記憶を喰うか、肉体を喰われるか。人の遺志を辿った先の、恐ろしき神の意思

最初から最後まで夢中で読み耽りました。

移植手術を受けた人間が、知らない記憶によって殺人衝動に目覚め、人智を越えた力で凄絶な死を遂げる。
何が起きているのか、何に襲われているのか、息をもつかせぬ展開に、読む手が止まりませんでした。

メインの二人、椎羅と絵莉が非常に魅力的です。
事件に巻き込まれて死んだ父親の追っていた謎を引き継いだ絵莉と。
彼の死に際の言葉に従い、絵莉を危険から遠ざけようとする椎羅。
行動派で世間ずれした感じの絵莉も、ドライでコミュニケーションが下手な椎羅も、抱える闇の深いこと。
一人の男の遺志によって繋がった二人の距離感が、ものすごく好みでした。

移植者たちの視界を共有できる椎羅の目を使って異常現象を追ううち、ある島で崇められていたモノの存在が見えてきます。
人の尊厳を踏み躙るような悍ましい因習。かつてそこで何が行われていたのか、明かされる衝撃の真実。
読了後も、胸の中に恐ろしいものが巣喰っているような感覚が抜けません。私も何か移植された気分です……

非常に面白かったです。
リーダビリティの高い文章もさすが。文字を追っているだけで楽しかったです。
とても充実した読書時間でした!

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