第2話 シェルター

シェルターにたどり着いた俺達はギリギリ中に入れてもらえた。

「ライ、遅すぎるだろ?あと少しで閉められていたぞ。」

そう言ってくるのは、整備科のヒキだった。

「その時はお前が開けてくれよ。」

「無理言うな、扉の強制解除に30分はかかる。」

「開けれるのが凄いけどな、それより此処には誰か仲間はいるか?」


「俺が見た中だが、砲撃科のダーイと操艦科のダル、あとは委員長のアヤカがいたぞ。」

「委員長がいるのか?あの人はお嬢様だからこの辺にはあまり来ないだろうに。」

「それが運悪く、通りかかったそうだ。」

「そりゃついてないな、このシェルターはオンボロでろくな設備がないのに。」

「確かに、って話をすれは委員長の登場だ。」


アヤカが俺達が話している事に気付きやって来る。


アヤカは家は世界規模の大企業の一人娘、当人も才色兼備であり、非の打ち所のないお嬢様であった。

その為、みんなに一目置かれていたのだが、

彼女の冷たく感じる雰囲気が人を寄せ付けず、真面目な性格が災いして、気が付くと人を纏める役を押し付けられる事が多々あった。

俺はガキの頃、ふとした事から仲良くなってはいたのだが、アヤカの今後を考えると、親無し、金無し、故郷無しの俺が友人として側にいると迷惑がかかると思い、この何年から距離をとっていたのだが・・・


「ライ!ご無事だったんですね。」

「簡単にはやられたりしないよ委員長。」

「委員長は止めてください。いつも言ってるでしょ、昔みたいにアヤカと呼んでくださいと。」


「いや、もう大人だからね。節度を守るべきかと。」

「それこそ、名前を呼ぶ方が正しいですよ。

さあ、ライ、アヤカと呼んでくださいませ。」

アヤカは俺を見つめてくる。


「ゴホン!ゴホン!ライさ~ん、私が背中にいるのを忘れないでくださいますか?」

ミラが自己主張してくる。

「な、な、な、何をなさっているのですかミラさん。」

「何って、ライさんに乗っていいのは私だけですよ。」


「ミラちゃん、それ何か違う。

委員長・・・」

「アヤカです!」

「いや委員長!」

「ア・ヤ・カ!」

「・・・アヤカ。」

「何でしょう?」

「ミラちゃんは体調悪いから背負って来たんだ、何処か横になれる所はないかな?」

「そうですね、結構人が集まってますから・・・」

アヤカは周囲を見回すが空いてるのはガラの悪そうなエリアだけだった。


アヤカが一瞬、見た方向にスペースがあるのに気付いた。

「なんだ、あるじゃないか。フウマ、あそこが空いてるぞ。」

「おっ、確かに空いてるな。行くか。」

「ちょ、ちょっとライ、あそこは危なくない?」

「大丈夫、知り合いだからな。」


俺は迷うことなく奥の空いている所に向かう。

「なんだテメェ、俺達にどけと言うつもりか?」

一番そと巻きにいた男が絡んでくる。

「どけ三下、おいリュウ、スペースを分けてくれ。」

俺は奥にいる、チンピラのボスに話しかける。

「なんだライか、テメェら場所を空けろ、俺の客だ。」

リュウは子分に命じてスペースを作ってくれる。

俺は支給品の毛布をミラの下に敷き、ミラを横にする。そして、その上からもう1枚ミラにかける。

「ライさん、ありがとうございます。」

「今は休んで、身体を治す事だね。フウマあとは頼むよ。俺はリュウに挨拶しておく。」

「ありがとう、おかげでミラも休めるよ。」

「俺達の中じゃないか、それより行ってくる。」


俺は場所を提供してくれたリュウに挨拶に来た。

そして、その上で状況を整理することにした。

リュウはコロニーのチンピラを纏める顔役の一人だ、以前喧嘩をして兄弟の盃を交わした俺の友人でもあった。

そんなリュウの元には子分を使った情報が色々集まってくる。


「わりぃな。」

「気持ち悪い礼など言うな、兄弟!

それより呑むか?」

リュウは盃を出してくる。

「今は止めとくよ、状況がわからん。お前は何か掴んでないか?」

「全然だな、わかっているのは所属不明の艦隊がいきなり現れ、砲撃してきたということだ。」

コロニーは一定間隔で振動している。

この事から砲撃は未だに終わってない事がわかる。

「お前の見込みはどうだ?持つと思うか?」

「難しい所だな、もともと護衛艦が少ないコロニーだ、援軍待ちになると思うが・・・」


「・・・リュウ、脱出手段は?」

「連絡を傍受した所、民間船で脱出準備を進めているようだが・・・」

「避難はシェルターからか。」

「そういう事だ、此処までは席が無いだろう。」

「リュウはのんびりしてるがいいのか?」

「行った所でどうせ俺達は乗せてもらえん、上流階級様からだからな。」

「違いないか・・・」

「それよりお前はどうする?俺にはお前の頭に期待したいが?」

「残念ながら情報が足りないな、今ある手は・・・」

俺は深く考える、状況は最悪なようだった、脱出船の準備を進めているということは、防衛は難しいのだろう。

たぶん防衛艦も脱出船が出たらその護衛で去りかねない。

ならどうする?

民間船は無い・・・


「ヒキ!ちょっと来てくれ!」

俺はヒキを呼び寄せる。

「なんだライ?」

「お前、港に入った時、もう一つ区画があると言ってたよな?」

「ああ、あの作りなら、もう一つある筈だ、配管もエネルギーも向かっていたからな。」


「俺もお前が言った時に調べたけど、あの奥の地図はなかった。

どう思う?」

「それなら研究区画か?そういえば噂レベルだが、何処かで新造艦を作っているとかあったな。」

「・・・リュウ、俺達がこのエリアに向かう事は出来るか?」

俺はコロニーの全体図を見ながら指差す。

「この場所なら・・・テツ!どうだ?」

リュウは子分の一人に確認する。

「行けますね、作業用通路が此処までは来てますし、この先には通路ではないですが一人分のスペースがあります。」

「よし、案内しろ!」

「へい!」

「リュウいいのか?あるかもわからない情報だぞ?」

「なにもしないよりは良いだろ?」


「みんな、急だが移動の準備を頼む。」

俺はミラを再度背負う。

「おい何処にいくんだ?」

フウマが質問してくる。

俺は此処にいるフウマ、ダーイ、ヒキ、ダル、アヤカとミラに事情を説明して、脱出の為に港を目指す事を伝える。


「お前の判断か、なら従うか。」

「お前の勘は当たるからな。」

「どうせ此処にいても暇だからな。」

「私はライさんに身を任せてます。」

「私だって、ライの決めた事なら従うわ!」

それぞれ俺と一緒に来ることを選ぶ。


「準備はいいか?車は表にあるからそれで港に向かうぞ。」

リュウはシェルターを開けようとするが当然のように他の住人が怯えながらも止めてくる。

「他のシェルターでは脱出が始まったそうだ。

此処にいても置いて行かれるだけだ、今のうちに港に向かった方がいい。

信じれないなら俺達が出たら直ぐに閉めたらいい。」

そう伝えるとリュウは迷うことなく扉を開けた。


「行くぞ!」

俺達は港を目指して進むのだった。

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