第三話 半神
「人類が生き延びるには、まずは神の高遺伝子を持つ半神を探すしか道はない。当然ではあるが、それは手始めに過ぎない事を、よく理解して読んで欲しい。
この世界の生ける多くの者は半神ではないが、半神は奴らにとって脅威となる存在であり、人間にとって唯一の希望である。
奴らも半神を見つける事には必死のようだ。
人間はやつらに比べると脆弱だが、神の高遺伝子を持つ人間は天魔にとっても殺せないほど価値のある存在のようだ。
我々人間は悪魔や天使と変わりないのかもしれない……この事を知るため有能な人間を幾人も使い、人間ではないものにし殺めてきた……結果的に死ぬにも拘わらず、多くの勇気ある者は人類のため己の命を捧げてきた。
思い出すのも苦しいというのは見苦しいが、幾度となく試した結果、あくまでも試した結果から云うと、人間に神の遺伝子は最高でも半神——つまり五十%の高位遺伝子を持つものだ。一%の誤差も許されない。
神の子である高位天使や魔神が人間界では、精神肉体的な力を使い続けるため、この人間界では五十%の能力が限界のようだ。
そして塔からの力のおかげで、五十%を下回ることもない。
全ての神の子である天使や魔神は、地上では位に関係なく五十%を維持し続ける。全ての文献と我々の実戦から答えはそうなる。
しかし、もし最後の扉が開かれたら分からない。
熾天使や高位魔神は神霊体として姿を現した事はあるが、扉から出てきたことはない。
扉から出るためには、第二位である天使や魔神を倒さなければならないからだ。
神霊体は、あの者たちの精神エネルギーだけで作られた、幻影のようなもので実体はない。
故に僅かな時間しか、その姿を維持することはできない。
その精神エネルギーだけでも、力は絶大であった。
天変地異を起こせるほどの精神エネルギーはあった。
我々は天魔の戦いでそれを見た。
一撃で一国を亡ぼすほどの威力だった。
しかし、神霊体のままでは精神エネルギーの消費が激しすぎるためか、その熾天使はそれ以後、姿を見せることはなかった。
そしてあくまでも仮説ではあるが、半神と神の子が同化すれば熾天使や魔神の王たちと、同等もしくは凌ぐ力を手にいれることは間違いない。熾天使や魔神を出し抜こうとする、中位クラスの天魔のやつらも多くいるのだと確信する。
それ故に半神は、非常に難しい立場に立たされることになるが、唯一の希望であることに変わりはない。問題は多数ある。
我々には実現不可能であったが、再び天魔聖戦が起こるであろうために記する」
「今は三つの世界が繋がっており、我々の祖であるアダムとイヴは、禁断の知恵の実を食べてこの地上に堕とされた。
神の教え以外にも、善悪の全てを知ってしまったからだ。
アダムは地上に堕とされながらも、千年近く生きたことから、命の木の実を食べた可能性は極めて高い。
現に神典には、アダムたちを地上に堕とした後、神が命の木の実を食べるものがいないようにするために、上位の天使たちにエデンの園を守らせている。
これらのことから、我々人間の祖先であるアダムは、命の木の実を食べたと断言する。
そして今再び世界は繋がった。不死のように長命になり、
時が止まったように、時間だけが経過していくだろう」
ディリオスはいつの間にか真剣な眼差しで読んでいた。理に適っていたからだった。そしてディリオスは熟慮した。
(いつの時代のものか確信はできず不明だが、我々のように船で逃げる前に書き残したようだ。わからないのは誰がこの神典と絵巻物書いたかだ。
絵巻物に関してはわざわざ良質な古い羊皮紙を使って、レガの目を引かせている。内容も遥か昔の事で人間には知りえないものだ。
この書き手は人間と人間以外に、人の味方と思われる事情通が最低でも一人はいる。だがそうなると、問題がある。
完全な同化に成功した人間か、それ以外に同数値ではないが、神の高遺伝子の人間がそれほど強くない天使か悪魔と同化し、精神で制したのかは不明だが、完全な成功に導くに至るまで、少なくとも数組は同化して、人間の精神が打ち勝ったということになる。
