西暦20××年 お役所の神様

 ある三人組がいた。男一人、女二人のこれといって特異なところのない集団である。


 彼等は妙に綺麗で近代的な、言うなれば役所にも似た空間に書類を持って存在している。窓口と座席が並ぶ、清潔なれど無個性で無機質な空間だ。


 「……あの世もお役所って勘弁してくれんかね。私、登記簿やら何やらで何時間も待たされた思い出しかないから嫌いなんだよ、こういう空間」


 中肉中背の特筆すべきところを持たぬ男が椅子に腰を降ろしつつ、案内板を見上げて呻いた。髪が黒く、短めで、背は普通、服装は几帳面で小綺麗で……と、そこまで特徴を述べた後で他に思い出せることの少ない、人相書きを作るのに苦労しそうな風体をしている。


 「これが便利だから採用されたんじゃなかろうかね。人間なんて日本だけでも一日3,000人から死んでるんだし、世界中だともっとだろう。捌きたいなら相応のシステムが必要だったのだろうさ」


 愚痴に応えたのは背の高い女であった。180cmに届きそうな上背を窮屈そうに役所の椅子にねじ込んだ姿は、男性も裸足で逃げ出す精悍な印象。つんと尖った鋭い鼻と切れ長の目は胡乱すぎる現状に澱んでいるものの、殿方よりもご婦人からのウケが良さそうな造形である。


 「あー……生きててもお役所、死んでてもお役所……公務員辞めたい」


 二人に挟まれる形で項垂れるのは、また体格に秀でた女性であった。薄化粧で中性的に彩った顔付きを整えており、背の高さはそこそこに、しかし鍛え込んだ肉体には何らかの武道を修めていた形跡がある。今は脱力しきっているものの、立ち姿をみれば何らかの制御された暴力が必要な職場に勤務していると空気だけで分かっただろう。


 「よかったな、実質辞められてるぞ」


 「そうそう、死んだらみんな退職だ。俺ぁ今、残してきた仕事を考えて申し訳なさでもう一回死にそうだが」


 「私もだよ……この休暇が終わったら、用地買収の目処があった案件があったから……」


 それに対する二人は己も打ちのめされているからか随分と等閑な対応であった。


 さて、この容姿に統一性のない三人の現状を語るのであれば、彼等が言うよう端的に表現すれば亡くなったのである。


 三人は大学のサークル繋がりでの腐れ縁の友人であり、特に趣味と話があったため性差を超えて三〇を過ぎようと友誼の途切れぬ友人であった。昨今は各々歳をとって重要な仕事を任されることも増えて集まれる機会に乏しかったが、どうにかこうにか奇跡的に全員が大きな案件を片付けて休暇をとれた最中の不幸である。


 学生時代から温泉が好きだった面々は、とある事情によって県外にでられない武が香る女性に合わせ、近場での温泉旅行を計画していた。万難を廃して仕事を片付け、ウキウキした心諸共に旅支度を鞄に詰め、当日レンタカーに乗り込んだ三人は三人揃って死んだ。


 運悪く、山間の温泉旅館に向かう途上で落石に見舞われたのである。


 彼等は即死したので知る由もないが、数日前の雨で緩んだ地盤から落ちた巨石がレンタカーを一撃。車体はせんべいの如く呆気なく潰れて山道の下へ落下し炎上。苦しまなかったことが唯一の救いであるものの、遺された者にとっては早すぎる死であった。


 そして辿り着いたのがここである。三途の川でも地獄の門でも、ヨモツヒラサカでもなく、日本や世界のどこにでもありそうな小綺麗なお役所であった。


 三人は大いに困惑したが、手に持った己の人生を綴った経歴書を見て事態を受け入れる他なかった。死に瀕して見る夢にしてはあまりにリアルであるし、友人の二人はあまりに二人そのままでありすぎたから。


 今は書類に導かれて幾つも窓口を超え、薄らぼんやり発光して姿がよく見えない係員からまた新たな書類を受け取り「次は○○○の窓口へどうぞ」とお役所特有の窓口行脚を強いられている所であった。


