深夜の苦悩 V6についてのエッセイ

shomin shinkai

V6エッセイ

 明日……いや、もう今日になりましたね、2021年11月1日、V6が完結します。


 居ても立っても居られないとはこのことです。夜の帳がおりきっても一切の眠気が訪れず、パソコンの前に座って自由に、そして自分なりのV6を綴りたいという気持ちになりました。別に誰に向けて書いているつもりもありませんが、文章というものは誰かに読まれることで成長し、成仏しますから、例え誰一人としてこの文章の存在に気がつくことがないのだとしても、僕は誰かに向かって語っているように単語と単語を繋ぎ合わせることにします。

 

 前置きが長かったですね。


 今日はV6という物語が始まった日であり、完結する日です。なんとなくV6のCDやDVDが並んでいる棚のあたりから神聖な雰囲気が湧き出ているような気がします。V6のファンになってから、11月1日を迎える度に僕はホッと安堵するような気持ちになっていました。「この一年もV6がV6でいてくれた」という思いでしょうかね。

少なからずこれはV6のファンの気持ちを代弁しているのではないかと思うのですが、6人が6人で笑い合っている姿を見ていられれば、それだけで心は満たされ、大満足と言える。どうでしょう。……もちろんやきもちすることも多かったです。音楽番組にV6が出なかったり、6人でのバラエティがなかったり、カップリング曲も素晴らしいのにあまり世間に露出しなかったり……もっと評価されるべきだ! といっちょ前に演説したい気分になることも多々ありましたが、それでも、久々のテレビで6人揃ってワイワイグチャグチャやっているだけで、世間の声だとか、冷徹な数字の世界の存在なんかは消し飛び、温かく微笑ましい空間に包まれるわけです。ですよね? 

 イノッチのおふざけが発動し、徐々にそのおふざけがカミセンに広がり、高校生のノリのようなハチャメチャな笑いが爆誕する感じとか、剛くんの笑いとインパクトが凝縮された一言とか、たまに悪くなる仏の長野くんとか、アカデミー俳優がただの末っ子に戻る感じとか。剛健が話を聞いていない感じとか、剛健がルールを聞いていない感じとか、坂本くんはルールを一生懸命に聞いているのに理解できていない感じとか。個人的に好きな流れや具体例を上げればキリがないですが、Ⅴ6と出会って6年足らずの僕でこんな状態ですから、もっと昔から(それこそデビューからとか)V6と共に歩いてきた方々は、もっともっともっと思い出が溢れていることでしょう……とても文章の世界では収まりきらないくらいに。そんなファンの方々は羨ましい限りですし、また、僕のような新参者を優しく沼に引きずり込んでいただき感謝しかありません。


 さて、そんなわけですから、究極的な話……失礼な暴言と捉えられてしまうかもしれませんが、V6のファンは、V6がどんな曲を出そうが、どんなダンスをしようが、拍手して受け入れてしまえるメンタリティになっているのです。しかし、そんな甘えを我々が許しても、V6は許しません。ここが、V6という沼が異様に粘り気が強く、人を激しく奥深くにまで引きずり込む性質がある理由です。ここ数年、メンバーが「攻め」という言葉をよく口にしている印象があります。恐らく6人で共通させた意識だとは思いますが、その言葉が耳に入る度に、僕の腕やら脚やらには鳥肌がサーッと広がります。甘えとはすなわち、ファンに寄り添いすぎること。この曲は人気だからやろう、この演出は皆が好んでいるからやろう、前の○○のような曲にしよう……V6はとことんファンのことを考えているからこそ、その甘えを拒否します。より進化を、より新たな一面を見せよう、より「今のⅤ6を」、それが「攻め」ではないでしょうか。そういった考えを中心に、経験を経て練りに練られた彼らの作品は、言うまでもなくこうあったらいいなという僕たちの想像を遥かに超えていくのです。僕がⅤ6にはまり続けた理由は、彼らの更新ぶりに感無量し、刺激を与えられ、度肝を抜かれたからに他なりません。

 「All For You」は絶句しました。歌詞は英語、国内ではまだ主流ではない音楽のスタイル、とろけるような暗がりを滑るダンス、新しい銀河を発見したかのような壮大な震えを感じました。テレ東音楽祭での「KEEP GOING」は発狂ものです。スタイリッシュの中に荒々しさも混じる大疲労間違いなしのスポーツソングを、熱狂を我が物にし踊り抜け、番組全てを持っていきました。音楽の日の「SPARK」もたまらないでしょう。イントロが流れ出した瞬間「この曲やってくれるんすか!」と口を半開きにしながら立ち上がった思い出があります。あの独特ながら王道心をくすぐるリズミカルな刺激を携えた曲は、何度もリピートしてしまいますね。とりわけ、僕は昨年の25周年ライブで心臓を鷲掴みにされて鳥肌を無限に発生させられたのが印象的です。無観客だけど、観客がいることを想定して、という楽しげなライブを想像していた僕。職人集団Ⅴ6がそんな甘えた考えを持ったままであるわけがありません。突如何もない体育館の中心で、蝶や触手や美の巨人の指先の動きを見ているかのような「Right Now」、カメラが360度グルグルと回り臨場感を醸し出す「サンダーバード-your voice-」、芸術から抜け出してパーティーか祭りでもやっていて、観ているだけでも一緒に体を動かし口ずさみたくなる「Swing!」「SPOT LIGHT]、再び芸術の世界にひた戻り、今の6人が持つ落ち着いていて神秘的な佇まいを表現に落とし込んだ「TL」「GOLD」。新しく発売されたアルバム「STEP」では、「Sweet Days」の声が重なり合う場面と「Let Me」が持つ心地よい寂寥感に痺れました。

