第24話 物語り



 さらに数年後。

 理歩は総太、そして二人の間にできた子供と共に、ショッピングに出かけていた。

 そして映画館の前で足を止める。

 そこで宣伝映像として流れていたものに、目を奪われた。



『愛した彼女は――別人でした』



 その言葉から始まるノンフィクションの恋愛映画。

 主人公を演じるのは有名女優。相手役も最近人気上昇中の俳優。二人の奥には暗い交差点と花束が描かれている。

 一通りのあらすじを見ても、そのモデルが自分であることを理歩はすぐに理解した。



「ママァ? 泣いてるの?」

「えっ? 泣いてた? あ、ごめんね!」



 理歩は勝手に流れてきた涙を袖でぬぐう。

 原作者の名前は『歩士ほし』と書かれている。もちろんペンネームなのだが、あらすじからもストーリーが自分のことを描かれているとわかっているために、それが誠士郎だろうという推測はすぐにつく。



「誠士郎、有言実行だな」

「うん、そうだね。今度、見に行こうかな。そうしたら、感想を送ってみよう」

「あ、俺も見たい。どれだけ俺が美化されてるか楽しみだな」

「ふふっ、きっとかっこよくなってるはずだよ」



 二人は顔を見合わせ笑い合う。

 そして総太は子供を肩車し、理歩と共に歩いて家族でショッピングを続けるのだった。





 Fin

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Mirror 夏木 @0_AR

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