ピザ

 軽い食感のしっかり塩味の効いた生地に、酸味と旨味が絶妙なバランスのトマトソースをたっぷりとかけ、はちきれんばかりのモッツァレラチーズを大きめにスライスしてそれをソースの上にお行儀よく並べ、華やかな香りのバジルを少々。石窯で一気に焼き上げれば、ほら、罪の味。

 一口頬張れば、モッツァレラチーズがぐんぐん伸びて、思わず啜りたくなっちゃう。二口目は唐辛子を漬けたオリーブオイルをたっぷりとかけたら、二つ折りにして口いっぱいに頬張る。もう、その時の美味しさも言ったら…!書き表そうにも人間ごときの言語力ではとても表現し切れないあの、奇跡の美味しさ。"あの味"としか表現できない、他に例えようもない、完璧な味と香りと食感のバランス。もはや、神が作りし芸術品の域である。


 -ピザ-


 なんともシンプルかつ味気のない名前に反して、こいつの味のバリエーションときたら、私がハマるドラマに必ずと言って良いほど、出演なさって、ラグビー ニュージーランド代表のスクラムばりに脇をがっちり固めてらっしゃる、名バイプレーヤー、そう、あの小日向文世様の演技の幅くらいある。

 小日向さんって怖い役も上手ですから、ミステリーなんかで出演なさっていると、絶対こいつが犯人だって決めつけて見るんですけれど、打率は4割ってところですね。

 それはさておき、ピザの凄さは味のバリエーションだけではもちろんございません!どんなシチュエーションでもいけちゃう柔軟な対応力も持っている訳ですよ。

 小粋なアメリカンジョークを飛ばしつつ犯行現場にむかうパトカーの中で相棒が食べている昼食といえば?そう!ピザですね?

 でかい犬を飼ってるアメリカの大家族のこれまたでっかいキッチンのカウンターに乗せられた紙箱の中に入っている食べ物といえば?そう!ピザですね。

 若いカップルがいい雰囲気でワイングラスなんて持っちゃって、肩を寄せあって愛を語らいながら食べてる食べ物といえば?そう。ピザですね?(口の中、火傷しろ。)

 それに引き換え、深夜の1時に録画したお笑い番組を見ながらゲラゲラとそれはもう品なく笑い転げたのち、消した液晶に映る悍ましい顔を見て愕然としている私の目の前のローテーブルの上にある食べ物といえば?そう!ピザです!!

 小粋なデートから、楽しいパーティ、独り身の夜まで、幅広い場面でそっと花を添える、それがピザなのです。

 なんで素晴らしきかなピザ。


 そして私は今日も愛するピザと蜜月を過ごし(クアトロフォルマッジ的な意味で)、肥えるのであります。

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