10.追加機能三つ

 夜になり、ベッドで寝ている俺の部屋に薄着の女性が数名入ってきた。

 最初は部屋を間違えたのかと思ったけど、村長の家族にあんな若い人いたっけな?


「あの、部屋を間違えてませんくわぁ!?」


 女性たちはベッドの上に乗り、ただでさえ薄い服を脱ぎだした。

 ええ!? な、なに? 何やってんだ!? 

 ビビッて部屋から逃げ出して、居間には村長が居なかったから家からも抜け出した。


「なんで、なんでいきなり服を脱ぎだしたんだ?? 一体何を考えてんだよ」


 よくわからないが、きっと勘違いをしてるんだろう、そうに違いない。

 家の裏に逃げ込み、周囲に誰もいない事を確認する。

 そして下半身を見ると……元気になっていた。


「健全な男子高校生な証拠だ」


 あ―ビックリした。

 この村は長居しない方が良いのか? 出来れば早いとこ大きな街に行きたいから、明日には大きな街の場所を聞いて出た方が良いか。

 それにテントとかポータブル電源とか置きっぱなしだから、それも回収しないとな。


 翌朝は朝食をいただき、村長に身振り手振りで大きな街の場所を聞いた。

 どうやら俺が進んで来た道をそのまま行けば、大きな街があるようだ。

 俺が村の入り口から入ったとしたら、反対側にある出口から出ればいいって事だな。


 でも村から街までは徒歩で三日ほどかかるらしい。

 う~ん、歩きは大変そうだな、そうだ! 自転車を買えば良いんじゃないか?

 俺ってば冴えてる!


 村を出てテントの場所に戻る途中、俺はアメイゾンで電動自転車を買った。

 日本では違法らしいけど、ここは異世界だからな、問題ないぜ。


「うっほ! はや! 最高速度五十キロメートルなだけあるな!」


 タイヤの太い電動自転車を買って、ペダルを漕ぐことなくレバー操作だけで進んでくれる。

 いや~、確かに日本じゃ危ないわ。

 タイヤが太いおかげで森の中も思ったより簡単に入れた。

 えーっと、確かこの辺に……あった。


「よし、じゃあカーゴを買って自転車に取り付けよう」


 キャンプで使うような四輪のカーゴキャリーを買い、どんどん荷物を積み込んで自転車の荷台に取り付ける。

 う、流石に重いけど、道を選べば問題ないだろう。

 森の中では電動よりも、自分で漕いだ方が安全だな。


 そうだ、アイツらにも連絡しておこう。


『やっと人間に会えたぞ! でも言葉が通じない。大きな街があるらしいから、今から向かう』


 ツブヤイッターに書き込み、俺は街を目指して自転車を進めた。


 どうやら村から三日というのは、馬車に乗って三日らしく、自転車で急いだら一日で着いた。

 流石に途中で一泊したけど、その時に他の旅人らしき人たちが、インスタントラーメンに興味津々で、一杯ずつ食べさせた上げた。

 そしたらお金? らしき硬貨をくれたけど、これっていくらなんだろう。


 街が見えて来た、ああ、こんなに早く着くなんて電動自転車様様だ。

 でも俺は……街には入れないでいた。


「どうしてダメなんだよ!」


 どうして? そんな事はわかり切ってる。

 言葉が通じないからだ。

 街に入るには何かが必要なようだけど、その何かがわからない。

 門番は俺を通してくれない。


 くそ、他の人達はスムーズに通ってるのに、なんで俺はダメなんだ。

 他の人達を見ると、何かを門番に渡している。

 あれは……コイン? お金か?

 あ!


「ひょっとしてコレか?」


 昨晩、旅人にラーメンを上げた時に、硬貨を渡された。

 アレかな? 銅貨っぽい物を渡してるけど、確かあったはずだ。

 俺はリュックの中を確認し、銅貨を数枚取り出した。


 それを門番に見せると三枚を手に取り、俺の背中をポンッと叩く。

 行っていいって事かな? ああ、門の方を指さしてるから良いんだな?

 城壁で囲まれた街の中は、想像以上に大きかった。


 人も多いし建物も沢山、なによりもその数が凄い。

 それにしても……中世ヨーロッパ風の街並みだな。


「うお!? こんなに大きな街だったのか! 遠くにはお城みたいなのが見えるぞ!?」


 ふぅ、なんだろう、人がいるってだけで安心する。

 そうだ、この風景をあいつ等にも見せてやろう。


 スマホを取り出してツブヤイッターを起動させようとすると……あれ? 黒かったアイコンが見えるようになってるぞ!

 なになに? 翻訳? 倉庫? 交換・換金。

 取りあえず三つが見えるようになったけど、残り一つはなんだろう。


「って翻訳!? まさかこの世界の言葉がわかるようになるのか!?」


 急いでタップすると、スマホから日本語が聞えて来る。


「らっしゃいらっしゃい! 安いよ安いよ!」

「これ十本買うからさ、安くならない?」

「そうなのよ~、あの奥さんたらね」

「こら待てー!」

「あそこで突っ立ってる奴、なんだ?」


 お、おお! 日本語だ! それにきっと周囲の言葉が全部翻訳されてるんだ!