 経歴書以外で受け取った書類は、彼等が知らぬ言語――そも、文字と呼べるかも分からない――で書かれているため、死後の手続きがどのように行われているかは分からなかった。これが所謂裁判という物なのか、天国や地獄があるのかさえ現状では不明である。


 まぁ、長くて暗い坂だの川だのを延々と渡らされた挙げ句、おっかない顔の裁判長から重箱の隅を楊枝でほじくるような罪状を押しつけられて地獄に落とされるよりずっとマシともいえるが、それで気が楽になるかと問われれば難しいところである。


 「なぁ、Bよ」


 「なんだAよ」


 一人称を私とする男は女に対してBと呼びかけ、一人称を俺とする女は男に対してAと答えた。


 これは彼等の愛称である。同時期にサークルを訪れて入部した三人は、奇しくもそれぞれのイニシャルが連なっていることに気付き、渾名として採用したのである。何よりBと呼ばれ、自称することを好む女が公的な場以外では、そう呼ばれることを望んでいるからであった。


 男、Aの家名は吾妻といい、彼は特に思い入れはなかったが、Bこと女は毒嶋という家名が大変気に入らなかったのである。なにせ、ブス、その一言を連想させるだけで、幼き頃にイジメに遭ったのだから。


 「私、死んだこと早く気付いて貰えるかな……ペットホテルに預けたお猫様がですね」


 「あー……それなぁ。旅館に着かなきゃ電話もかかるとは思うが、山道だし不安はあるか。俺は幸いにも何も飼ってないが、冷蔵庫の中身が……」


 「死んで気にすることがそれ!?」


 長身のBの言に鍛え込まれた女、必然的にCとなる彼女が突っ込みを入れた。彼女の家名は知多といい、英語の法則を知らぬ時はイニシャルをTと勘違いして恥を掻いたことがあるが、それでも共通項のある渾名を気に入っていた。


 「だって、旅行終わったら後は息抜きに俺の部屋でダラダラ酒飲みながら映画見る予定だっただろう? ご当地グルメの通販で馬刺しとか色々頼んでたのに……」


 「うああ! 死んで惜しいと思うことを更に言うなよ! 私だって勿体なくて開けられなかった上等なウイスキーが何本あるか! 調子に乗って生ハムの原木だって用意したんだぞ!!」


 「やめて! あたしだって希少な日本酒の予約がやっと通って、次の新酒の季節には飲めると思ってそれを生き甲斐に生きてきたのに!!」


 人通りがないのをいいことに現世へ遺してきたことで愚痴を溢す三人組。


 次から次へと愚痴は出てくる。


 気になっていたドラマや小説、漫画と公開を控えていた映画。


 遺して来ざるを得なかった部屋の中の希少品。


 そして温泉で魂の栄養を補給したら勤しむはずであった仕事のこと。


 「あー……何時ぶっ倒れても良いように引き継ぎ資料は作ってあったけど、ちゃんとできるかなー……というか、共有フォルダに入れてあるけど見つけてくれるかな……」


 「俺、遺書は書いてあったけど、思えばコレクションを親がちゃんと始末できるか不安すぎる。頼む、転売屋の魔の手をくぐり抜けて集めたプラモを二束三文で売らないでくれ……! イベント限定のガレキを正しく作れる人に届けてくれ!」


 「うあー、あたしも沢山集めた初版本の山が……! ハインラインとかクラークの初版本を安っぽい古本屋に売られたらと思ったら死ぬに死にきれない! 況してや、古本だからって資源ゴミに出された日には!!」


 「や、やめろぉ! 私も不安になって来ただろ! 親が面倒くさがって適当な遺品整理屋に任せたらどうしよう!? 折角揃えたパワーナインとか、大事に取っておいた絶版ボックスを無知を良いことに買いたたかれたら化けて出る他ないぞ!?」


