27 爆会祭開催!(1)

 ドッカーン、と魔法が爆発します。


「派手ですねー」

「爆会だからな。にしても、皆熱心だ」


 みんな、爆会に向けて練習を行っているようです。


 結局、娯楽として選ばれたのは魔界名物、爆会です。

 爆会というのは、魔界の中で行われる勝負のひとつだそうで、簡単に言えば、魔法の威力勝負です。


 今回は少し形を変えて、5人でひとつのグループを作って、的に向かって魔法を放つというものになりました。


 的は、私が作った馬鹿王子の像です。最初は壊れやすいようにつくったんですが、それでは勝負にならないので本気で作りました。そう簡単には壊れませんよ。


 勝敗はどれだけ的を壊せたかになります。一発勝負です。


 爆会のついでに、おまつりもやろうということでみんな忙しなく準備してます。雪が積もっているので、あまり屋台などを出すことは出来ませんが、いろいろと悪魔たちが料理を出してくれるとか。

 いまからとっても楽しみです。お酒も出してもらいましょう!


 ルールーやエルフたち文官衆は、爆会をこのノアの伝統行事にしたいみたいで、資料の作成や備品の整理などで寝るまもなく働いています。

 凄まじく忙しいはずなのに、なぜかみんな少し怖い笑顔を浮かべています。怖いです。


 金髪率いる元ブッチャー団は会場設営に精を出してます。偉いですね、彼らはここが気に入ったようで、もう出て行く気はないみたいです。


 金髪だけは出ていってもいいと思うのですけど。


 ゲストとして、ラムさんも呼んでいます。ラムさんは息子さんも連れてくるみたいです。あと、もう一人連れてくるとか言っていましたが、誰を連れてくるんでしょう?


 ラムさんの連れてくる人のことを考えていたら、シルフィが寄ってきます。どうしたんでしょう?


「他に招待客はいますか? マーガレット様」

「いませんね。王国に仲のいい人はいませんし、勿論魔界にもいません」

「わかりました」


 シルフィはそう言うとすぐに仕事に戻っていきます。仕事熱心です。


 魔界といえば、家畜を探しに行っていた悪魔たちですが、今回の爆会に合わせて帰ってくるようです。家畜となる生き物はまだ見つからないそうですが……。


「おーい、そっちの資材足りてるかー?」

「当日の作業分配どうする?」

「俺も祭り当日は座って見たいんだよ! 譲ってくれよぉぉ」

「くくく……この料理でワタクシもマーガレット様の心を射止めます!」


 みんな、祭りの準備ということでテンションが高いですね。


 ルールー、あなたの料理は……その、かなり独創的なので出来れば悪魔さんの監修の元で作って欲しいです。切実にお願いします。

 昔手料理のお弁当を食べた時、記憶が飛びましたから。食べられる素材を使って劇物を作れるのはどういう能力なんでしょうね?


 なんにせよ、明日からはこの村最初のお祭りです。


 夜頃になれば、作業も大体が終わり前夜祭が行われます。前夜祭といっても、みんなで料理を食べるだけですが。


 とりあえず、壇上に上がりましょう。


 人、悪魔、エルフ、多種多様な生き物が楽しそうに話をしています。種族の差なんで感じませんね。


 私の横にはフェン、アーさん、シルフィ、ルールーがいます。こちらもまた、種族の差なんてないです。


「みんな、聞こえますか?」


 魔法を使って声を少し響かせます。みんなお利口さんですから、すぐに話をやめて私に身体を向けてくれました。


「いよいよ、明日からはこの村初の祭が始まります」


 みんな、楽しみな気持ちが隠れていないですね。嬉しそうな顔をしてくれます。


「こんな祭りを行えるのも、みんなが他者に優しく、一生懸命に一日一日を過ごしているおかげです。私はみんなとの生活がとても楽しく、これからもずっと続けばいいなと思っています」


 まぎれもなく本心です。みんなにも伝わってるといいですが。


 話が長くなってもあれなので、ここでお酒の入った木の杯を掲げます。


「これからの生活が続くこと。そして、明日のお祭りが精一杯楽しいものになることを祈って、乾杯!」

「「「「乾杯!」」」」


 前夜祭です。飲み過ぎないようにしましょう。

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