魂を震わす音

YouTubeで、とある外国のオーディション番組をたまたま見た。

バイオリンを持った黒人の10歳くらいの少年がステージに立っている。

演奏前のインタビューで、彼がいつからバイオリンを始めたのかという質問に答えている。


「それは、僕が癌を患った後」

会場が騒然となる中、


彼は、伴奏に重ねてバイオリンを弾いた。


その音は、生命感にあふれ、魂の声で歌うかのような音だった。

全身で、リズムを取りながらバイオリンを弾く彼の姿を見ながら、その音を聞いてるだけで、

嗚咽に近い状態で涙が溢れた。


彼の演奏は魂の叫びだった。


少年のバイオリンはもちろん上手だけれど、

世界には、もっと上手くバイオリンを弾く人は、五万といるだろう。


でも、そのテクニックとはちがう何かがそのバイオリンの音色にはあった。


命の音色

喜びの音色

苦しみや痛みを知ったものの音色

愛の音色

希望の音色


言葉で表現するには限界がある。



観客は、総立ちになり、泣きながら、手を叩く人、ホイッスルや、叫び声をあげる人が、完全に、彼の音に巻き込まれている。


演奏後、審査員が質問する。

「今、あなたの健康状態は?」

〜「癌を克服して4年が経ちました。」


「今の君の気持ちは?」

〜「自分を誇りに思う」


その瞬間、審査員は、そのオーディションで最も栄誉ある賞、ゴールデンブザーを彼に与えた。


母親が、ステージサイドから飛び出し、息子を抱きしめて、2人は号泣している。


この2人の数年前の苦しみは、どんなものだったのか?

想像することなんか出来ないほどの苦しみのどん底の最中、この勝利をを手にする瞬間など、絶対にイメージすることなど出来なかった時が、この2人が、癌の告知を受けた時だ。


人生の一寸先は闇だ。

何も見えない。

だからこそ、希望の光を見出すために、目一杯手を伸ばして、欲張って、本当にやりたいことを今やってみよう。

今しか、感知できないからこそ、今の最善を選んでみるしかない。

間違うこともある。

でも、それを選んでやってみたから、それが間違いだと気づく。

選んだものに、自分にとって宝物となるようなこととの出会いがあるかも知れない。

だから、その原石を拾って磨いてみようじゃないか。

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