 揃いも揃って収集癖があったのか、三人とも不安と共に頭を抱えて悶え始める。往々にして親とは子供が大事にしているものの価値を知らず、処分する時は価値も調べず適当にやってしまうものだ。たとえそれが、出すところに出せば凄まじい価値を持っているとしても。


 斯様な下らない、されど万人が持ち得る未練をうじうじこねくり回していると、不意に壁のスピーカーが音を立てた。


 男とも女ともつかぬ声のやる気のないアナウンスは、三人の書類が入ったフォルダに振られた番号を読み上げている。そして、その番号の人は面談室に入るように促していた。


 何だろうと顔を見合わせながらも三人は面談室へ向かうことにした。今までは同時に死んだため連番が振られていたが故に一塊で動いていたが、手続きは別の窓口で一人ずつ進められていたのだ。


 それを急に三人一緒とはと訝りつつ、ノックして入室した部屋には神様がいた。


 A吾妻が思わず「うわぁ」と口に出すほど、面談室とやらの上座に座る人物は神様という形容が似合う人物だったのだ。


 足下まで届く長さの真っ白なローブを着て、傍らにねじくれた杖を立てかけた白い髪も髭も豊かな老翁。いっそステロタイプとさえ言える、ある意味無宗教的な神様は三人を出迎えて朗らかに笑った。


 「ほっほっほ、よく来たよく来た。来たくなかったであろうにご苦労じゃ。まぁ、座るがよい」


 口調もまた、態とらしいほどに神様めいている。ここまで露骨にそれっぽいと、今まで抱いていた、死んだという実感が薄れる程だ。


 しかし、着席と同時に何もなかった筈の机上に茶とお茶請け――しかもそれぞれ最も好む菓子が――が音もなく現れたことが、非現実感の襟を引っ掴んで強引に連れ戻してくる。A・B・Cは全員、どうせなら最初から最後まで非現実感を守って欲しかったと強く思った。


 「ああ、ヨモツヘグイを心配しておるなら気にするでない。既にそなたらの肉体は失われておる故、食おうが食うまいが変わるまい?」


 茶と神を胡乱な目で見ていた三人は、按じていたことを言い当てられて酷く気味が悪かった。まるで心が読めている、いや、これが神であるなら本当に読めているのではなかろうかと思って。


 「さて、まず名乗るとするなら、ワシはいわゆる神じゃ。お前達がおった世界を所有し、その世界が発する形而上学けいじじょうがく的熱量を得て生きておる」


 「形而上学的熱量……?」


 形而上学とは唯物論の対論。世界や真理を概念的に理解しようとする思考方式の一種であるが、自称神の老翁はそれを「其方らが理解できるようにした便宜上の呼び方じゃ」と注釈した。


 曰く、この神は概念的に三次元空間――神はこれを基底現実と呼んだ――に生きる人間より上位次元の存在であり、人間には認知することは疎か観測することもできぬ曖昧な十一次元に存在する生物であると語る。


 電子の仮想空間に極めて現実に近い世界を構築し、同じく人格を持っていると呼べるほど精巧なAIキャラクターを配置することができるのであれば、それを管理し操作する外の人間は正しく神と呼ぶに等しい。この論法に従って神は人間に対して自身を神と称し、そういう存在であると認識するようにと言った。


 その神は宇宙を内包する世界を管理し、その中を巡る膨大な魂の営みが生み出す熱量、即ち形而上学的熱量を糧として存在している。故に世界は今日も存在し、適度に保たれ、崩壊することなく存続しているという。


 「じゃあ輪廻というのは……」


 「あるぞ。正しく今そなたらが置かれている身の上よ。解脱も勿論ある」


 魂とは無形にして、熱力学第二法則から唯一外れる、無から有を生み出せる物質であり、神を自称する生物の通貨に等しい。


 魂が世界の内側を流れて輪廻を繰り繰り返す中で紡いでいく“生”が形而上学的熱量を産み、また輪廻を脱出するほど強力な魂が発生し“神”が産まれる過程でも同様に膨大な形而上学的熱量が発生する。


