落ちこぼれ魔術師と気ままな精霊 ~召喚したけど制御できません~

秋空 海

第1章 出会い・準備編

第1話 プロローグ


◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇


 僕は黒髪で同年代の男の中では少し小柄な、これといった特徴のない人間……だったはずなのだけど。


 はははっ…。


 思わず乾いた笑い声をあげる僕は、召喚した土の精霊が魔法を駆使し、土で造りあげた巨大な腕にガシッと捕みあげられた。

そして、目的地に向かって思い切り投げ飛ばされた!


ブンッ!! ビュォオオオーーーー!!


眼下を高速で森が過ぎ去って行く!


「ぎゃあ~~~~!!!死ぬ~~!!!」


ついこの間まで、平穏な普通の人生だったよね!?

併走する風の精霊が爆笑してるし!


同じように飛ばされた仲間の獣人も「うにゃあああ~~!!」って叫んでいた。

精霊さん、さすがにこの移動手段は雑すぎるって!!


前世の最大魔力を望んだ浅はかな自分が恨めしい!

ってか、こういうイメージではなかったんだけど~!!

なんか神様っぽい人、やり直し効かないですかーー!!?


◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇


 前世の僕は日本人だったようだ。

 思い出したのは、約1年前、この世界の成人である15才のとき。


 おぼろ気な記憶だけど、ものすごく平和で物にあふれた、だけど満足感の少ない生活だったと思う。

 そして30才くらいの独身でサラリーマン?をしてたのだけど、あれは山の上だろうか、突然の落雷により命を落とした…のだと思う。


 その後変なふわふわした場所で、姿や顔は思い出せないけどテヘペロした存在に会ったんだよな。

 そして、手違いで命を奪ってしまったことを謝罪されて、次の人生で恵まれた才能を付けてくれることになったんだけど…。


「そういえば、次の世界は同じ世界が良いかな?」

「いや特にこだわりは無いです。そういえば魔法のある世界があったりします?」

「今よりも生活水準が低くて良いならあるぞ。お前に分かりやすく言うと剣と魔法の世界が…」

「じゃあそこで、魔力を最大限に持つ感じにして貰って良いですか!?」

「それは構わんが、制御…」

「やったー!楽しみだ!!」


 …ここで、剣と魔法の世界で魔法の才能にあふれる自分を想像し、浮かれまくって説明を良く聞かなかった自分をホント殴りたい。


「……(魔力極降りはやりにくいだろうけど…まぁ良いか。少し能力を生かし易い環境にしとけば。後は…)特殊な能力に悩むかもしれないから、その世界の成人の15才になったらこのことを思い出す様にしておこう。後は今の知識を思い出すようにするか?世界のバランスを崩さない範囲に制限するからほとんど意味ないだろうがな」

「はい。一応思い出すようにお願いします!」


「よし。ではこれで転生を行う!次の世界では幸せにな!」

「はい!ありがとうございます!」

「うむうむ。暴発して自爆するなよ~」

「はい!…えっ、それはどういう………………………


というやり取りの記憶を15才になると同時に思い出した時は、現状をかえりみて納得し、そして大いに凹んだ。変な才能のせいだと思っていた魔力暴発による辛い状況が、自業自得だったとはね…。

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