15

「なぁ……主よ。やはり仕事を見つけた方がよいのではないか?」

「えー」


 フェンをもふもふしてるのが私は好きなんですよ。バレンタインの時も、龍のときもある程度働いたじゃないですか。お休みです。


「バレンタインの時は確かに助かったが、龍の時はそもそもが主のせいでは?」


 うぐっ、ばれましたか。ちなみに龍を魔界に返してから一週間経ちます。契約魔術はちゃんと効いているようでまたこっちに来る気配はありません。


「それに、結局エルフに頼まれた家畜も用意していないだろう」

 

 龍のことで有耶無耶になってしまいましたからね。やっていません。


「養わなければならないものも増えた。働かねばならないのではないか?」

「そうなんですよねー」


 そういってフェンは外を眺めて遠い目をします。家の外、そこにはバレンタインを中心とした子供達の集団がいます。ついこの前まではエルフの子供とバレンタインしかいませんでしたが、かなりの数の悪魔の子供がいます。

 どうやら、悪魔は互いの魔力を使って子供を作るようで、私が魔力を多めにあげたばっかりに子供を作ったカップルが多いのです。


「……間接的とはいえ、私のあげた魔力を使って出来た子供なので、他人の気がしません」

「アーさんも言っていたが、受け取った魔力は自身のものに変換されるのだろう? 繋がりは薄いのではないか?」


 まぁ、自分の子供だと思ってはいません。エルフや悪魔たちと同じようにこの場所で一緒に暮らす仲間です。


「よし、フェン。決めました、私はしばらくの間仕事をします」

「おお、ついにやる気になってくれたか!主よ!」


 ええ、そろそろ働かないとまずいですし。これでも王都にいたころ、私は聖女なのにも関わらずなぜか事務として大量の書類を捌いていました。その処理能力は城内1位と呼ばれたほどです。


 つまり、本気を出せば仕事が出来るのです! 私は!


「そうと決まれば、覚悟してくださいね?フェン」

「え?何故だ?」


 フェン、本気の仕事というのは、命を削って行うものですよ?



◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇



「いいですか、食料の備蓄はこれだけの量を確保してください。日にとれる量のなかで備蓄に回す割合はこっちです」

「わかりました、マーガレット様」

「はい。あと、備蓄用の倉庫は一応ですが火災防止で二つに分けましょう。あと、行く行くは交易をして行かなければならないので、質のいいものは分けて私にみせてください」


 まず、とりかかったのは食料問題です。供給量はなんとか間に合っていますが、備蓄となるとギリギリです。農地の量を増やし、みんなの作業を分けて時間で行う作業を指定することによって効率を上げてもらいます。これでおそらくは冬を乗り越えられるでしょう。

 次に交易に関してですが、これはこのまま人口が増えていくと、足りないものが絶対に出てきます。その対策として質のいい農作物を用意しておきます。いざ交易をするとした時、見本になりますから。

 交易先の選定のために、フェンと何人かの悪魔には周辺の村や街の偵察をお願いしてます。もちろん、見つからないよう頼んでいますし認識阻害の魔法を私とアーさん、バレンタインで三重に重ねがけしています。


「やっぱり、紙が欲しいですね。いつまでも木を削って文字を書く訳にも行きません。あと、悪魔たちに文字も教えなければ」


 喋る言葉は一緒でも、魔界の文字とこちらの文字は大きく違います。


「やるべき事はたくさんありますね」

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