第3話 山小屋を発見する

 俺たち3人はしばらく周りを警戒しながら小一時間ほど歩いていると、小高い丘の上に木の小屋を発見した。丸太で組まれており地面から小屋全体が2メートルほど高く浮かしてあった。ネズミよけのようなものもついている。


 高床式住居みたいだな……


「やった! 家だ!」

「ログハウス? なんかすごい! 浮いてる! 木の家!」

「ん~人の気配が無いね、とりあえず登ってみようか」


 俺は辺りを見回すと、ロープ状のものがくくりつけてあるのを発見しそれを取って引っ張ると木の縄梯子を下ろすことが出来た。狩人が休む狩猟用の小屋なのかな?


「タクマさんナイス!」

「これで休める!」


 俺たちが縄梯子をつたって小屋の中に入ってみると鍵などはしておらず、普通に扉が開いた。室内はテーブルと椅子以外何もなく、本当にすっからかんだった。床が板張りになっているのが救いか?


「あー、物置だね、これだと」

「寝られる場所確保できただけ良いような?」

「あ、この梯子の上……二段ベッドみたい、ここで寝るのかな?」

「動物に襲われない様にしてあるだろうな、割と考えられている……猟師の休憩所みたいなものかもね」


「あ、掃除用具みたいなのがある……木のほうきと……木のバケツ……樽? みたいなものが……」

「流石に布団とかはないか……日本の山小屋じゃないものね」

「それは登山用の山小屋だね、暖炉とかが無いみたいだから気候なんかは温暖な地域なのかもね」


「火は外で使っていたみたいだね、ここからみるとすぐ下のところに石積みのかまどの跡がある……ってことは水源も近いかな?」

「この文化レベルだとタンクで水持ってきて……とは考えにくいですよね」

「俺はちょっと外を回ってくるよ、水源を探しておきたい」

「わかった、あたしは部屋の中色々探したりしてるね」


「……僕はどうしよう……」

「女の子一人にする気?」


「……わかったよ……」


 俺は一人別行動をして槍を持って散策する。さすがに武器もなしにあの巨大イノシシに突然出くわしたら流石にやばいと思う。熊じゃなくてよかったな……熊だったら全員死んでいたと思う。不幸中の幸いってやつだな……



「やっぱりあったな」


 岩の隙間から水分がチョロチョロと出ている。小さな川らしきものがあったので流れの方向に辿ってみたらやっぱりあった。こういった壁からの湧き水は適度に濾過されているので割ときれいらしい。そう妻から教わった。ああ、なんで俺こんなところにいるんだろう……早く帰りたい……


 空のペットボトルと先ほど拾った水筒いっぱいに水を入れて山小屋に戻る。帰り道に気がついたのだが、結構色々な獣道やら、おそらく人間が通ったであろう道も発見した。やはり人の出入りはあるようだ。

 随分と日も傾いてきたから、本格的な人里探しは明日かな……今日は高台に登ってあたりを見回すくらい出来ると上出来か。




「あ、タクマさん、おかえりなさい」


 チサトさんが山小屋から俺が近づいているのに気がついたようで縄梯子を降ろしてくれる。


「あれ? シュウトくんは?」

「なんか道具箱みつけたらしくて色々調べてるみたい」

「そうか、ほら水」


 俺は汲んで来たペットボトルを渡す。


「……え? は、はい。ありがとうございます。喉がカラカラ」


 ペットボトルをじーっと見てなんか照れてるみたいだけどなんでだろ?


 俺はシュウトくんの道具箱が気になったので山小屋に入ってみる。


「あ、タクマさん、水はあったみたいですね」

「聞こえてたか、ほら」

「ありがとうございます。僕もカラカラだったんですよ」

「道具箱があったって?」

「はい、なんか用途がわからないものもあったりして……」


 火打ち石のようなものと、金槌と釘もか、後はノミみたいのもあるな……工具だらけだからこの山小屋のリペアセットだろうか? どちらにしろ全部が工業製品というよりもハンドメイドで作成された様にしか見えなかった。


「これなんですけど、なんなんでしょう?」


 シュウトくんが俺も見たことがない筒の様なものに石がついている用途が不明の道具を見せてくれた。なんだこれ? 火打ち石がわりかな?


「ちょっと外で試してみるかい?」

「え? なにかわかったんですか?」

「火打ち石……発煙筒にも見える……それと筒の内側が若干焦げているね」

「あ、ほんとだ、火を扱う何か……魔法の杖?」

「まぁ、変なものだらけだものね、ここ」


 俺とシュウトくんが二人で外に出る。外ではチサトさんがペットボトルを持ったまま飲むか迷っているようだった。


「チサトさん、一応、湧き水だから大丈夫だと思うよ。後で案内するから」

「は、はい!」


「え……千里どうしちゃったの?」

「う、うるさいわね! 乙女なんだからしょうがないでしょ!」

「お、おとめっすか……」

「あ! 何その反応!」

「あ、ご、ごめ」


 相変わらず仲が良いなぁ……あれ? ここに来る前にはかなり壮絶な喧嘩をしていたように見えたが……この状況下じゃ仲良くなってしまうものなのかな?




 俺は手に持った発煙筒? を試しに外に向けて……どうするんだこれ? スイッチの様なものはないし……石の部分がスイッチなのか?

 俺が石の部分を触ってみると、スゥーっと力が吸われる感じがして石が軽く光り出した。なんだこれ?

 そんなことを考えていると、筒から打ち上げ花火の様に火の玉が出たと思ったら空中で破裂した。


プシューーーー  パン!!!


「え?」

「花火?」

「照明弾?」


 ちょうど筒を上に向けていてよかった……信号弾? 花火? そんな訳ないよな? 独特な煙も出ているし、なんだろう?


「何かの合図なんでしょうか?」

「うーん、わからないねぇ……」

「……あのぉ、結構大きい音だったんじゃないかな……またイノシシこない?」

「確かに、早く水を飲んじゃって、また汲んで来るから」


 それから二人には急いで水を飲んでもらった後、もしものために水筒2つの水を満タンにしてから山小屋に戻ることにした。警戒しながらだったが、特に獣などの気配は感じられなかった。さっきの発煙筒もどきは人為的な音だったから警戒して近づいてこないのだろうか?どちらにしても謎だらけだ。

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