 この構図を神は不動産投資に準えて語った。


 「いわば世界を運営し魂を循環させることは家賃収入を得ること。解脱した魂から大量の熱量を得ることは開発が終わった物件を売却することかのう。A氏には分かりやすいのではないか?」


 「うわぁ、分かりたくないけど分かりやすぅい……」


 話のスケールが壮大すぎて、もう警戒していることが馬鹿らしくなったのか飲めど尽きぬ茶を飲み、時々品目を変える菓子を思い思いに突きながら聞いていた三人は、それぞれの考え方で神の言うことを理解した。


 「で、俺達を呼んだ理由は? そんなご大層な事業をしているなら、普通は管理してる部屋の一つを態々訪れたりせんでしょう」


 「うむ、Bぶすじま嬢の言うとおりじゃ」


 「嬢、という歳でもありませんがね……」


 「たしかにワシは普段、世界の内側に存在する神……ワシみたいに世界一つを完全に管理できない領域の神に管理を投げておる」


 「雇用主と管理会社の関係ですか」


 Aの言葉に神は尤もらしく頷きながら顎髭を撫でた。つまりこの神が言うには、世界の内側にもまた子飼いの神がおり、その神々が自分達で人間に働きかけて宗教や文明を作って初期の世界を安定させていったらしい。


 「ただの、そなたらはアレじゃ、ちょっとしたバグがあってのぉ……死ぬべき時に死んだ訳ではないのじゃ」


 「は?」


 「生物には各々寿命があり、その定められた寿命の中で積んだ徳……というのが一番近いが、まぁともかく寿命の中で成し遂げたことで輪廻に戻る際に発生する形而上学的熱量が決まる仕組みになっておっての」


 「なら、寿命というのはタンクの水などとは違い、タイマーであり最初からそれが終わるまで動くように作られていて、死因がどうあれ決まった時に死ぬようになっていたと」


 Cの言葉に再び神は頷いた。それが魂の構造であり仕様、そして変わることのない宿命であると。


 人間の作る工業製品でさえ不良品率を零コンマ幾らにまで下げられるのだから、神が意図すれば不良品を真の意味で零にすることは容易かった。


 それでも彼等は神の想定した動作をしなかったこととなる。


 「うむ、大仰に言いはしたが希にはあることじゃ。数世紀に一度くらいはの。本来はタイマーを持っているはずの魂がタンクを持って生まれてくるような、仕様通りに動かぬこともたまにはある。それこそ本来の仕様に完全に従うのであれば、輪廻からの解脱とて、あり得ぬ挙動であるからのぉ」


 「はぁ……」


 「こういう想定外の挙動を見せる魂は意味希少でな。そのまま輪廻に戻すとまた同じ不具合を起こすやもしれんから、別の流れに放り込んで動作を修正できるかたしかめておる。何度も同じことをされて、毎度毎度報告が上がってきても困るでな。それに解脱できたならできたで儲けものじゃから、手間を掛ける価値は十分にある」


 故にそなたには別の世界に生まれ変わって、正常な動作をするかたしかめたいと思うが、如何か? と神は問いを投げかけた。


 新しい世界の新しいスケールで再び魂を回し、欠陥がないかを調べるというのだ。


 この言葉に対する反応は三者とも違った。


 Aは叫んだ。流行のライトノベルかよと。


 Bはどうせなら生き返りたいんですが!? と嘆いた。


 C知多はやっぱりあの世でも何かお役所仕事っぽいじゃないかと項垂れた。


 神は変わらず穏やかな表情で笑い続けるのみ。


 そして哀れな三つの魂に斟酌せず語り続ける。


 「それでのぉ、余所の世界で動作をたしかめるのは良いが、それだけで終わらせるのは勿体なかろう? どうじゃ、ちと神の事業を手助けしてみぬか?」


 何でもこの神は人材派遣アウトソーシングめいた事業を行っているそうだ。


 世界とは非常に繊細な壊れ物であり、神が下手に手を出しすぎると歪んで育ち、最終的に醜く破綻するという。人が成長している植物に下手に触れれば、歪んでしまうのと原理は同じである。


