第二十一話 理解されない水面下

 戦いを終えたディリオスは三つ葉要塞に下りてきた。影にいた多数の戦士たちも出てきたがあまりの戦いぶりに言葉もなかった。ジュンもディリオスの影に下りてきた。


「見事な戦いぶりで言葉もありません」ジュンは心から関心していた。


「あの程度の敵ならすぐに倒せるようになるさ。

鍛錬に鍛錬を重ねて限界の限界を日々突破していくんだ。

さっきの大天使は副官だから通常の大天使よりは強かったが、あの程度なら一撃で倒せるようになってもらわないとな。俺たちに人類の未来がかかっている。一応確認したが天使のほうは人間も、皆殺しにするみたいだ」


皆、天使も敵なのだと知り、言葉を失っていた。


「先に悪魔を滅ぼしてからの予定のようだが、強くならなければ、どのみち我々に未来はない。それに武装化していない状態で、鉄の刃が通じなかった。


身体精神強化が能力の者たちはやはり徒手拳を重点的に置きつつ、能力を持つ者たちは身体精神エネルギーをあげていくしかない。


俺たちには黒刀があるが、ホワイトホルンの多くの国では鋼が武器だ。


私のようにエネルギー自体を物質に与える能力者なら、黒刀並みの強度を得ることは出来るだろう。第八位の副官に鋼が通用しないようでは、戦い以前の問題だ。その点も考慮して対応策を練る必要がある」



ディリオスは再び悪魔が優勢になるはずだと思い、返答次第ではすぐに移動するためアツキに形勢の報告を求めた。

(アツキ。魔の穴の戦況はどうなっている?)


(今は互角の攻防を繰り返しています。天魔の数もさっきより多勢で八位の動き次第で膠着状態はとける可能性もあると思います)


(そうか。俺はさっき大天使と話した。人間が関与しなければ生き残ることが出来るかどうかを再確認するためにな。嫌な予測通り以上に厳しい戦いになりそうだ。

高位の天魔は別として、中位クラスまでの戦いなら悪魔のほうが優勢になるだろう。人間を糧にすることは悪魔にしか出来ないからな。何とかして六位までは均衡をたもたなければこの世界の生命は根絶やしにされるぞ)



(……今からエルドール城に来ることは可能ですか?)

(ああ。そうだな、ロバート王も交えて話し合いの場を設けよう。三つ葉城塞にいるジュンも連れていく。サツキの指示でここでの指揮を任されているが、サツキの選考だけに賢く独自の悪くない、意見を持っている。奴らが潰し合ってくれている今が絶好の機会だな。何事も起きないようであればお前はレガとギデオン、サツキ、ロバート王を三時間後に集めておいてくれ)


(わかりました。会議室でお待ちしております)


「ジュン。エルドール城で会談することになった。お前も一緒に来てくれ」

「わたしもですか? その間、ここはどうしたらよいのでしょうか?」

「副官はいないのか? 会談といっても打ち合わせや情報共有に近いものだからここに戻れるのは九時間後として会談と言っても情報共有や今後の対策を話し合うだけだから二、三時間程度話すだけだからすぐ戻れる。それにジュンにはもう少し要職を任せたい」


 彼は辺りを見回した。


「エヴァンがいるな。あいつも優秀だから奴にジュンが戻るまで任せるとしよう。エヴァン! こっちに来てくれ」エヴァンは徒手の稽古を中断して彼の元に来た。


「若さま、ご用命でしょうか?」


「ああ。これからジュンを連れてエルドール城に行ってくる。その間の指揮官として皆の鍛錬を仕切ってくれ。何か急務を要する場合はアツキに連絡するようにしてくれ」男はエヴァンに命じた。


「わかりました。お任せください」エヴァンは一礼して指揮官たちを呼び出してそれぞれに命令を出していった。


「一応三時間後に王室へ集まることになっているから頑張れよ。高速移動は基本的な力が一番試されるからな」ジュンは頷いた。


「限界が来たら遠慮なく言えよ。性格からみて、弱音を吐くのが嫌いみたいだから無理しすぎるな」ジュンは余計な装備を外して最低限の軽装備だけ装着した。


「それよりも戦闘後ですが大丈夫ですか? 少しお休みになったほうが……」彼女はディリオスに話しかけた。



「さっきは色々試していただけだ。余力は十分に残してあるから心配するな。じゃあ行くか。休憩は一、二度入るだろうから一回目はまずお前についていく。死なない程度に快走していけ。これれは鍛錬だから能力は使わず身体能力だけでいく」ディリオスが黒衣を纏っている間に彼女は体を慣らした。