五十%の人間が複数存在はしたが、何人成功したかが問題になってくる。そして数十年か数百年かはわからないが、一度に優秀な人間が溢れることがこの地上では度々ある。
俺が知る限りでもそれらしき人間は今の世界でも数人は知っている。今の世もそれに当てはまる。
だが一%の誤差も無いのかと、聞かれれば自信はない。
四十九%では、天使や魔神に取り込まれるということになる。
運などに頼る事は出来ないことから、四十九%の高遺伝子を持つであろう人間の精神エネルギーが上回っていれば、人間に主導権を握る可能性はあるのだろうが、弱い天使や悪魔と同化しても、あまり意味は成さないだろう。かと言って中位クラスとの同化では間違いなく取り込まれるのだろう。中位の者が抜け駆けをしようとしているとはその事か。試せないことが、同化には多すぎる。確かにこの著者が言うように
中位の天魔が仮に取り込めば九十九%の力をこの世界で発揮できるということになるわけか……それは確かに天使も悪魔も欲しがるはずだが、少し考えただけでも色々問題が多いな。
この同化の問題は人間の人格などが消えてしまう所にある。
魔族が攻勢をしかけたのは、当然神との戦いが目的だろうが、それだけではなくその裏には神の高遺伝子の所有者を最低でも一人は見つけていて、同化をしようと考えているのか? それともサタンが完全復活したのか? 複雑極めることが同化には多すぎる。
俺が知るだけでも世界には断言は出来ないが、高遺伝子五十%を持っていそうな真に強い人間は数人いる。俺の全力の暗殺術が、どこまで通用するかが愉しみだ)
ディリオスは絵巻物を読みながら、神典を同時に解しながらそう思った。
「この世界に住む全てのものは神から生まれたものである限り、神の遺伝子とアダムの血筋から命の限りが遥かに長くなったと言えるだろう。
天使と魔族は半神の存在を恐れている。
神典ですら存在を肯定し、半神については挿絵までいれている。
仮に見つけたとしても、この件の問題には幾重にも難局がある。
しかし、もし半神と高位の天使や魔神が同化したのなら最高位に位置する強さを間違いなく身につける。それだけは確かだ。
同化するには、同化を契約する想いの承諾が必要なようだ。
心が屈したら、それが承諾の証になるようだ。
それは半神以外でもそうだった。
半神を見つけ同化させることは出来なかったが、これを理解すれば奇跡に近い事が理解できたと思う」
ディリオスはこの奇跡が起こる可能性を、この本の書き手以上に熟慮していた。
(悪魔であれ天使であれ、人間には全く興味が無くなると考えると、我ら人間の味方になる同化を結ぶということにして同化の契約は交わすが、契約がどれほどの効力を発するかが難局と言える。
そして仮に、心の承諾による契約の効力が嘘だった場合、同化出来ないのであればいいが、騙されても同化が可能なら、人間の事などどうでもいいと考えている天使か悪魔に属されるだけで、人間の味方にはならないだろう。
一瞬考えただけでもあらゆる点に障害がある。著者の言う通り奇跡に近いな)
そう思うと、彼は再び読みだした。
「知性の低い魔物が人間を貪り喰うのは、承諾されない前提で、数を食べて強さの底上げをしているにすぎない。
それ故、たとえ半神でなくても、神の高遺伝子を持つ人間との同化も多数起きた。
その力は何度となく見てきたが、想像を絶する強さだったと、言わざるを得ない。
中位以上になると知性面でも下位の者とは大きな差が生まれる。
混沌の人間たちに承諾させることが容易く、そして可能だったというわけである。
死から逃れられると誘惑するだけで、大抵の人間は同化を心で承諾するだろう。心が折れれば、終わりだ。
奴らの自由に、自然と同化できる。
そういう意味では人間はあくまでも、神の高遺伝子含有者に限られるが、
貴重だと私も彼らも、考えるところだ。
