第27話 話に来ただけじゃねぇのは知ってたが、まさか……な
『もうすぐだよ!』
レーダーの見えるシルフィアが、合流予測地点まで間もなくなのを告げてくる。
俺も勘で予想時間を計算してたが、ほぼドンピシャっぽいな。
「そろそろか……おっと、よく見えるぜ」
手のひらとはいえアドシアの上に乗ってはいるが、それでもこの高度を生身で飛ぶのは新鮮すぎる体験だった。ワガママ放題の騎士学校でもやっちゃいねぇぞ、こんなこと。
ここにきて、さっき嫌というくれぇ見た真紅の竜が遠目に見える。
加減してくれてる速度だが、これでもけっこう
と、
「シルフィア、止まれ!」
『了解!』
俺は
「よぉ。さっきぶりだな、
「ふむ、お前が英雄の末裔か。生身を見るのは初めてだな」
「気まぐれでな。ところで、お前が近づいてきてんのにビビってる奴らがいてよ。話し合おうってワケだ」
シルフィアには、
「話、か。そう時間はかけない」
「だったら今すぐ話せ」
「そうだな」
一瞬の間をおいてから、
「単刀直入に言おう。私を諸君に同行させてほしい」
『えっ!?』
シルフィアが驚く。
そりゃそうだよな。
ましてや、人語を喋る
「テメェのでけぇ図体じゃ、大パニックが起きそうだな」
「無論、この姿のままではおらぬよ。お前たちの姿に“擬態”する」
「擬態だぁ?」
俺の……俺とシルフィアの知ってる
「少し待っていろ」
その声に合わせ、
そして――目の前には、俺より少し小せぇくらいの女が、いた。ウロコと同じ真紅の髪に、真紅の瞳。胸と尻は立派に出てるが、それだけじゃねぇ。普通の人間にゃあ
とりあえず、「擬態」の意味を察したぜ。
「あー、確かに人の姿に溶け込めてんな。これでもだいぶ目立つけどよ」
「体を縮めただけだ」
「そうかい。それにしても、お前、性別は女だったのかよ」
「その通りだ」
「
目の前に起きてるこたぁ、どれもこれも学会騒然レベルだ。いや、ホント、誇張抜きで。
「それも含めて擬態なのだよ。もっとも、私はなかなかこの姿も好きだぞ。私の子供を産めるし、産んだからな」
「しれっととんでもねぇこと言ったなオイ」
人間と
いやもう、目の前に起きてることがどれもこれも突拍子ねぇ話すぎて、こっちが大パニックだよまったく。
「お前の先祖――建国の英雄、ヴェルリートとの子供だぞ? それはそれは、可愛いものだ」
「そんな話は聞きたくなかったぜチクショウ! まさか俺の超ご先祖様が、浮気だなんて――」
「落ち着け。妻であるグレーセア王妃の許しは得ている。私も表には出ない妻として夜を共にしたことがある。そして、何より――我ら
「話ぶっ飛びすぎだろオイ!」
つまり、ハーレムってことかよ。んで、こいつはまさかのハーレムの一員だった、と。
だが、悪かねぇな。何人もの伴侶をはべらすのは、実はけっこう好きだ。
つーか日本が息苦しかったんだ、何だよ一夫一妻って! 何で恋愛に諦めるって概念があったんだよ! 過ぎたはずの前世に、怒りがこみ上げてくる。
その鬱憤もあるが、俺は好きになった女とは全員結ばれてぇ。だからハーレムっつーのは最高だ。
――決めた。俺は俺なりのハーレムを作り上げてやるぜ。
「目が色欲に輝いているが、今の話を聞いていたか?」
「おう! ハーレムと盟約だろ!」
……ん? 盟約?
「ならば良し」
「待て! 盟約って何だ!」
「やはり聞いていなかったのか」
「聞いてたさ! 意味が分かんねぇだけだ!」
つーか、和平って何なんだよ!
「知らんのか。ついこの間まで、どうして
「そういう習性だからじゃねぇのか?
それがたまたま高度1,000mだと、思ってたんだがな。
「半分は正解だ。だが、半分は
「半分だぁ?」
「
「だったら何なんでぇ」
「それは、協定だ。和平のな」
「何だと!?」
俺はシルフィアともども、叫ばずにはいられなかった。
「協定だと!?
「その通りだ。
高度1,000mに、そんな事情があったのかよ……!
「シルフィア。今の会話、録音してたか?」
『えっ? あ、うん。バッチリ』
「後でアドレーアとアドライアに出すぞ。話を聞かれるだろうから、お前も一緒に来い」
あり得ねぇと叫びたくなる気持ちを、俺は必死に押し殺していた。
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