 彼らが進化し続けてくれるからこそ、逆に若い明るさと希望に満ちた昔の曲にも懐かしさだけではない新たなる魅力が生まれもするんです。「愛なんだ」「愛のMelody」「IN THE WIND」「Darling」「will」「Air」「FLASH BACK」「BRAND NEW DAY , BRAND NEW LIFE」「不惑」「Hello-Goodbye」……続けること数百曲……。

 馴染みある温かさ、親近感、わちゃわちゃ、青春 + 進化、今、大人、色気、緩やか、攻め。6人が6人でいてくれ、その6人が予想だにしない未知を提供してくれる、今年も。11月1日に僕が感じていた「Ⅴ6がⅤ6でいてくれる」という安堵は、そういった気持ちからきていたのでしょう。


 しかし、今日はそうはいきません。彼らは完結を選びました。だからこそ、僕はこうして長い文を紡いでいるんです。

 正直に言うと、悲しいです。皆さんもそうじゃないでしょうか。6人の決断だからといって、素直に正面から全て肯定的に受け止められる程人間は強くないですし、強くある必要もないと思います。今日、他の無数の仲間たちと共に、僕はめちゃくちゃに笑って、めちゃくちゃに泣くでしょう。泣いて笑う宣言というのもおかしな話ですが、途中で分裂したわけでなく、自ら進路を選択した彼らが最後に行うパフォーマンスというのは、決して歴史を重んじたありきたりな感動作ではなく、とことんまで追求し、とことんまで磨き上げられた、攻めの究極の一手であるに違いないわけです。6人の空気感に圧倒的に温もりを感じて笑い、彼らの芸術性とエンタメ性の神的領域に魂を撫でられて体中の水分がなくなるまで落涙し、完結する物語をいつも通り堪能してしまいそうです。それでいいんです!


 完結は寂しいです。ライブは楽しみです。


 物語はいつか終わります。本当に素晴らしい物語というのは、おのずから幕を下ろす勇気を持つ物語のことです。世界最速の状態で引退したボルト、若くして自らの未来を決断して行動した中田。「ロードオブザリング」は壮大で堂々たる最終決戦を経て三部作で閉幕し、ダニエル・クレイグはジェームズ・ボンドを卒業し、緻密な破天荒を描き続けた「チェンソーマン」の第一部はここぞとばかりに衝撃的に終わりました。


 僕にとっても、僕を含むファンにとっても、V6は人生、人格、生活の一部かそれ以上です。今日を超えたら、ぽっかりと穴が空いてそこに吹きつける隙間風に悩むかもしれません。ですが、そのせいで絶望の渦に落ち込み、精神が錯乱するようなことはありません。ちゃんと悲しむだけです。ちゃんと涙を流すだけです。何故なら、Ⅴ6という物語の解釈には無限の時間がかかり、無限の楽しみを含有しているから。


 Ⅴ6という物語は、最高のハッピーエンドで終わったということを知っているから。


 僕は小説家として世に出て、やがてⅤ6さんとも対等に仕事の話ができる実力を身につけて、6人に僕の物語を演じてもらうのが夢でした。その夢を達成できなかった自分の実力のなさには後悔もしています。ですがもちろん、僕は鉛筆を放り出すようなことはしません。最後の最後まで進化を選び、さらにその先でも進化をかまそうと試みる、両親と同世代の男たちの背中を見て、どうしていい刺激が体中に流れないというのでしょうか。

 いつかの未来、感情任せで深夜に勢いで書いたこのエッセイ(?)を、談笑ついでにⅤ6の皆さんに見せて、「なんだこれ」と相手にされなくなるくらいの人物になっていたいものです。


 Ⅴ6が完結します。

 僕はひとまず、自分だけのⅤ6を温めながら、新しい最後のⅤ6を歓迎し、未知な世界へと進む覚悟を決めました。文章にすることで、文章はまとまらずとも、気持ちには少し整理がつきました。ひと眠りできそうです。ライブには万全な状態で臨みたいですからね。



                 2021年11月1日 2時20分 Shomin Shinkai

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

深夜の苦悩 V6についてのエッセイ shomin shinkai @shominshinkai

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