しかし、いくら同化したとしても、人間には未来がない事が変わることはない。同化すればするほど、強い人間はいなくなるからだ」
ディリオスは勝機が予想以上にある事に、微かに口がゆるんだ。
最初は神話や伝説にしか登場しない神々や悪魔の王などを相手に、どう戦えというのかという思いが強かったが、人間にも神の力が宿ることを知り、勝つ可能性が例え僅かでも、あることを理解した。
「我々が解明してこれを書に記すのは、人間にとって意味のある死を遂げた数多の勇者がいたことを後世に残すためだ。
我が子がこれまで話したことを発言した時は、家臣に苦笑され最初は誰もが信じなかった。
伝説の天魔聖戦がまた始まりを告げたことを……我が子を信じる強き者たちは皆、息子と共に先行し命を賭して頭の固い愚かな我々に真実を残した……それからだ。
私は
同じ能力でも高い能力者もいれば弱い能力者もいる。
細かい癖や血統、人格、思想、信仰、知恵、悪意、善意などあらゆる経験など人がそれぞれ違うように能力者にも色々いる。
戦闘型から防衛型、精神、特異型などありとあらゆる可能性を秘めている。奴らにはない人間特有の強みになる能力だ。
アダムとイヴは禁断の果実を口にして地上へ落とされたが、そのおかげで我々は天使にも悪魔にも無い、能力を得る事となった。
あとこれは共通して言えることだが、身体能力上昇は全ての人間に起こる事だが、一定値まで行くと止まるものではあるが、一部の者には上昇力が継続して上がり続ける者もいた。
普通は身体能力上昇が止まってから能力に目覚めるか、それで終わるかのどちらかであったが、その一部の者たちは身体能力上昇があまりにも激しく上がるため、上昇中に能力に目覚めていた。
精神的に強い者には特に現れやすく、それでいて上位の複雑ではあるが強い能力に目覚めやすかった。目覚めたばかりの者はあくまでも能力への扉を開けたと考えたらいい。
種類を複数覚えることは無かったが、自分の能力を上手く使いこなせる者は己よりも強い敵であろうと負けることは無かった。
能力の上限も個体差があり数多ある系統が変わるわけではないが、己の系統に限り色々な能力を扱う者も多数いた。
話はそれたが今これを読んでいる者は、笑わず真実だと信じてほしい。
神の遺伝子の特殊能力は
自滅への道を
四十九%以下の高遺伝子を持つ人間と神の子らの高遺伝子が同数であれば、互いに内面で主張し合い暴走することもある。その者は五十%の者では無かったが、不動の精神力を持つ者だった。
しかし、それでも五十%の天魔には勝つ事は無かった。
最終的には天使や悪魔のものとして、戦う戦士となっていった。
よって軽々しく同化をするのは、非常に危険なことであることをここに記す。実例を見た事はないが、高位の天使や魔神も安易な同化を避けている事から、例外なく同じ結果を招くと考えられる。
これは同化のもう一つの方法だ。
この同化方法自体は困難ではないのだが、神の高遺伝子を持つものが、精神的に非常に強く何者にも屈しないほどの者であれば、下位に限定されるが神の子らである天使か魔族と人間が同化し、人間の精神力が
含有率は上位の天使や魔神にもわからぬ以上、同化はありとあらゆる面で危険であるとしか言い残せない。故に不用意な同化は避けよ」
流すように書き
「そろそろ時間のようだ。我らの祖国はもうじき滅ぶ。生き残ったものたちよ、再び神の戦いが起こるまで生き残るために鍛錬せよ。魔族も天使も容赦なく襲ってくる。
人間の最後の希望を託す残り数十の船団を今日出すが、海を制する最強の生物から一隻でも逃れることが出来れば、それは奇跡に近い幸運だろう。
そのため希望を乗せた一船に、この神典とともに剣の真宝命をのせる。
他の船には操舵に必要な最低限の人員と、攻撃部隊を乗せて囮にする。
運がよければ巻き込まれずに、いずこかの陸地にたどり着くはずだ。天魔の争いを避けることが可能なら、戦いには参加せず静観せよ。
何度も言うがこれは神と悪魔王の戦いなり。
