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 フェンに案内されて、人間が来たという所へ行ってみれば、そこにいたのはルールーでした。

 王都時代、私の秘書をしてくれた子です。


「マーガレット様ァァァァァァ」

「相変わらずですねルールー」

「なぜわたくしのハグをかわすのですか?!」


 普通に、痛いからです。飛びつかれたら痛いでしょう。しかもルールーは容赦なく全力疾走の勢いをぶつけてきます。


「なんだ、この人間は」

「ギャァァ?! 魔狼?!」


 フェンが出てくると、ルールーを含めた多くの人間が怯えてしまいます。うーん、やっぱりフェンを見たら怖いですか。

 にしても、ルールーは何しに来たんでしょう?


「ルールー、何しに来たんですか?」

「マーガレット様の下で働きたく! ここにいるものは全員同じ思いです!」


 二百人ぐらいいません? 私、前も言いましたが甲斐性ないんですよ?


「移住ということですか……王国側は知ってますか?」


 そこは大事なところです。


「いえ、立つ鳥跡を濁さず。わたくしたちがいた痕跡はすべて消してきました」

「とてつもない潔の良さですね。だとしたら、そこまでの覚悟できた人を追い返す訳にも行きません」


 なんとか、頑張りましょう。


「では、こういうのは最初に済ませておいた方がいいと思うので、やっておきます。アーさん、みんな、出てきてください」


 私がそう言うと、何かあった時のために隠れていた悪魔たちが一斉に出てきます。あ、バレンタインは魔力でおどろおどろしく演出するイタズラをしてます。これは……あ、やっぱりみんな気絶してますね。


「悪魔たち、この方々を運んでください。申し訳ありませんがエルフ達は起きたあとの対応をお願いします。私は急いでこの人たちの仮住居をたてます」

「それは構いませんが……仮住居建てられるんですか?」


 アーさんに聞いたのでしょうか、たしかにアーさんと家を作ろうとした時は悲惨な結果に終わりましたが、今は私も作り方を学んだんです。

 暇な時間……まぁほとんど暇ですけど、その時間にちょこちょこ家の作りを見てました。


 なので作れます。いいですか、魔法とは万能なのです。想えば、創れるのです。


「……ふぅ、行きます!」


 イメージは出来ています。あとはこの膨大な魔力をイメージに乗せるだけです。行きますよ……そぉい!


「んな?! マーガレット様?!」

「話しかけないでください、いま私の人生史上最高に集中してます」


 思ったより魔力の制御が厳しいです。気を抜いたら魔力が爆発します。やばいです、爆発したらここ一帯が吹き飛びます。

 多分行けますけど……ちょっと不安です。ここは素直にいきましょう。


「アーさん! フェン! 助けてください!」

「「任せろ!」」


 頼もしい2人です。そしてなんか嬉しそうです。けど、2人が魔力制御の細かいところを担当してくれるおかげで私は力任せな部分に集中できます。


「行けます。そりゃあ!」


 ズドーン、そんな音が響いて簡易住居が300ほど出来ます。全部石造りです。ちなみに道もちゃんと作りました。


 ん? ……なんか作るつもりのなかったものがあるんですが。なんですかあの城?

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