第1章 第7話

バレンタインのチョコを渡した後は普通に遊んで、ご飯まで食べさせてもらって。


「じゃあ、またね!」


機嫌良く、拓哉君とお別れした。

時間が遅いから大人が送らないと危ないって、拓哉君が言ってた。

拓哉君のパパが家まで送ってくれた。

家族大好きな拓哉君のパパ。

私にも自分の子供と同じように愛情を注いでくれる。

優しくてカッコいい!

拓哉君の次に好き。


「あーあ、おじちゃんもチョコ欲しかったな。」


「うーん……。」


「ゴメン、冗談!」


「冗談?」


「違うか……。

でも欲しいのは本当だよ。」


「ヤキモチ?」


「え?」


「違う?」


「えっと……。」


「好きですって拓哉君に言ったから、おじちゃんも好きって言われたいの?」


「そりゃ言われたいかな?」


「ふーん。

おじちゃんも好き。」


「そっか、ありがとう。」


本当に好きだから、おじちゃんにもチョコあげたら良かったかな?

また今度考えよう。


「おかえりなさい!」


私が帰るとママが出迎えてくれた。


「あれ?

アイツ帰ってるの?」


拓哉君のパパが『アイツ』って言ったのは、私のパパの事。


「帰ってるんだけど、沙希が拓哉君にチョコを渡したって聞いて落ち込んで。」


「え?

落ち込んでるの?」


「パパだーいすきって言ってたのにって。」


「パパも好きだろうよ。」


「そうなんだけどね。

それでビール一気に飲んで、寝ちゃったの。」


「お酒弱かったっけ?」


「弱くないと思うんだけど、疲れてただけかな?

最近残業が多くて。」


「そうなんだ。

無理するなよって言っておいて。」


「うん。」


「それじゃまた。」


「ありがとうございました!」


拓哉君のパパが帰って行った。

それを知らずに私は手洗いとうがいをしていた。


「拓哉君のパパは?」


「帰ったよ。」


「え?

絵本読んで欲しかった……。」


「疲れていそうだったから帰って貰ったよ。

お仕事に沙希の世話って大変だもの。」


「ふーん。」


「沙希、パパにチョコあげなくていいの?」


「買ってない。」


「沙希の分、あげたら?

同じヤツ買ったじゃん。」


「ヤダヤダヤダヤダ!」


「明日同じヤツ買っておいてあげるから。」


「うーん……それならいいよ。」


どうせ、ご飯の後にお菓子はダメって言うし、朝もお菓子はダメって言う。

帰った時にあればいいや。


「おじちゃんのも買って来て。」


「え?

拓哉君のパパの事?」


「うん。

ヤキモチだから。」


「分かった、用意しておくね。」


「ママが渡しておいて。」


「え?」


「明日はテレビだから行けない!」


「分かった分かった。」


そんなわけで、次の日に私のパパに、


「パパも好き。」


そう言ってチョコを渡した。


「ありがとう……。」


パパが泣いてた。

何で泣くの?

変なの!

ちなみに拓哉君のパパの分は、ママが届けてくれた。





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