魔界や天界の階層扉が開かれるときには、更に高位な神の強力な恩恵を授かりしものが出てくる。
下位七位の天使や魔族たちは特殊能力者を持つ者は限定されているが、そのぶん身体能力が恐ろしく強力であり、我らよりも遥かに優れていた。
対抗するには特殊能力者か同じように身体能力が強化された者たちで対抗せよ。
天使は皆言語を理解し話せるが、魔界で生まれた最下位の魔物には言葉は通じない。魔物は最下位にしか存在しない。
第八位に位置する魔族は話せるようだが話をする気もないようだ。だが魔神である中位以上のものはあらゆる言語を理解しこちらから殺意を向けなければ拷問などせず一瞬で殺してくれる。
気分次第で奴らは人間同士を戦わせて神の高遺伝子のものを探しているようだ。彼らを助けようとしたが、逆に奴らの強さに屈して取り込まれる者もいた。
しかし、魔神の中には人間を主食とする者もいる。
自決をする間もなく捕まるほどの速さで、到底人間がその動きを捉えることはできない。
一度捕まった者は二度とその姿を見ることはなかった。我は我が子を信じてやらなかった自らへの怒りから、一矢報うため多くの者たちの命を犠牲にした。
これが無駄にならないことを信じるしかもう道はない。
これより数百年か数千年か後に再び争いは起こるだろう。
多くのことが判明したが、まだまだ不明な点は多い。
遥か先に希望を託して、多大な犠牲を出し大陸を目指す我々のことを許してほしい」
巻物は古語で書かれていたが教養の高い四人は読むことができた。
「どう思う? 皆の意見を聞かせてくれ」ディリオスは三人の意見を普段から頼りにしていた。
一呼吸入れてアイアス・レガは言葉にした。
「まずこの絵巻物を書いたのは我らの祖である可能性は高いです。
見つけた時には
あと初代領主武威は対となる剣を初代エルドール王に捧げた記録もあることから真実かと思います」
「埃などで真実味を増して見せるのは簡単だ。だが、祖先がこの絵巻物を書き残したのは事実だろう。真宝命が剣だと書いている点と武威が捧げたことに関しては常識的に考えれば俺もレガと同意見ではある」ディリオスはサツキを見た。
「サツキはどう思う?」
「私はこの絵巻物に書かれていることは真実だと思いますが、これは現本ではなく
しかし中身の情報は確かなものの可能性が高いと推測します。
天使、魔族、そして人間のそれぞれの観点からみても論理的に人間が利する情報だけが書かれています。
真宝命に関しては私も同意見です」
アツキの表情に目を向けた。
明らかに思案している表情を見せていた。
「私は二人とは違う視点から見ています。あの大穴を見てしまった以上、天のバベルとやらが出るのはほぼ確実のはずです。
天使と悪魔が戦うだけならば我々は隠れ住んで事は終わりますが、この絵巻物を見る限り確実に我々人間も死闘に巻き込まれるでしょう。
この書き手も何度も書いていましたが、信じ難い事実を知っているのは我々四人だけです。
ディリオスさまはすでに魔物と戦い、その存在が人間に害を与えていることも承知しておられます。
私はこの信じ難い事実に基づいて行動を起こすべきだと思います。
あんな巨大な穴から敵が出ると考えるだけでゾッとします。
今こそ我らの力が必要な時だと思います」
ディリオスはアツキの意見に頷いた。
「レガとサツキの意見はわずかな違いはあるが、ここにあるという点では同意のようだな。俺はサツキと同様にこれは現本ではないと思う。
それよりもこれを誰が書き写したかが気になるが今その答えを見つける時間はない。アツキの意見は的を得ている」
ディリオスはどれを選択するのが正しいのか一瞬頭で悩んだがすぐに答えを出した。
「これを書いたのは我々一族の祖先のいずれかの王ではないとお思いなのですか?」サツキは尋ねた。
「難しいところだが、真宝命は有名な話だからな。時間もないと言いながらわざわざ書き残す意味が何かあるか?」
サツキは納得し、難色を示した。
