不自由な能力 005

図書室で紺輩に教えていた時。


「ちょっと待って。あなた何か思い詰めてない?

「なんの話だ?」

「ねぇ、私言ったわよね。あなたに恩を返すって」


力強い眼差しで紺輩に見つめられる。

これでは言い逃れしようとしても信じてもらえる気がしない。


「手伝ってくれるか?」


こうして、紺輩は父に教えてもらったという護身術でいじめのグループを懲らしめてもらったが、まさかあそこまでするとは思っていなかった。




それから藍宮へのいじめはなくなり、安心して校庭の景色を見ることができる。

見渡せる街並み、緑が広がる校庭、そして美少女。


「日番の仕事、これで終わりですね……」


藍宮が日番日誌を抱えていた。


「あの時は本当にありがとうございました……」


藍宮と目が合わない。


「嘘を言ったことで気にしてるんだったら大丈夫だよ。君が自分の身を守ろうとしての判断だったんだろう」

「でも……なんで嘘って気づいたのに来てくれたんですか?」

「君が最初から苦しそうな顔をしてたから救ってあげたかったんだ。人を傷つける能力だと思ってるかもだけど、その超能力は君の個性なんだ」


そう言われじっと手を見つめる藍宮。


「これが私の個性……」

「その能力の矛先を誰かを悲しませるためではなく、守るために使えばいいんだ」

「私も近衛君や紺輩さんみたいになれるかな……」


眼鏡の奥に見える藍宮の藍色の瞳が輝く。




「この能力ついて考え直すことができました。ありがとうございます」


日番日誌を先生に渡した後、藍宮は手を振り帰っていった。


『あの子娘の瞳、どこかで見覚えが……もしやあ奴の……』

「何言ってんだ猫神」

『お主には関係ないのことじゃ』


猫神が何を言っているかは分からないが、藍宮は自分の力に自信を持てばそれを良い方向に使える子だ。


「家に帰ったら紺輩に教える範囲でもまとめるか」

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憑き灯り 色塚京 @irotukakei

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