第4話

「謎の奇病?」

「そうだ。まあ、まだ公表はされていないんだけど」

 登別さんは、物騒なことを言い始めた。

「どういうものなんです?」

「とにかく、ぼーっとしてしまうらしいんだ。声をかけても反応が薄い。魂が抜けたみたいな」

「へえ」

「指導対局中になった人もいる。あとこれはまだ秘密なんだが……相生六段は入院しているらしい」

「えっ」

「とにかく、将棋関係で多いんだ。怖くないか?」

 何かが引っ掛かる。最近、似たようなことがあったような。

「あっ」

「どうした」

「そういう人、見ました」

「まじか」

「買い物に行った時。スマホで将棋をしていたみたいで」

「やっぱり将棋……。とにかく、俺たちも気を付けよう」

 どう気を付けたものかわからないが、もし先日のあれと同じ現象だとしたら、原因はモンスターだ。一般人がどう対処したらいいのかはわからない。魔界に魔物避けとかないか聞いてみようかな。



「そんなものはない」

 魔王は僕の質問をばっさりと否定した。

「そっかあ」

「まあ、心を強く持つことだ。あれは心の弱みに付け込んでくる」

「相生六段、心は強そうだけどなあ」

 相生六段はデビュー以来大活躍しており、見た目もさわやかでファンも多い。「モンスターに狙われる」タイプには思えないが、この分野に関しては魔王の方が圧倒的に専門家である。

「しかし、将棋関係者に多いというのは気になるところではあるな」

「うんうん」

「しかも、プロとは限らない。将棋が強いかどうかは関係なさそうだ」

「お、魔王探偵出番ですね」

「ふははは、助手の師匠君、何か気付いたら言ってみてくれたまえ」

 魔王は結構お調子者だ。でかい体で笑うと部屋がびりびりと揺れる。

「人間がモンスターを倒すことはできないのか」

「まあ、無理ではなかろうが。ただ、俺たちは魔法を使う才能がある上に訓練をしている。人間も魔界で修業でもすれば可能だろうな」

 こちらの世界では僕が師匠だが、魔界に行けば弟子になるということか。まあ、モンスターを退治したいわけじゃないけど。

「とりあえず、相生さんが気になるな。魔王、今度一緒にお見舞いに行かないか」

「ふむ、いいだろう。俺も気になるしな」

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