「真宝命を記したのはどちらとも取れる。この書き手が本物だと信じて欲しいから書いたのか、それとも裏の裏を考えるような人間に対して、これが真実かどうかを調べさせようとしているのかのどちらかだろう」
サツキは覚束ない表情を浮かべた。「その意味は何なのでしょうか?」
「俺はこの書は指南書のように思える。
しかも人間が書いたものではない気がする。
全てが嘘だとは言わないが半神の事についてや、上質な紙質である羊皮紙を使っていること、一見後世にも伝わるように良質な紙を使っている点もそうだが、一番引っかかるのは天使、魔族、人間の三種族について詳しすぎる点だ。
同化についてもそれは言える。
これを書いたやつの狙いはわかるが、
過去に最低でも一人は五十%の人間と五十%の天魔が同化したと俺は見ている。
半神の話なども理にかなっていることから、この書き手はこれを読ませるためや興味を持たせようとしているのは明確だ。
この本を是が非でも読んで欲しがっている。
そのためにわざわざ色々工夫している。
ここまでして嘘を書くとも思えん。
だが穴が出現した以上、これが真実だと仮定して動かなければならない。今のところだとそれくらいしか俺にはわからない」
「狙いは何なのでしょうか?」サツキはディリオスに尋ねた。
「詳しくは俺にも何とも言えないが、これを書いたやつは人間を特別視している。同化の事については細かく書かれていることから、書き手自身が同化をしたいのか同化を何者かとさせたいのか考えているように見える。
だが、当然問題は山積みにある。
今の時代、つまりは天魔聖戦が起こるこの時を知らないと意味のない書だと言うことになる点だ。
仮に全てを予想して書いたのなら、それは神話や神典にも出てくる預言者が書いたことになる。
そうなるとこの話は真実だということになってくる。
どちらにせよ、書き手は人間の味方ではあるが、これを見つけられる事を祈って書き写したようなそんな気がしてならない。
これを書いた者も同様だが神の高遺伝子を持つ人間は天地の者どもさえも恐れる存在だというのも真実だろう。
それほどまでに人間の神の高遺伝子とかいうものが五十%あるものは天魔聖戦さえも戦局を左右しかねる貴重な存在なんだろう。
そしてその者は極々僅かにしかいないことを強く訴えている事から、五十%の神の遺伝子を持つ者への警告か、またはそれらしい人間は絶対に天使や悪魔に見つかってほしくない事が狙いのように思える。
人間が勝つには同化をするしかないと言いつつも、
同化に対しては反対意見を出している。
それなりに熟慮出来る者が読まなければ、支離滅裂のように思ってしまうだろう。
だが、仮に今の時代にこの死闘が起こると分かっているのであれば、今の我々の置かれている状況ならこの行動さえも予測可能だ。かなりの切れ者でしかも、天魔大戦を望んでいる気がする。
未知の事は何でもそうだが先入観は持ちすぎないほうがいい。
これ以上話すには値しない、まだ俺個人の推測でしかない。
特殊な能力の事や他の事に関しても俺たちは知らなすぎる。
何も知らない以上話すだけでは無駄に終わる。
これが真実ならアツキの言う通り天のバベルとやらがそのうち出てくるだろう。だがそれまで待てば後手に終わる。
アツキの意見で動くことにする。
いずれにせよ答えは
あそこには大陸全土の書物以外にも人類の全ての記録が残されているらしいからな。
今起きている騒動が落ち着いたら行ってみるつもりだ」
「その際はお供してもよろしいでしょうか?」サツキの言葉に笑みが出た。
「俺の付き人だろう、当然つれていくさ」ディリオスは笑みを浮かべて返した。
「天のバベルとやらが出てくるまでにやれるだけの事はやるぞ。
世界を守るために俺の命が必要ならくれてやる、人類の力を見せてやるぞ」
すでにディリオスはまだ見ぬ敵に殺意の念を向けていた。
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