第1章 第6話

ある時、パパとママがバレンタインの事を話しているのを聞いた。


「ねぇ、聞いた?」


「え?」


「拓哉君、バレンタインはクラスの女子ほとんどからチョコ貰ったんだって。」


「マジで?

アイツ、モテるのか。」


「義兄さんもモテたんだっけ?」


「まぁな。

俺と顔も性格も全然違うし。」


「パパはモテないの?」


「俺はママにモテたいよ。」


「ちょっとぉ!

話、反らしたでしょ?」


「モテないエピソードなんて言いたく無いじゃん?」


「そうね。」


パパとママが拓哉君の話をしてたみたい。


「拓哉君、どうしたの?」


パパがトイレに行った隙にママに聞いた。


「チョコいっぱい貰ったらしいよ?」


「え?

何で?

私も欲しい!」


「うーん、バレンタインだからね、欲しいって言って貰うのは違うわよ?」


「バレンタイン?」


「そう。」


「チョコくれる日?」


「御世話になった人へ義理チョコ。

大好きな人へ本命チョコ。

なーんて分からないか?」


「うーん、分からない!」


「女の子が男の子に、好きですってチョコあげたりする日。」


「え?

じゃあ、私、拓哉君にあげる!」


「え?

でもバレンタイン終わったばかりだよ?」


「ダメ?」


「ダメじゃないけど……。」


ママが困っている。


「好きですって言う!」


「そうね……。

明日買いに行こうか?」


「うん!」


そんなわけで翌日、ママと買い物に行った。

早速ハート型のチョコを見つけて、


「これあげるの!」


普通のお菓子売場にあったチョコレートだった。

バレンタイン用では無いけど、そんな事は気にしてない。


「早く渡したい。」


「そうね。

今日はもう家にいるみたいだから、渡して帰ろうか。」


帰り道で拓哉君の家に行ける。

拓哉君の家に着いて、ピンポンピンポン連打した。


「コラ、やめなさい!」


当たり前だけど怒られた。

そんな押し方をするのは私くらい……って事で、すぐに出てきてくれた。


「拓哉君!」


「沙希ちゃん、こんにちは!」


「こんにちは!

えっと……。」


「ん?

どうしたの?

遊びに来たんだよね?

入れば?」


入りたいけど……入っていいのかな?


「そうね……お刺身買っちゃったし……。」


ママが困っている。

すると、お姉ちゃんが出てきた。


「おばさん、後で送って行ってあげようか?」


「そうしてくれたら助かるわ。」


「うん、いいよ。」


私はお姉ちゃんのおかげで遊んでから帰る事になった。


「ちゃんと言う事聞くのよ。」


「うん。」


言う事聞くと約束はしたけど、たまに聞かないっていうのをママは知ってる。


「ごめんね、迷惑かけるかもしれないけど。」


「うん、ちゃんと面倒見るから!」


「ありがとう!」


ママは一人で帰った。


「お姉ちゃんは宿題の途中だから、拓哉と遊んでてくれる?」


「うん。」


お姉ちゃんがいなくなった今がチャンス!


「拓哉君。」


「ん?」


「す……好きでしゅ!」


「好きでしゅ?」


「あっ……あぁ……。」


「ハハハ!

緊張しちゃったんだね。」


「……。」


「これ、俺にくれるの?」


「うん……。」


「ありがとう!」


拓哉君にチョコを渡した。


「あっ、溶けてる……。」


「え?」


「大丈夫、冷蔵で固めるよ。」


拓哉君がチョコを冷蔵庫に入れた。

スーパーからずっと握ってたから溶けてしまった。


「沙希ちゃん、ゲームしよう?」


「うん!」


あっさり告白をかわされた気がしたけど、一緒に遊べるのが嬉しい!



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