 ジュンは戦いを終えたばかりのディリオスに、まだそれほどの余力がある事に驚いていた。正直、負けない自信はあった。彼女はサツキから多くを学んでいたし、御庭番衆の中でも移動速度はトップクラスだったからだった。ジュンは勝つつもりで、これは自分との勝負だと考えていた。

「では、いきますね」


 彼女の足取りは軽快で走り方に似合わず速かった。浮足うきあしだから軽快になのかと彼はすぐに気づいた。彼女の能力では力を込めなくても問題ない能力なため浮足で移動するほうが適切であり、自らの能力に合っていた。


このまま速度を維持できるなら三時間ほどで着くが、どこまで持つかなと彼は彼女の後姿を見ながら考えた。


 二時間が経過した。彼女は速度を落とさないまま、疲れもほとんど見せずに疾走していた。つま先走りをしていたせいで、泥濘ぬかるみに足を取られて正面に倒れ込みそうになった。ディリオスは彼女の肩に手をかけた。


「十分わかったよ。それだけ走り込めるのは御庭番衆の中でも多くはない。昨夜は雨が降った、泥濘ぬかるみがあるのは当然だ。今目に映るものだけを観察するな、ありとあらゆる事が命を繋げる布石だと思って観察を怠るな。少し休憩しよう」彼女に水を手渡した。


「ありがとうございます」五分ほど休憩して彼女は立ち上がった。



「今度は俺の番だな。様子を見ながら速度は調整するからしっかりついてこいよ」

 男は言葉と同時に一瞬消えて、すでに十数歩先にいた。ジュンは必至で男の背中を追いかけた。


彼は走りやすい道を選びながら疾駆した。大きな沼が遠方に見えた。ディリオスはすぐに近くで一番大きな木を蹴り昇りながら一瞬で頂上に達すると力の限り蹴って跳んだ。


水を含んだ木々はよくしなり彼を遠くへと運んだ。

彼女はそのあらゆる物を使い見事な移動の仕方を、見上げながら走った。追いつけそうになるとまた離された。基本の能力差だけでここまで違いが出るのかと、ジュンは心の中で強く思った。


 実際、そう思うと彼女は彼の走り方をよく観察した。

彼は地面の先々を見て歩幅や力の入れ具合をしっかり確認していることが分かった。岩場があれば力を込めて高く蹴り上げ、緑地なら彼は緑が消えるまで疾走し続けた。


ディリオスはジュンに実戦であらゆる物を使いこなすことが、勝利を生むこともあることを行動をもって示唆しさしていた。


その事に気づいているとはすぐには気づかなかったが、持続してついてきている姿を振り向きざまに見て、ついて来ていることから観察する力が上がったようだと確信した。


 戦いにおいても最重要のひとつである観察力を、彼女はひとまずものにしたと、後は実戦で活かせるようになるかどうかだなと彼は思った。


走るだけでも走り方によって体力を温存できたりすることで、一瞬の対応にも動けることは戦いにおいては重要だった。

黒衣の男は歩調ペースを落とさずに、ジュンがついて来ることが出来たので思ったよりも早くエルドール城に着くことができた。


息が激しく荒くなっていた彼女に彼は声をかけた。


「そこに座ったほうがいい。ほら、水も飲んでゆっくりしながら聞いてくれ。例え相手が格下でも、敵に洞察力があればそれを補うこともできる。

相手の弱点を探れるようにそれを自然に身につけることが出来るようになれば、飛躍的に全体能力が上昇する。逆に隙や防御ガード面を見破られたら苦戦することになる。


一度でそれを理解できる者は少ない。

ジュンは資質も高いし、まだまだ自分の力を上げることが出来るだろうから頑張ってくれ」彼の言葉は息継ぎもしないで普通にジュンに話しかけた。


「はい……ありがとうございます」彼女は返事をするのがやっとだった。無駄口も叩けないほど彼女は疲れていた。「身体能力がどれほど大事か理解できたか?」彼女は黙ったままうなずいた。