 しかしながら問題は発生するもので、問題を捨て置けばやはり世界は歪んでいく。


 それを正すため、神は時折使命を与えた魂を自覚を持ったまま転生させ、世界の問題を解決させるのだという。


 「幸いにもワシの世界には、こういうのに向いた魂が生まれやすくてのぉ。だから小銭稼ぎに使わせて貰っておる。無論、そなたらにも悪い話ではないぞ? 普通なら漂白されて輪廻に戻るか、不具合を避けるべく廃棄される中、まだまだ生きることが出来る上、上手くいけば別の世界で神となり、新しい世界を作る権利を得られるかもしれぬのじゃからな」


 あまりにも突拍子がない上に身勝手な話であったが、ここまで現実味に薄い世界に放り込まれていれば「馬鹿な」と呟くことすらできなかった。脱力して反抗する気はございません、というより湧いて来ませんと態度で表明する三人に神は商談を続ける。


 「それでのぉ、まぁたまに性質が悪い神もおっての。他の神が持ってる世界を壊し、壊れた時に発生する形而上学的熱量を掠め取ろうというヤクザみたいな所業をするヤツらなのじゃ」


 ひでぇ地上げがあったもんだとAはぼやいた。土地を売ろうとしない老人を殺して相続人から土地を巻き上げようとするような所業に手を染めて、神とは聞いて呆れる。


 「とはいえ神が一息に壊すと幾らも熱量は手に入らぬ。風呂桶をひっくり返して、その下で口を開けておっても殆ど口には入らんからな。故にヤツらは桶で少しずつ掬うように世界を壊して魂を掠め取りおる」


 なんとも庶民にも分かりやすい説明である。しかし曲がりなりにも神は神、この三人の魂が最も理解しやすいよう話を噛み砕いて説明しているだけであろう。人間とて幼子に似たようなことをするのだから、造物主が被造物に同じことができぬはずもなし。


 「それでな、ワシと繋がりのある神がの、管理してる大事な世界でそういった攻撃を受けているそうなのじゃ。何とかならんかと泣き付いてきたため、丁度良いかと思って其方らにオファーをしている訳じゃよ。どうだ、乗らんか? 嫌だというならワシも考えんこともないが……悪い話ではなかろ?」


 Cは悪徳商法めいた売り込み方だと思いながら最中もなかを囓った。部屋に閉じ込め、胡散臭い話をさも合理であるかのように語り、あってないような選択肢を提示するのは、それこそ胡散臭き神が喩えたヤクザと同じである。


 三人は力なく顔を見合わせたが、何だかんだ言って死にたくなかったのも事実。生き返ることができないのは大変残念ではあるが、この自我が続くならまだマシかと思って首を縦に振った。


 それが神に首輪を嵌められ、どうにも大層なことをやらされることに繋がろうと。


 「うむ、ワシもいい返事が聞けてうれしい。では、そなたらに世界を救う力をやろう。いわゆるチートというやつじゃな。この方が分かりやすかろう?」


 サブカルに造詣の深い三人は勿論知っていた。三人は大学時代、オタク色の強い文学サークルでの同期だったから。


 神様転生、近年においては異世界転生とも称されるジャンルではお約束の展開であり、このジャンルの物語が小説や漫画、アニメなど数え上げることができないくらい市場に氾濫している。


 多少なりとも読んだことがあり、親しんだジャンルの当事者になろうとは思ってもみなかった三人である。たしかに近年は10代の若者ではなく、三人と近い年頃の主人公が題材となることもあったが、よもや我が身のことになろうとは。


 「では、ワシから授けるチートは……下準備じゃ!」


 堂々とした宣言に三人は間抜け面を並べることとなる。


 今まで読んできた物語のお約束から外れた言葉が聞こえたから…………。 

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