宇宙の彼方へ

カティ

第1話 プロローグ

人類が宇宙に出て千年、広大な宇宙は未だ未知の世界が広がっていた。

人の探究心はとどまる事を知らない、今なお未知の世界に向け人は探検をしている。


中には事故で命を落とすもの、新たな資源を見つけ、億万長者になるもの。

未知の人種に出会い友好を深めるもの、様々な者が宇宙の彼方を目指して旅立つのだ。


そして、コロニーに住む彼らもまた宇宙に夢を見出だし、時が来るのを待っていた・・・



俺はライ18歳、学生をしている。

夢は宇宙の彼方を調べる事だ!

だが、今は操船術を学んでいる。

知識や技術は裏切らない、必ず必要になる筈だ。


「こら、ライちゃんと勉強してるのか!」

俺に声をかけてきたのは親友のフウマ、夢を同じくしており、航海術を学んでいる。

まずは二人で船を手に入れ、貿易をして資金を稼ぎ、いずれは宇宙の彼方へ・・・

「おい、聞いているのか?」


「わりぃ、聞いてるよ、大丈夫だ、必要な免許はとれたさ!」

「全く、心配させるな、お前は実技はともかく学科が心配だったんだからな!」

「あはは・・・そっちはギリギリだったさ。」

「自慢することか!それより、夢が近付いたな。」

俺達は拳を合わせる。


「ああ、もうすぐだ、学校を卒業したらローンを組んで船を買うぞ。」

「当たり前だ、俺達なら何処にでもいける、二人で宇宙の彼方を見よう。」

俺とフウマは幼き頃からの夢に向かい走り出す予定だった・・・


そこに大きな振動が起こる。

「なんだ、地震か!」

「ライ、お前は馬鹿か!コロニーで地震なんか無い、揺れるとしたら隕石か・・・」


『緊急警報、当コロニーは未確認の軍の攻撃を受けております。

住人はシェルターに避難してください。

繰り返します・・・』


「おいおい、何処の奴だよ、このコロニーは中立だろ?」

「そんなことを言ってる場合か!早く避難するぞ。」

フウマは慌てている。

「フウマ落ち着け、まずは妹のミラちゃんを迎えに行こう。

今日、具合が悪くて休んでいるんだろ?」

「そ、そうだ!早く行かないと!」

俺達はミラがいるフウマの家に急ぐ。


「ミラ!」

フウマがミラの部屋に飛び込むと、避難しようとしたのか布団から出たところで倒れているミラがいた。

「お、お兄ちゃん・・・」

「さあ、今すぐ避難するぞ。」

「ま、待ってせめて着替えさせて・・・」

ミラは可愛い熊の着ぐるみパジャマを着ていた。


ミラはフウマの妹で13歳、フウマに似ず可愛らしく、家庭的な女の子だ、俺も遊びに来た時はご飯も食べさせてもらったりもしていた。


「そんなこと言っている場合か!」

「で、でも、こんな格好で外なんて・・・」

「ミラちゃん似合っているよ。凄く可愛い。」

ミラは俺の方を見て固まる。

「ラ、ライさん!来ていらっしゃったのですか!

あっ、ちょ、ちょっと待って、見ないでください。」

ミラは急に慌て出す。


「ミラちゃん、慌てているところ悪いけど、今は緊急事態なんだ、着替えをカバンに入れて避難しよう。

フウマ、非常食をカバンに入れておいてくれ、それと貴重品だ。」

「そんな時間・・・」

「いざという時に備えてだ、俺が家に帰る時間は無さそうだし、俺の分も頼むよ。

その間にミラちゃんの準備をしておく。」

「わかった!」

フウマはリビングに向かっていく。


「さて、ミラちゃんの準備をするか、まず簡単な服に着替えてくれるかな?

俺はその間に支度しておくから。」

「えっ?」

「さっきも行ったけど時間がないんだ、早く。」

「は、はい!」

ミラはそのまま着替えだす、その間に俺はミラのクローゼットからリュックに適当に何枚かの服、大きめのタオル、そして、下着を放り込む。

「あっ!下着はその・・・」

ミラの声に振り替えると下着姿のミラがいた。


「ミラちゃん急いで!」

「は、はい・・・」

ミラは顔を赤くしながらも着替え終る・・・


「み、みました?」

「何を?」

「私の下着すがた・・・」

「見たけど、今さら何を?この前まで一緒に風呂も入っていたじゃないか?」

「この前ってもう4年も前です!」

「今さらだよ、それよりほらリュックを背負って。」

「うー」

ミラは不満そうだが大人しく従ってくれる。


「フウマ準備はいいか?」

「おう、大丈夫だ!」

「よし、じゃあミラちゃん背中に乗って?」

「えっ?」

「早く。」

「はい。」

言われるままにミラは俺の背中に乗る。

俺はミラをおんぶして、フウマと合流した。


「ライ、いいのか?」

「お前の体力じゃミラちゃんを背負えないだろ?

それよりR地区のシェルターに向かおう。

あそこが閉まるのがこの辺りの最後の筈だ。」

「了解だ、ライありがとう。」

「何を言ってる、ミラの事は他人事じゃないだろ?

フウマに礼を言われる事じゃない。」

「それでもだ、ミラも大人しくしておけって、既に大人しいな。」

ミラは顔を真っ赤にしていた。

それを見てフウマは笑いそうになる。

「お兄ちゃん、あまり見ないで・・・」


「ミラちゃんしっかり掴まっているんだよ、少し急ぐからな。」

俺達はシェルターを目指して駆け出すのだった。


「ライ、ミラは重くないか?いつでも代わるぞ?」

「いや、全然軽いよ。それどころかいい香りがするな。」

「あわわ・・・すみません、昨日から熱があってお風呂も入れなくて・・・ごめんなさい、いつもはこんな事無いんですよ・・・」

ミラは恥ずかしそうにしている。


「いや全然いやな匂いじゃないよ。」

俺は鼻を嗅ごうとするが・・・

「嗅がないでください!」

ミラは止めてくる。


「くくく、汚い妹ですまない。」

フウマはからかうように笑っている。

「お兄ちゃん、そんなことないでしょ!ライさんの前で何を言ってるの!」

「そうだぞ、ミラちゃんはこんなに綺麗じゃないか?」

「そ、そんな、綺麗だなんて・・・」

ミラは少しモジモジする。

「ミラちゃん、危ないからしっかり掴まって!」

「は、はい。」

ミラはギュッと抱きついてくる。


「・・・フウマ。」

「なんだ?」

「ミラちゃんも大きくなったな?」

「何の話だ?」

フウマも首をかしげるが・・・


ミラは気付いたのか・・・

「ライさん・・・えい!」

ミラは更に胸を押し付けてくる。

「ミラちゃん当たっているよ!」

「当てているんです。

普段から乙女をからかっている罰です!

・・・それと私からのせめてものお礼です。」

ミラは最後の言葉はフウマに聞こえないように俺の耳元でささやき、首すじに軽くキスをした。


「ミ、ミラちゃん!」

俺に動揺が走る。

「罰なんです・・・少しは乙女の気持ちを大事にしてください。」

ミラは顔を赤くしながら俺の背中に顔を押し当てるのだった。

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