 男は黒衣を脱いでジュンに手渡した。彼女は意味も分からず受け取った。彼女はその黒衣のあまりの重さに笑いが出た。圧倒的に負けている上に、これほど重いものを身につけて走っていたのかと。彼はジュンから黒衣を受け取ると再び身に着けた。


「ゆっくりでいいから会議室まで歩いて行こう」ジュンを見て微笑ましく思った。昔の自分や皆がこの道を辿る、その険しき山を越えるために休むことなく日々鍛錬に励んだ姿が被ったからだった。


「おかえりなさいませ」門兵の騎士が敬礼した。騎士の言葉にディリオスは首を軽く縦に振った。

「皆、揃っているのか?」

「皆さまお揃いでございます」

「わかった。ご苦労」ディリオスは心で念じた。


(ミーシャ、予定よりも早く帰れそうだ。また連絡する)返事はないが心と心が常に繋がっている彼女に心配かけないよう言葉を念じた。


 石段をのぼりながらどのような状況になっているのかが気になった。会議室での会談と聞いた時に、ロバート王が神の遺伝子により病が快方に向かっていることは、誰かに聞かずとも分かっていた。


階段をのぼり赤い絨毯の道を進んだ。エルドール王国の会議室には大きな円卓が用意されていた。

「待っておったぞ! 人類の英傑よ」ロバートは快方どころか若い頃のように力がみなぎっていた。


「お待たせしました。さっそくそちらの状況をお聞きしたいのですが、どちらが優勢ですか?」

「現在は変わらず魔族が優勢です。ですが、先ほどのような九位だけの戦いと違い大天使が指揮官でそれぞれの大天使には多数の九位の天使が配下にいるようです。二時間ほど前、大天使の指揮官と思われる者も到着したようです」サツキは状況を説明した。


「そちらは何かありましたか?」皆がディリオスを見ていた。

彼は一息いれて話し始めた。


「俺は俺を狙う大天使と直接話してみた。指揮官と視線を交わしていたことから見ておそらくは副官クラスだったと思う。

強さは指揮官と隊長の大天使の中間くらいの強さだ」ディリオスたち刃黒流術衆の者たちは、直接対峙すれば相手の強さは分かる程度の能力は有していた。


「人類が干渉しなければ生き残ることが出来るかどうかを直接聞いて、可能性があるならどんなに困難な問題でもそれを実行する気でいた……だが人類は神の名を利用して無駄な争いばかりをする混沌カオス的存在で、今回は俺たちに救いの手はないらしい。


今までも数百年程度の間を空けて小さな天魔聖戦は起きていたようだが、今回は今までとは違うと言われた。

悪魔王サタンが復活したのかは分からないが、魔族が本気になるということは天使も本気を出さなければならない。

お互いに本気で戦う以上、悪魔から見れば基本的な強さを上げる存在の人間は、天使からすれば邪魔な存在でしかないと言われたよ」

皆が黙り込んでしまった。



「戦う以外に道はない。俺はその大天使と配下の天使どもを皆殺しにしてやったら、副官であった大天使を失って、天使は魔の穴のほうへ逃げて行ったが戦うしかないなら我々はまだ脆弱ではあるが少しずつ着実に力をつけてきている。


覚悟を決めて命を賭すしか道はない。お互い半神については一切触れなかった。

他の重要な事は話していたが、半神や神の遺伝子については一切何も言わなかった。


だからこそ確信を得たが、我々が思う以上にあの情報は、奴らに比べて圧倒的に弱い人間にさえ、知られたくないほど重要なことのようだ」



 彼は口には出さないが、己が時間稼ぎをするしかないと理解していた。誰もがそれを口に出せない真実だった。無意識にディリオスは胸にある四つ葉のクローバーに手を当てていた。