 うっひょ~! これで言葉には困らないぜ!

 よし、早速何か会話を……俺の言葉はどうやって異世界語になるんだ?


 アプリを操作すると相互翻訳というモノがあり、それを選んで露店の人に話かけた。


「あ、あの~ちょっといいですか?」


 スマホは俺の言葉を認識し、異世界語に通訳してくれた。

 店のオッサンは驚いてたけど、返事をしてくれた。


「うお、なんだよ兄ちゃん、変わったモノ持ってるな」


 通じた! よし、これで意思の疎通が取れる!


「すみません、俺も商売をしたいんですが、勝手に商売を始めて大丈夫ですか?」


「商売をしたいんならギルドに登録しないといけねぇな。メシ屋か? 商品を売るのか?」


「商品を売りたいです」


「なら商業ギルドだ。この大通りを街の中心に進んでいくと、右にあるぞ」


「ありがとうございます!」


 よし! 早速登録しに行こう!

 自転車をこいで進んでいくと、ペンで紙に書くようなマークの看板があった。

 これだな、よし、入るとしよう。


 木製のドアを開けると、中はとっても清潔感があった。

 お、おお~、客商売なだけあって、見た目には気を使ってるのかな。

 えっと受付は……あそこかな?


「すみません、商売を始めたいんですが」


 受付のお姉さんは俺とスマホを何度も見て、すこしビビリながら口を開いた。


「い、いらっしゃいませ、取り扱う商品は決まっていますか?」


 商品か、昔は調味料が高価だったはずだけど、他にも色々と売ってみたいな。


「いろいろな物を売りたいです。ナイフや服、調味料とかも」


「ではこちらの紙にご記入ください。それと簡単な試験がありますが、直ぐに受けられますか?」


「試験ですか、そうですね、直ぐに商売を始めたいので受けます」


「わかりました、ではご記入が終わりましたら試験会場にご案内しますね」


 そうして連れて行かれた試験会場。

 試験会場っていっても小さな会議室だな。

 そこで試験を受けるようだけど……なんだこれ?


 渡された紙には『銀貨三枚、銅貨四枚の商品をお客さんに売りました。お客さんは銀貨四枚を渡してきました。お釣りはいくらですか?』と書かれていた。

 他にも似たような問題ばかりで、多少桁数が上がったかな? 程度の物だった。


 小学生か! こんな問題簡単に……銀貨って銅貨何枚分なんだ?

 し、しまったー! 前提を知らないからわからないぞ!!

 し、質問は受け付けてくれるのかな。


「あ、あの……銀貨一枚は銅貨十枚ですよね?」


 ただ質問するよりも、確認というていで聞いてみた。


「え? ええそうですね」


 なんか不安そうな顔してる! そりゃそうだよな、基本中の基本を知らないと思われてるよね!

 でもそれは問題を解いて不安をふっしょくするしかない!

 でも予想があっててよかった!

 

「す、すごい! 満点です!」


 やったぜ。

 テスト対策は受験勉強で嫌というほどやったからな、簡単なもんだ!

 問題が簡単なだけだけど。


「それでは正式な手続きに入ります。商業組合ギルドの年会費は銀貨十枚、街や国のイベント情報なども発信しますので、すぐに元は取れると思います」


 え? 銀貨十枚? 俺が街に入る時に払ったのが多分銅貨が三枚。

 手持ちの銅貨は……二十八枚しかない。

 銀貨十枚って事は銅貨百枚分だよね? 足りないじゃん!!

 受付のお姉さんが色々と話てくれているけど、チョット遮って聞いてみた。


「あの、年会費は……分割可能ですか?」


「分割可能ですが、最初は銀貨一枚いただく事になっています」


「それでお願いします!」


 よかった~、銀貨一枚、銅貨十枚なら大丈夫だ。

 その後は説明と薄っぺらい冊子をもらい、商業ギルドを後にした。

 あれ? 冊子をもらったけど、俺は自なんて読めないぞ!?


 ギルド前の壁によしかかり、冊子を開いてみると……見たこともない文字が並んでいた。

 ほ、翻訳! 翻訳ソフトプリーズ!

 スマホの翻訳アプリを見てみると、どうやら文字も翻訳しれくれる様だった。


「えっと、翻訳したい文章を写真で撮ると翻訳できるのか」


 パシャリと一枚とると、読めなかった文字が日本語になって画面に現れた。

 おおぅ! これは便利だ!

 でも文字と声は同時には使えないんだな。


 取りあえず商売をする為に必要な部分を読み、街中を歩いて市場調査をした。

 よし、この街でも売っているけど、あまり質の良くない物がわかった。

 俺は空いているスペースに木製のテーブルを置き、商品を並べた。

 場所は色々と考えたけど、どの露店もジャンルなんて考えていない、バラバラだった。


 値札を書かないとな、えーっと、異世界語ではどうやって書くんだろう、翻訳翻訳っと。


「よし! 紙と万年筆、インクの店の完成だ!」

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