第14話 反省会議


4人が小屋に残され、しばらく沈黙が続く……


ここで口火を切ったのは、リーダー気質のラズさん

「あのさ・・・・・班長も言ってた訳だし、

 ”何ができて、何ができないか”について、話してみない?」


アニィちゃんが小さく何度も頷いている。

私も

「うん、それがいいと思う」

と応えた。


キリさんはまだちょっと険しい表情で、ムスっとしている……


ラズさんは私とアニィちゃんに軽く頷いて続けた……

「まず気になったのが、ハナさんのライトを2個までなら出せるって事なんだけど……、実はこれ、上級の魔法使いでもなければ難しい芸当なんだよ」


「えっ?!」

今度は私が驚愕した。

(なんで上級の技を私みたいな低級見習いが出来るの……?)


「それだ……俺も腑に落ちなかった……」

キリさんがやっと口を開いた。


「ちょ、ちょっと待てください! 私には簡単にできる事なので、

 何がどうして上級の技なの?」

(私は自分の使う魔法さえ、知らないことが多い……)


ラズさんは私の”何も知らない”という反応に、少し面喰いながらも……

「どこから説明しようかな……

 そうだね、ハナさんはライトとヒールを使えるでしょ?

 もちろん、それぞれを連続で唱えることも容易だと思う、

 これを”連続魔”と言って、割りと誰でも可能な事だよね、

 でも、同じ魔法を2個出すというのは難しい技術なんだよ。

 術の重複はその分、術者の負担も大きくなるからね」


(そうだったんだ……でも、なんで私はできるんだろ?)


「”重ね掛け”だ」

と、キリさん。


(重ね掛け?)


ラズさんはキリさんに頷き、

「うん、そう。重ね掛けなんだ、

 1度出した魔法が消えたりする前に同じ魔法を出す。

 出来てしまう人には簡単だけど、

 出来ない人にとっては、とても難しい技と言えるんだよ。

 ライトだったら、1度光が消滅してから、掛け直すのが一般的で、

 複数出して、よりダンジョンを明るく照らしたり、

 目くらましの効果を上げるって手段は、

 おおよそ、僕らのような駆け出しの冒険者ができる事じゃない」


(そう言われても、出来てしまう私にはどうしたらいいのか判らない……)


「知っていれば事前の作戦も確かに違ってた、班長の言うことが正しい……」

キリさんがまた悔しそうな顔をしながらも、班長を認めている。


「あんまり難しく考えるのはやめようか、

 ハナさんは重ね掛けができる人だから、

 次からは目くらましの効果もより期待できるし、

 ダブルヒールなんて、盾役としては有難い限りだよ!」

ラズさんが嬉しそうに言った。


「そっか……1回じゃひ弱なヒールだけど、重ねれば良かったんだ……」

訓練学校で”最弱”と言われていた私にも、光明が見えた気がした。


「……今2個なら、練習すれば3個出せる……?」

私を見つめながら、アニィちゃんから話してくれた。


「う、う~~~ん、どうかなぁ……でも、練習してみるね!」

私は勢いづいて、グッと拳を握って見せた。


「オヴェリア姫にでもなるつもりか……」

キリさんが呟いた。


(え……?! オヴェリア姫? おとぎの??)


”あっ”と思い出したようにラズさんが続く

「そうだ、思い出した。 かのおとぎ話の姫は重ね掛けの申し子と言われていて、

 同時に5個の魔法を重ねれたと、王立図書館で読んだことがあるよ」


「そうだ、特にライト派生の魔法に精通していて、

 独自の聖魔法”ホーリーライト”を見出し、

 これを5個重ねて放つことができた、と言われてる」

キリさんが突然話し出す。


(キリさんにしてはお喋りだ)


「おとぎ話で魔族の大軍勢を退けた大魔法だね」

ラズさんもなにか楽しそう……?


「ハナ……オヴェリア姫に似てる……」

アニィちゃんがまた呟く。

(どの辺がですか~?! アニィちゃん!)


「せっかくの才能なんだ、伸ばさない手はないね!」

やっぱり楽しそうなラズさん。


なんだかよくわからない展開だけど、私のような見習い治癒師の話でも、

こんなに沢山話せるんだ!

もっと、もっと皆と色んな話をしたいな……


その後、アニィちゃんの強撃の話や、

キリさんの大技以外の剣技の話、

ちょっと変わった籠手で戦うラズさんのスタイルの話などなど、

尽きることのない反省会議で、初日の夜は更けていった……



続く。





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