「俺の予想では俺なら今出てきている総指揮官の大天使くらいなら勝てる自信はあるが、以前は大天使に中位クラスだと言われたが、正直言って自信はない。

奴らには潜在的な力を見る能力があるのかもしれない。

それも含めての話なら理解できないこともない。サツキ、俺以外にまだこの三国で基本能力が上昇中の人間はいるのか?」



「レガさまとギデオンさま、わたしとアツキは上昇率は下がりましたが現在も上昇中です。イストリアにもまだ上昇中の者が十数名います。


人数が不確定なのは防衛系の能力者が、能力を使っているためだと思います。エルドール王国にはいませんが、ロバート王の特殊な力は非常に強力なのは分かります。


おそらくですが、ご病気であったため先にそちらに身体エネルギーを生命エネルギーに変換して消費したため、能力に目覚めるのが遅くなっているものと思われます。


これまで能力覚醒した者たちを見てきた限りで言わせて頂けると、最善でも目覚めれば立っていられない程になるはずです。


最悪の場合は命の危険も考慮したほうが無難だと思います。ですので、出来る限り今はお休みいただけるよう進言します」



ロバートは自分で想像するよりも力が漲った事により自分自身の置かれている状態を把握出来ず過信していた。



「我々刃黒流術衆にはまだ多数いますが、伸び率が全体的に低下してきています。お気づきだと思いますが、ディリオスさまは逆に上昇率が飛躍的に上がってきています。ディリオス様は更に最初の頃から鍛錬も兼ねて、実戦をしている事により上昇率が上がっているものだと思われます」



「人類が結束すれば勝ち目はあるが、すでに俺と同じくらいの強さを持つであろう北部のリュシアン・ギヴェロンと二人組を組めれば、鍛錬次第ではあるが上位の奴らに対抗できるはずだ。

だがそれは不可能なことだろう。

仮にその時が来た頃には、死体の山が出来た後になる。それでは意味がない」



「中位クラスに今はまだ勝てる気がしないが、俺はありとあらゆる事を考えながら強くなる道を探している。基本的な力はまだ上がっていると感じるが、実際どうなのかわからないから後でいいからサツキに調べてもらうつもりだ。


鍛錬方法も我々の刃黒流術衆の鍛錬方法を組み込もう。脱落者は多数出るのは分かっている事だが、今のような甘い鍛錬では追いつけない。何の役にも立てず死んでいくだけだ」

 


ディリオスは本心をさらけ出した。役立たずは捨てなければいけないのが、真実であるという意味であった。それを実行したとしても、時間が足りなさすぎるのが現実だった。


「俺はイストリア王国のカミーユの能力に一目を置いている。

まだまだ弱いがあの能力は必ず役立つ時が来るはずだ。

根性もある、絶対に弱音もはかない。カミーユの能力に見合った戦い方も幾つかすでに考案済だ。


カミーユの従者であるネストル・ゴードンとも手合わせしたが、奴はすでに相当な強さを身につけていた。


妹がミーシャの付き人だと言っていたから、おそらく二人で手合わせしながら鍛錬しているのだろう。ネストルの能力を見せたのも、イストリアでは初めてだと皆が言っていた。


俺がカミーユを一撃で倒したのがよほど気に入らなかったのだろう。

三分間の全力試合を申し込まれた。

引き分けに終わったが、奴は自分の負けだと理解していた。


それで分かった事は幾つもあった。

相性は恐ろしいほど関係してくる。

俺の能力だけでは奴を見切ることは出来なかったはずだ。

洞察力や分析力がない者は、ネストルに勝つことはまず無理だろう」


「そのネストル・ゴードンはどのような能力だったのですか? 教えて頂ける範囲で構いませんのでお教えください」分析力に長けたサツキは、興味を持った面持ちだった。


「奴の能力は液体金属だ。どこを斬ろうが殴ろうがダメージを与えることは出来ない」


「液体金属ですか……逆に言えばディリオスさまは三分で弱点を見つけたのですよね? そのほうが遥かに困難だと思います」

それはネストルも言っていた。カミーユもネストルも今後更に、厳しい鍛錬をする覚悟はある。



 サツキは難問なほど何であれ、解明する分析力に長けていた。だからネストルは当然だが、ディリオスの思考能力に更に興味を抱いた。



「話は逸れたが、当然だが我々が介入せずとも、一騎打ちに持ち込まなければならない。それほどまでに指揮官の強さは、配下を圧倒している。指揮官が最初に戦わない理由は、全員がそれぞれの使命を全うしているからだ。指揮官の力をいかにして削るかという使命を帯びている。


次に出てくる七位に我らは戦わねばならないとなると相当厳選される。つまりは犠牲者も大勢出てしまう事になる。この流れだと八位の争いが終結したら大天使が大量に尖兵として出てくることになる。


南部では俺以外はまだ大天使と戦った者はいまい。

はっきり言って相当強いぞ。今はまだ奴らは八位同士の死闘を演じているが、この戦いがいつ終わるかは分からないが、今は強い者はさらに鍛錬して強くなるしかない……たが時間が必然的に必要になる。


