Day4 紙飛行機

 釘を打ち付ける。

 身が引き締まる思いだ。

 木に打ち付けると余計に。


 釘の先が材木に刺さり、打ち付けるごとに少しずつ沈み込んでいく。その材木は釘を飲み込み、同化した。



 はぁあああああああ。美しい。

 私はまた一つ芸術作品を生み出してしまった。


 この世に生きとし生ける生物は皆、違う生物になり得る可能性を持つ。死んだらそれで終わりだ。

 生きてさえいれば、進化の可能性が生まれる。


 生物の、生きながらえようとする大いなる力は、己の種の域を超えようとするものだ。その手助けを私はしているに過ぎない。

 私は脇役だ。主役は彼。

 それでいい。


 釘を打ち付ける。沈み込む釘を飲み込む材木。

 釘を打ち付ける。沈み込む釘を飲み込む材木。

 釘を打ち付ける。沈み込む釘を飲み込む材木。


 まだ彼は生きている。だからこそ私は釘を打ち付けるんだ。

 死んだ彼になんて興味は無い。

 彼は家具として生まれ変わろうとしているのだから。



 死んだ彼を材木として売っぱらい、館を建てたとしても、それはただの館だ。ただヒトが住むだけの館。

 死んだ彼を薪として売っぱらい、火をつけたとしても、それはただのたき火だ。ただ暖を取るだけのたき火。

 死んだ彼の樹皮をはぎとり繊維にして、紙を作り上げたとしてもそれはただの紙。紙飛行機にでもして、一回投げて、どこかに飛んでいってしまってそれで終わり。


 彼を彼のように扱っては、彼止まり。

 彼を彼以上に扱うことができるのは、私だけなんだ。


 誇らしいだろう。君は今、新しく生まれ変わろうとしているんだ。

 決して殺しはしないよ。そんなもの、美しくない。


 美しく新しい、素晴らしい家具に生まれ変わるんだ。

 特別製の釘で、新たな命として、生まれ変われ。


 釘を打ち付ける。沈み込む釘を飲み込む材木。

 釘を打ち付ける。沈み込む釘を飲み込む材木。



 完

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