第28話 借金 5374万3490ゴル

「僕は【予知者】のニクラスです。」


「ニクラス!」


自分で素性を話すニクラス。


この人には自分で打ち明けた方がいいような気がしたのだ。



「おおーーーー!!

 あの【よた野郎】か!

 汚職貴族に詐欺師、すげえ組み合わせだな!!」


そう言って1人で爆笑するフリーダー。



テレージアの顔に怒りの色が見える。


自分のことはともかく、ニクラスの悪口は許せない。



「おっと、そんなに怒るなよ!

 冗談だよ冗談!

 

 …ハーゼンバイン家もそっちの坊主も冤罪だろ?」



「え!?」


事情も話していないのに、冤罪だと言い切るフリーダーに驚くニクラス。


「ちょっと考えればわかるこった。

 信じ込んでるバカな奴らの頭の中が心配だぜ。」


「フリーダーさん…。」


「でも、汚職貴族と詐欺師がコンビ組んでる理由は考えてもわかんねえな?

 あまりにも男に縁がねえから、嫌われ者のガキをペットにでもしたのか?」


「フリーダー。

 言っていいことと悪いことがあるぞ…。」


(悪いことしか言ってない気がするけど…。)



悪口しか言わないが、初対面で初めて冤罪だと言ってくれたフリーダーにニクラスはもう悪い感情がなくなっていた。


口が悪いだけで、物事の本質を見極められる人なんだと。



「ガハハ!!

 どうだ坊主?

 この嬢ちゃんにおっぱいでも吸わせてもらってんのか!?」


(…やっぱり、ただの嫌な人かも……?)


「フリーダー、ここは道具屋だろう?

 あんたの毒舌独演会はもう腹一杯だ。」


「まあそういうなよ!

 こんな珍しい客が来たってのに、テンションあげるなってのが無理な注文だ!」


「ああ、その無理な注文をしに来たんだ。」


「あん?」


「ニクラス。」


続きを話すようニクラスを促すテレージア。


「うん。

 あの、”シーカーズマップ” を探しているんですが、取り扱ってませんか?」


「”シーカーズマップ”…だと?」


「はい。

 どうしても欲しいんです。」


「どのくらいのランクが欲しいんだ?」


「…Aランク、最高級品です。」


「……ハハッ。

 いくらするか分かってんのか?」


「大体1200万ゴルくらいかと…。」


「…お前借金抱えてんだろ?

 そんな大金どうやって調達するつもりだ?

 …もしかして、嬢ちゃんにたかるつもりか?」


ふざけていたフリーダーの語気が強まる。


「貸してもらいますが、必ず返します。」


「嬢ちゃんにしろ、そんなに持ってるとは思えねえがな?」


「確かに今は持っていないが、この子ならその気になれば3ヶ月で稼げるぞ?」


「なに?」


「実際、4回のダンジョン攻略で70万ゴル稼いだ。」


「はっ。

 そんな額Cランク冒険者でも厳しいぞ?

 まさかBランク冒険者ってわけでもあるまい?」


「ランクはまだGだがな。

 だが、本当の話だ。」


「…どうやったんだ?」


「それを教える義理はない。」


「ふんっ。

 じゃあ俺もアイテムを売る義理はねえな。」


「は!?

 いや、お前は道具屋だろう?

 売るのが仕事だろうが!」


「客は選ぶスタイルなんだよ!

 どうする坊主?

 売る条件は、稼いでる方法を教えることだ。」


テレージアがニクラスに視線を合わせる。


ニクラスはニコッと笑って頷いた。



「その方法は、これです。」



ニクラスはマジックバッグを目の前に掲げた。


「バッグ……?


 は?

 まさか “マジックバッグ” か!?」


「はい!」


「嘘だろ…。

 容量は…?」


「モンスター数十体分はありますね。」


「おいおい…。

 Sランクのアイテムじゃねえか…。

 まあそれがあれば稼げるか…。」


道具屋のフリーダーにとっても驚くほどレアなアイテムだったようだ。


「これで、”シーカーズマップ” を売ってもらえますか?」


「ああ…。

 しょうがねえな。」


「やった!!!

 ありがとうございます!!!」


「っていっても、物はねえけどな。」



「「は!?」」


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