第17話

 3年生となる前の休み。去年の今頃は跡継ぎから下ろされたわね。家族と離れ、平民となった事だし、今は色々と頑張るしか無いわ。それでも平民になる準備が出来たのは大きいわね。


寮とはいえ1人暮らしをしながら料理の練習や街に出かけて買い物の練習は出来た。今年は就職のために全力を傾けていかないとね。考えているのは王宮薬師。難関試験に落ちてしまったら王宮の侍女として働く予定。


王宮の侍女は募集も多く結婚して辞める人も多いのでそれほど難しくは無い。学院の先生達から王宮薬師でも充分合格出来るだろうとお墨付きを貰ってはいるけれど、念には念を入れておかないとね。


私が薬師を目指しているのは今のところ担任の先生しか知らないわ。


一応薬師科を専攻していたけれど、領地が薬草の産地だからという理由にして就職の事はずっと濁していたの。先生には邪魔が入りそうなので最後まで黙っていて欲しいと頼んである。一番の敵はやはり家族なのよね。彼らなら足を引っ張り兼ねない。


 そういえば、今年、ソニアは入学するのかしら?子供が出来たとかどうとか言っていたわよね。デビュタントも今年だったはず。どうするのかしら?まぁ、私には関係無いけれど。さて、午前中は王宮の薬草園に向かう。




「おはようございます。今日からまた1週間宜しくお願いします」


 そう言って私が挨拶をしたのは薬草園を管理する薬師長のジェイデン・ファーム公爵。去年、私はここで働きたいと飛び込んでファーム薬師長にお願いしたのがきっかけとなり私はファーム薬師長の見習いとして薬草園のお手入れを休み毎に手伝いにくるようになった。


ファーム薬師長はよく受け入れてくれたなといつも思ってしまう。受け入れてくれた理由は元家の事が関係しての事だろうけど。


「そうだ、ファーム薬師長。私、トレニア・ガーランドからただのトレニアにこの間からなりましたので宜しくお願いします」


「そうか。貴族籍を抜ける事にしたのか。おめでとうと言うべきかな。そしてまた一歩薬師に近づいたな」


「薬師長、何故薬師に近づいたのですか?」


「王宮薬師というのは医師と同じで昼夜問わずに薬の処方をしなければいけないんだよ?貴族の年頃の娘が夜中も仕事だなんてダメだろう?もちろんその部分も薬師や医師になる人は加味される。まぁ、薬師は医師ほどでは無いがな」


私は薬師長と話をした後、薬草園の植物の手入れをして植物観察。午後からは薬師長による薬学の勉強をして寮に帰る。


 寮に帰ってからは3年生の勉強の予習。本当に毎日勉強三昧ね。そうして1週間があっという間に過ぎて行った。

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