多少の鍛錬をしたところで奴らの強さに追いつけないのが本音だ。ジュンは俺と大天使の戦いを見ていたから分かるはずだ。次に出てくる中に天使はいないぞ、最低が大天使だ」



サツキはジュンに問いかけた。「ジュン。大天使はジュンの目から見てどの位強いと思うの? 正直に答えてほしい」しばらくジュンは考えて答えた。


「あの大天使が尖兵として出てくるのであれば、この地や三つ葉要塞は死地になると思います」


 サツキはディリオスの言いたいことを察知していたが、彼が言い出せない理由も分かっているだけに黙っていた。



「俺たち人間には今はとにかく時間を作る事が、何よりも大事だ。絵巻物の半神を持つ者を探し出すには、相当時間がかかるだろうし、神の高遺伝子を持つものならかなりの人数がいるだろうが、


使人間には戻れないが、奴らの膠着状態を長引かせることは可能だ。だがこの手を使うにはまだ早いし最終手段で出来ることなるし最後の奥の手で避けたい作戦だ」



 サツキは困惑した。ディリオスの発言が理解できなかった。周りをそれとなく見渡したが皆、理解できていない面持ちをしていた。



「我々は確かに奴らよりも圧倒的に弱いが、そこが狙い目でもある。最初は攻勢の力を削ぐ方法でいこうと思う、劣勢に立たされている奴らの強さをわざと上げさせて時間稼ぎするのは危険ではあるが、今後は徐々にその機会は増えていく事になる」


 ディリオスには何か考えがあることしか分からないまま話は進んだ。



「第七位が出てくるまでは、それぞれ得意な能力をさらに鍛錬して底上げをし、最低でも大天使と戦えるほどの者ではないと、無駄死にになる。我々は参戦したくはないが、参戦するしかない状況の事も含めて考えていかねばならない。


部隊や小隊を作っていこうと思う。ネストルとの戦いで相性の良し悪しが大きく出る事がわかった。能力に特化した部隊を幾つか編成して、なるべく相性が良い相手を敵として戦っていくつもりだが、そう簡単にもいかない。敵の知識や知恵は第八位の奴でも高かった。


レガとギデオンにはそれぞれ能力者を数十名と、能力者以外の体術に特化した者を主体とした約七百名の大隊長として部隊を作ってもらう。能力者もお前たちの戦闘スタイルに合った者を選んで連れていけ。数が必要な戦いも起こるだろう、その時の為に連携が取れる数を活かした戦い方を、徹底的に鍛え上げてくれ。


俺に能力や体術で勝てるくらいまでの連携を期待する。我らは元々最強を自負した集団だ。それが連携を取れば、想像以上に恐ろしい集団になるはずだ。お前たち二人には苦しい事になるだろうが、俺から厳命を出す。


国々はいずれ滅びる国が出てくるだろう。エルドール王国もその中に入る。お前たちの事はイストリア王国のダグラス王に頼むつもりだ、鍛錬場所はおそらくイストリア城塞の南にある森になるだろう。食料、その他の必要物資は気にせず鍛錬のみに時間を使え。


いいか、私が死のうとも他の何が起ころうとも、部隊を完璧に仕上げるまでは天使と悪魔との戦いを禁ずる。何が起ころうとも世界を救うために、それぞれがこれ以上は無理だと三度思うまでは、絶対に参戦するな。


そして、お前たちが自信を持って俺を倒せると確信したら、三度まで俺に戦う挑戦権を与える。俺も日々出来る限りは強くなっている。簡単にはやられはしない。お前たち二人を頼りにする」

レガとギデオンは深く頷いた。


「主軸である隊長を補佐コンビネーションでさらに強くなるよう、能力者部隊と身体エネルギーが飛躍的に高い部隊で対抗していくつもりだ。身体エネルギーに特化している奴らはある意味あらゆる事が可能だ。


多くは我々の刃黒流術衆の者たちが多く、身体エネルギーさえ高ければ能力者を凌ぐほど手強くなる。

それ故、身体エネルギーの高い者たちは小隊以上で組ませる。人数が多いほうが力を発揮できるからだ」


 皆、ディリオスしか想像できないほど先まで見えていると感じた。

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