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「平和ですねぇー」


 エルフ達が作ってくれた家の中、暖炉に火を灯せばとても暖かいです。フェンにいたっては家にいる間は暖炉の前から少しも動きません。

 アーさんはエルフ達と行動することが多いです。調味料探しや服作り何かもやってるみたいです。


 私? 何もしてないですよ、毎日のんびり過ごしてます。定期的に王都と魔界を繋ぐゲートを作って嫌がらせをしてるくらいです。


「なぁ主よ。暇そうだな」

「暇ですよ。時間をもてあましています」

「エルフの手伝いをするのはどうだ?」

「んー、もう少しダラダラしたいですねー」


 けど、少し悪い気がしてるのもあります。そろそろ働かねば。書類仕事とかはお手の物なんですけどねー。


「まったく……狩りに行ってくる」

「行ってらっしゃい、フェン」


 さぁ、私は惰眠の限りを貪りましょう。




◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇



side フェン




 まったく、主には呆れる。こうなる前は身を尽くして働いたといっていたから、仕方ない部分もある。だが働かざるもの食うべからずだ。

 まぁ、だがマーガレットは我の主だ。主が働かない分は我が働こう。


「フェン様、あちらに」

「うむ」


 エルフの娘の指示に従い、獲物を追い詰める。なぜか今日は獲物が見つかりずらい。

 まるで何かに怯えているように、みな一直線に逃げるのだ。


「ーーフェン様!」

「む?!」


 エルフの娘の叫び声でなんとか反応できた。寸前まで我がいた場所には、真っ黒な魔力で出来た槍が突き刺さっている。


「ふはははは、良く避けたな魔狼よ!」


 幼い声。この槍をなげたものにしてはチグハグな印象だが……。おそらくこいつは。


「魔槍姫か」

「そうだとも!私は魔槍姫、バレンタイン!」


 魔槍姫といえば、魔界でも有名な存在だ。四天王ほどでは無いが、実力者として名を知られている。魔槍をあやつるという特徴はあるが、それ以上に戦いと破壊を楽しむ邪悪な性格をしている。


 我では勝てん! 逃げねば……いや、我が逃げればエルフの娘が死ぬ。


 やるしかあるまい。


「ガァァァァァァ!」

「ん? やる気か魔狼! いいだろう、私が遊んでやる!」


 魔槍など、一撃喰らえば我にとっては致命傷だ。だから、身体を小さくし速度で圧倒する!


「おぉ、速いな」


 この森ならば多少なりとも勝手のわかる我の方が有利!


「速いが、私ほどではないな」

「なにっ?!」


 すさまじい速度だ。次に何が起こったのかは我にも分からない。鼻っ柱にすさまじい圧力が加えられたと思ったら、次の瞬間には地面に叩きつけられていた。


「フェン様!」

「く、来るな……」


 エルフの娘よ。来たら死ぬぞ。


「くくく、魔界の生命がエルフと戯れるか。面白い、面白いが……死んでしまえ!」


 くっ、せめてエルフの娘だけは!


「フェン様!」








……ん? 何も起こらない?


 ゆっくりと目を開ければ、魔槍姫の放った攻撃は我に届く前に魔力の壁によって防がれていた。


「私のフェンに何してるんですか。泣かせますよ?ちびっ子」


 

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