鈍感な俺は生徒会長が思いを寄せていることに気が付かず、ギルメンの女の子と出かけてしまった件

猫と犬が好き

第1話

 俺・神野宮裕かみのみやゆうは生徒会に所属する高校二年生。


 俺はいつものように生徒会室で仕事をしているのだが……。


「黒雪会長、各部活の部費の意見書まとめ終わりました」


「……」


「あのー、会長? 」


「……」


 いつもなら「ありがとう。助かるよ」と言って笑顔で受け取ってくれるのに今日は無視される。


 俺、何か会長の気に障ることでもしたっけ?


 そんなことを思っていると。


「わぁ! 会長から負のオーラ少々と怒りのオーラが大匙50ぐらい出てます!どうしたんですか? 」


 生徒会の庶務であり看板娘の男の娘・如月きさらぎゆなが生徒会室に入ってくるなりびっくりした表情で俺に訊く。


「わからない」


「えー!会長が怒るってめったにないじゃないですかー! 」


 黒雪会長のお菓子を間違って如月が食べちゃったときも笑顔で許してたし、補講で今ここにいない書記の西園にしぞのひながテストで0点を取った時も優しく笑顔で教えてたし。


 本当にどうしたんだろう。


 2人でうーんと頭を悩ませているといいところに俺のクラスメイトであり副生徒会長の間宮紫音まみやしおんが部室に来たのでどうして会長が怒っているのか聞いてみることに。すると。


「神野宮。君のせいだ」


「何しでかしたんですか先輩! 」


「ええっ!?俺ですか!? 」


 俺が驚いていると黒雪会長の座ってる席からパキッ!と何かが折れた音が聞こえてきた。


「先輩! 今会長から負のオーラが消え、怒りのオーラが大匙100ぐらいになりました!やばいですよ! 」


「何それ!? 」


「怒りゲージが振り切れる一歩手前ということです! なにをやらかしたのか早く思い出して謝ってください! 」


 それはやばいな。でも。


「謝るって言っても本当に心当たりがないんだよな」


「じゃあ昨日の過ごし方を教えてください! 」


「私も気になるな。結果は会長から聞いてはいるが過程が気になるからな」


 昨日の過ごしかたか。確か……。


「朝起きて、スマホを見ているとギルメンから『一緒に遊ぼう』ってメッセージが来たから待ち合わせ場所に行って、夕方まで一緒に遊んだ、かな」


「ふむふむ。ちなみにそのギルメンとやらの性別は? 」


「女性だな」


 俺が答えた瞬間、黒雪会長の座る席からドゴンッ! と大きな音が。見るとどうやらグーで机を殴ったらしい。


「先輩、ちなみにその女性とはどんな関係ですか? 」


「ゲームのリリース当初から一緒に遊んでる、いわば古株であり親友みたいな感じだな」


 俺がそう答えた瞬間。


「嘘つき! 仲良く腕を組んで歩いてたじゃないか!」


 今まで黙っていた黒雪会長が俺たちの会話に混ざってきた。


「しかも! カフェで大きなパフェを一緒に食べたり、プリクラを一緒に撮ったりしてさ! 完全に付き合ってるじゃん! 親友とか嘘つくな! 」


「先輩。それはマジでやばいですよ。親友とか言って本当は付き合ってるんじゃないんですか?」


「右に同じく」


 如月、西園は完全に黒雪会長側についてしまった。


 多分というか絶対にこの状況下で弁明しても聞く耳を持たないだろう。だが、このままでは業務に差し支えるので俺は弁明しようと――。


「ん? どうしたんだお前たち? 殺伐としてるけど」


 したら生徒会を管轄している生徒指導部の花崎萌はなさきもえ先生がコーヒー片手に生徒会室にやって来た。


「先輩がギルメンの女の子と一緒に出掛けてたんですよ! 会長が先輩のことを好きなのに! 」


「うんうん。ちなみに黒雪、好きだということは声に出して伝えたのか? 」


「いいえ。ですが行動で伝えました。ボディタッチをしたり、仕事を教えるときに胸をわざと押し付けたり、ジャージを拝借して匂いをかいだりいろいろと」


「なるほど。ここまでくると病院を進めたくなるほどの鈍感ぶりだな。神野宮」


 花崎先生はやれやれと俺を呆れた表情で見る。


 俺をそんな表情で見る前に咎めることがあると思うのは俺だけだろうか。


「まあいい。じゃあ私から一言。早く告白してリア充になれ!そして管理下に置いてしまえ! 以上! 」


 そういうと花崎先生はコーヒーを一気飲みすると理由は不明だが如月と西園を連れていなくなると俺たち2人の間に無言の時間が訪れる。だがそれを破ったのは――。


「私は裕のことが好き。大好き。昨日のギルメンの女の子と歩いてたところを見てから無気力になって、なんにもできなくなった。そして今日は感情が制御できないんだ。それほど裕を愛してる。だから……! 私と付き合ってよ……グスッ」


 黒雪癒温くろゆきゆおん――生徒会長だった。


 これだとラノベの主人公じゃないか。俺が反面教師にしていた。


 俺は自分自身に呆れてため息をつき、黒雪会長のの近くに行く。


 そして優しく抱きしめて。


「今まで気が付かなくてごめん。こちらこそよろしくお願いします」


「絶対よそ見しないでね? 私だけを見てね? 」


「うん。約束する」


 俺がそういうと生徒会室に鳴き声が響いた――。

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鈍感な俺は生徒会長が思いを寄せていることに気が付かず、ギルメンの女の子と出かけてしまった件 猫と犬が好き @nikuoisi

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