外伝

 わたくし、ルールーは王国にただひとり存在する、聖女、マーガレット様の秘書をしておりました。


 聖女といっても、古い伝承だとしてその能力を認める貴族は少なく、裏では馬鹿にされていることが多いのが現状になっています。


 ですが、マーガレット様はそんな境遇であってもやさぐれる事無く、しっかりと仕事を行っていました。聖女としての仕事をわたくしが認知することは出来ませんが、書類仕事などの処理速度は凄まじく、常人が10日かかる量の仕事であっても、数時間でこなしてしまうのがマーガレット様です。


 わたくしは、そんなマーガレット様を尊敬していました。マーガレット様をきちんと聖女として扱い、敬おうと考えている人はわたくしだけではありません。

 騎士団や、平民の中にもそういう考えの人はいるのです。そして、わたくしはそういった人達を集めた団体にも所属しています。信仰になるとマーガレット様は嫌がるので、ただマーガレット様の地位を王国内で高いものにしようと考えています。


「そんな……」


 しかし、マーガレット様は婚約破棄を言い渡され、追放されてしまいました。


 それからは、悲惨な日々でした。マーガレット様がいなくなった王国は、悪魔に襲われたのです。

 ただ、最初は見境のない悪魔がほとんどだったのに、少しすると戦う相手を選ぶようになったらしいという話を聞きました。

 マーガレット様を敬う会、聖女会と呼ばれているのですが、そこのメンバーの騎士も敵意を持たないと悪魔たちが襲ってこないと言っています。


 だから、躍起になって悪魔と戦っている国王派の人間は大きな被害を受けていますが、それまで通りの日々を送っている分には何も変わらない日常を過ごせます。まぁ、王家が悪魔討伐にお金を使い込んでるので財政が怪しいですが。


「マーガレット様……」


 毎日のように、考えます。あなたはどこにいるのでしょう。もう一度、わたくしはあなたの下で働きたいです。


「おい、ルールー!」

「うわっ、なんですかヤニム。突然」


 騎士であり、聖女会のメンバーであるヤニムが飛び込んできます。


「マーガレット様が見つかったかもしれない!」


 な、なんですって?!


◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇


 マーガレット様の居場所がわかったかもしれない。そう聞いたわたくしはすぐさま行動を起こしました。


 聖女会の結束は固く、一瞬で情報は共有され、外部への漏洩はありえません。マーガレット様がいると言われているのは王国の辺境、トアル湖という場所です。

 少し前に、そこで巨大な魔力の反応があり、それがマーガレット様にとても似ていると魔法学会に務めているメンバーが報告しました。


「行くしかありません。マーガレット様のところに」


 私は、立ち上がってそう皆に告げます。ただ、生活を捨てれない人もいますから無理強いはしません。ついてこれなくとも、マーガレット様に対する思いは同じです。


「決行は明日。馬や馬車の用意はお願いします」


 聖女会には、多種多様な職業の人がいるので、そういった物資の調達は容易いです。


 では、明日。マーガレット様の元へ行きましょう。





◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇





「本当に、ここにいるんですか?」


 王都をたって数日、ようやく湖につきました。とても、人が住んでいるとは思えません。それでも、わたくし達は前に進みます。


 そして、しばらく歩いたところで、私たちは光を見つけました。


 長らく、失っていた光を。


「ルールーじゃないですか? 何してるんです、こんな所で」


 わたくし達の光、マーガレット様を。

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