成就


 告白をする! ……なんて意気込んでみたけど、やっぱり振られたら…と、思うとやっぱり不安だ。


 欲しいものがあるから一歩踏み込む訳だけど、それは今あるものを、失うかもしれないということ。


『…相川君』


 加奈の顔を思い浮かべる、それと同時に知らない男と加奈が仲良くしてる姿を思い浮かべてしまう。


 ……うん、やっぱり嫌だ。



「あっ…ご、ごめんなさい…浴衣着るのに戸惑っちゃって。」


 後ろから少し息を切らせた加奈に話しかけられる、俺は加奈の方に振り向き…余りの可愛さに死んだ(死んでない)


 …ていうかデカイ、元々デカイとは思ってたけど帯で強調されてて更にデカく見える、何がとは言わないけど。


「だ…大丈夫、俺も今来た所だから。」


 デートの時に言ってみたい台詞のトップ3に入るであろう、憧れの台詞を口にしてみた。


 うん、我ながら気持ち悪い。


 加奈は え? え? みたいな顔をしている。


「あ、えと……愛梨ちゃんは?」


 俺は愛梨が友達と沢山回りたい所があるから…と、先に行ってしまったことを伝えた。


 加奈は「そ、そっかー」とよく分からない返事をして、少しソワソワしている……え、もしかして俺と二人はそんなに嫌?


「……」


 少しの沈黙、それを先に破ったのは空気に耐えれなくなった俺だった。


「もし俺と二人が嫌なら愛梨に連絡をとって(無理矢理にでも)合流しよう。」


「あ、ち、違うの! 二人きりなのが嫌な訳じゃなくて……」


 そう言って加奈はモジモジしている。


 …な、なんだ? なら一体どう……あ


 その時、自分が加奈の浴衣を全く褒めてないことに気づいた。


 ぐあぁぁっ やってしまった!


 ま、まままままだ間に合うよな?!


 浴衣姿の加奈をじっくり見つめる、加奈は顔を赤くして恥ずかしそうにしている。天使。


 花火柄の藍色の浴衣、長くウェーブのかかった髪をアップにしてる加奈は冗談抜きで大人っぽくて綺麗だった。


 思ったことをそのまま伝えると、ますます顔を赤くして、下を向いて小さな声で ありがとう…と、言った。



 結局、愛梨達とは合流せずに二人で出店を回り、気づいたらどちらからともなく手を繋いでいた。 手汗…大丈夫だろうか。


 花火の時間になり二人で近くの公園に移動することにした、人も少なくて花火もちゃんと見ることのできる穴場である。


 移動途中でスマホを確認すると愛梨からメッセージが届いていた。


『一生に一度の勇気をだすならここしかないよ、頑張ってお兄ちゃん!』


 と、いうメッセージに可愛らしいデフォルメされたイルカのスタンプ付きで。



 失敬な、一生に一度しか勇気が出せないなんてことあるか。


 でも


 愛梨からのメッセージに、確かに俺は勇気を貰った、きっとこの状況も気をきかしてくれたに違いない……


 後は俺が勇気を出すだけだ。




 狙い通り公園にはほとんど人がおらず、加奈は花火を見ているがどこか、心ここに在らずといった感じだった。


「三川。」


「…はい。」


 俺が彼女の名前を呼ぶと、真剣な顔で俺を真っ直ぐ見つめてくる。


「俺は…相川 宗二は…」


 喉が渇いてスラスラと喋れない


「君のことが…」


 自分がどんな言葉を言おうとしてるのか分からない


「ずっと…小学生の頃から…」


 これでもう後戻りはできない


「好きです、俺と付き合って下さい」


 気の効いた台詞なんて言えない、俺はただ自分の気持ちをそのまま伝えることしかできない。


「――……っ…はいっ! わ、わたしも相川君の……相川 宗二 君のことが好きです、ずっと…」


 これから先、死ぬまでずっと同じ加奈を好きでいるかなんてわからない、加奈だってそうだろう


 ただ、俺はこの瞬間告白を一生忘れることはないだろう…と、思う。



 ――――――――


 幸せの瞬間、でも……未来は


あ、愛梨は二人の気持ちを知っています、ずっと二人の微妙な距離感にやきもきしてました。


三川さんに告白したイケメン君を踏み台にする気まんまんだった腹黒娘よ…









  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

裏切りの定義 『そーちゃん』と加奈の話 @enji2815

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

フォローしてこの作品の続きを読もう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