決して悪いことではないし、むしろ推奨すべきことだ。

ただそれならそうと、本来の目的を正直に伝えてくれればいいのに、とは思う。

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