第12話

「予備投票、始まったみたいだよ」

 視聴覚室のPCで学内サイトを覗いていた観月が、他の2人に呼び掛けた。

「投票って??]

「ミス&ミスター都高の事よ」

 首をかしげた佳乃に、あまり興味なさ気に解説した静香は、どこからか取り出した糸とマニキュアで矢の修理を始める。


 年1回、秋都祭の時期に行われるコンテストは、学校・生徒会共に公認のイベントとなっている。

 その為、コンテストの投票権は生徒だけに限らず、教職員も有している。

 そして、精鋭揃いの運営委員会は大会を盛り上げるべく、独自の情報網を駆使して有力候補者のオッズを定期的に公開しているのだ。


「で、どんな人が選ばれているの??」

「どーせ今年も紺野先輩の圧勝でしょ」

「優勝者は次回以降の参加資格が無くなるみたい、にも関らず結構票が流れてるわね」

 画面に映し出された得票数の棒グラフを眺めていた観月は、「あっ」と声を上げた。

「よしのん、5位だよ」

「ふえ!?」

 意表を衝かれた佳乃は素っ頓狂な声を上げる。

「なになに、コメント欄の応募理由~凛とした表情の中にもどこか守ってあげたくなる様な萌え属性アリ~だってさ」

「も、萌え・・・」

 聞き慣れない文言に混乱する佳乃。

「うーん、よく見ると私もシズもTOP10に入っている。都高の男子はなかなか見る目があるじゃない」

 清楚な弓道部三人娘ここに在り~っ、と自分で言って少し照れ笑いを浮かべる観月。

 しかし、佳乃は別のグラフに目を奪われていた。

「・・・すごい」

「ん、何??」

 彼女の様子に気付いた観月は、PC画面に目を戻した。

「えっ、何これ!?」

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