ショートカット

西川笑里

1話完結 ショートカット

 私は一体どこで間違ったの?

 鏡に写る自分の顔を見ながら、必死に昨日のことを考えてた。


「そんなの当たり前じゃーん。あたしはババアになんかならないよ」

「そうそう、人生の一番楽しい時を何が悲しくて男に捧げて、子供に捧げて生きなきゃなんないのさ。そんなのまっぴらごめんよ」

 ——あー、楽しい。友達といるこの時間、至福のときね

 カラオケで盛り上がりながら、そんなことを思ってた。


「君、君、ちょっと」

 その帰り道、珍しく占い師から声を掛けられた。

「君、いい人相してるねえ。きっとこれから素敵な人生が待ってるよ」

「はあ? 素敵な人生?」

「そう、明日君は素敵な男性と恋に落ちる。子供は二人、穏やかな老後が見える」

 ——何勝手なこと言ってんのよ

「あたし、男なんてまっぴらごめんなの。今日人生で最高に楽しい一日だった。だから、明日の出会いからの、そんなつまらない人生すっ飛ばせたら幸せよ」

「本当にそれでいいんですね」

「もちろん」と啖呵を切ってイカサマ占い師にさよならした。


 鏡の中では、「ババア」が困り果てていた。

 目が覚めたら、あたしは本当に人生をショートカットしたみたいだ。


#ショートショート  #お題 #ショートカット

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