第10話

 秋はイベントが目白押しである。

 10月の秋都祭、

 二年生は修学旅行、

 そして、弓道部はキンキ大会地区予選及び本選が控えている。

 生徒会長の空良と副書記の静香は、必然的にスケジュールが過密になる。


「生徒会って、こんなにやる事があったんですね」

 机に突っ伏した静香は、ぐったりとした表情で言った。

「ま、基本は雑用だからねぇ」

 こちらは涼しい顔をした紺野真琴は、彼女の目の前にあった箸置から割箸を取った。

「ホラ井隼さん、スタミナ付けておかないと最後まで保たないぞ」

「う・・・」

 目の前に置かれた背脂ギトギトのスープを見て、静香は思わず口を押えた。

「真琴先輩がラーメン好きって、ちょっと意外でした」

「そォ??」

 やっぱりショートカットは食べやすいやぁと言っていた真琴は、静香の言葉にクスッと笑った。

「もっとも、ここまでハマったのは最近なんだけどね」

「そうなんですか、んぐぐ」

 厚切チャーシューに悪戦苦闘している副書記を、真琴は微笑ましげに眺めている。

「空良君も、雷王の常連なのよ」

「確かに空良さんはラーメンフリークでしたね」

 ようやく1枚目を攻略した静香は、少し曇った眼鏡を外しながら言った。


「そういえば彼、誘ったけど来なかったわね」

「ああ、今日は町道場で父の特別指導日なんです。私も後から合流します」

「偉いわねぇ、井隼さんも空良君も」

 真琴は感心して言った。

「下手なだけですよ、手の抜き方が」

 意外に気に入ったのか、静香の麺を啜るスピードが上がった。

「じゃあ、さっきの打合せの続きを手短にいいかな??」

「はい」

「今年の秋都祭だけど、昨年と同じテーマで行こうと思ってるの」

「確か『花一杯』でしたっけ??」

「うん、おとめ組のリーダー・・・まあクラスメイトなんだけど、には既に話を付けてあるんだ」

 ちなみにおとめ組とは、毎年女子生徒を中心に構成される秋都祭実行委員会の別称である。

「そうですね、良いと思います。でも」

「でも??」

 意外な切返しに、不思議そうな表情を浮かべた真琴。

 静香は彼女に向かって人差指を立てて言った。

「ひとつ、ご提案があります」

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