冬の疑念

部屋の上空を駆けめぐる温風に、頭を煮溶かされそうな不快感。寒空に身を凍らせれば、なにか閃くだろうか。冷え切った外の空気を吸えば、心の中の靄も晴れていくのではないか。淡い期待を持って歩き出してみたが、結果はどうだ。靄が晴れるどころか、思考の速度が凍るばかりじゃないか。


虚実が美しく感じられる。脳内に閉じ込めてしまえば、それはそれで芸術のように存在し続けてくれるのだろうが、欲深く外在化しなければ気が済まない気性の生き物だ。存在自体が、簡単なことではない。


なんの変哲もない朝日が昇るのを面白みもなく見守り、なんの変哲もないつまらない道を辿って家へ帰る。そして、向き合うべきは、白紙だけ。そこに生まれていく文字と文学に対し、常に疑念を抱く。自分に問いかける。これでいいのか。悪いのか。正解など、誰も知らないと言うのに。


答えが返ってくるとも期待せず、情報の海に不平不満を吐き散らし、それを取り入れるつもりなどないくせに。愚者の答えを聞きたがるのだ。


なにせ外在化せねば気が済まない。

そういう気性の生き物だ。

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