仮眠

小丘真知

仮眠

高2の時だったと思います。

私が部屋で仮眠をとっているときでした。



その頃は、受験勉強に疲れると30分ほど仮眠をとることが多くなってました。

その時も机に突っ伏して寝ていたのですが、遠くの方から階段を上がってくる足音が聞こえてきたなぁという意識はありました。

その足音が聞こえるようなないような、うとうととした中で部屋のドアが開けられる音がしたんです。

あ、誰か入ってきた、と思っていると、母親の



「ほんとだ!」



という大きな声で起こされました。

なぁに? と、まだ朦朧とする頭のまま母を見ると、顔が青ざめています。


母の話はこうでした。


母が台所で夕食の支度をしていると、私が階段から降りてきて買い物に行きたいと言ったというんですね。

化粧水を買い忘れたから連れてってとせがまれ、母は車で10分くらいの所にあるスーパーに私を乗せて向かいました。

スーパーに向かう間、助手席の私はなんだか明るくて、テンション高くあれこれしゃべっていたのが印象的だったそうです。

当時の私は口数が少なく、家族が健康を心配するような人だったので。

普段と違う私の様子に母は違和感を感じたそうではあるのですが、何か良いことでもあったんだろうくらいに考えて、話を合わせてスーパーに向かったんだそうです。

スーパーに着くと私は車を飛び出して、すぐ戻るね、と母に声をかけて元気良く走り出したんですが




パッと消えてしまったそうなんです。




え? と思って少し周囲を探してはみたものの、私はどこにもいなくって。

どうしよう、どういうことだろう、と頭の中がぐるぐるするのを感じながらとりあえず母は運転席に戻って、呆然としていたそうです。

ほどなく、コンコンと窓をノックされて。

顔を上げるとそこに、買い物袋を下げた知らないおばさんが立っていたそうです。

ウィンドウを開けて、なんでしょう?と応じると



「娘さんは家にいますから、このまま帰っても大丈夫ですよ」



って言われた、って。



え、どうして分かるんですか?

と聞き返したんですが、いいから、早く戻って娘さんを起こしてあげてください、みたいなことだけ言って会釈をして、車から離れていってしまったんだそうです。

何がなんだか分からないけど、言われるがままに家に戻って私の部屋に入ると、私が寝ていて最初のセリフになった、ということでした。


当時私は、夢と現実の区別がつかないような夢を見ることが多かったんですね。

普通に街を歩いていたかと思うと目が覚めたりとか、夢の中のような現実を過ごすこととかもあったんです。




もしかしたらドッペルゲンガーって、もう一人の自分というよりかは、抜け出した自分なんじゃないかなぁって思っています。





  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

仮眠 小丘真知 @co_oka_machi_01

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