第8話

「きゃーさっちゃん、この道場いいニオイがするよォ!!」

「ホント、やっぱ新築は違うわねェ」

「コラコラ騒がない、皆さんが呆れてるでしょ!!」


「・・・」

 正確には、呆れていない。

 佳乃は、目の前の彼女達に圧倒されていた。

「ごめんなさい、恥ずかしい所をお見せしてしまって」

 眼鏡を掛けた理知的な女子生徒が前に進み出て言った。

「啓西高校女子弓道部、部長の和西(かずにし)です。この度は練習試合にご招待頂き有難うございます」

「都合ヶ丘高校弓道部、副部長の月島と申します」

 佳乃は相手に合わせて丁寧に会釈をした。

「・・・可愛い」

「は??」

「あ、いや、何でも」

 赤くなった和西は、わたわたしながら言葉を続けた。

「ごめんなさい、こちらのスケジュール調整が行き届かなくて、本日は二年生5人だけの参加になってしまいました」

「いえ、こちらこそ部員数が総勢10名の為、男子部員にも運営応援を貰っている状況なので・・・」

「ね、ソラ君居るの??」

 いきなり和西の横合いから1人の女子生徒がニュッと顔を出した。


「こら、りょーこ」

 和西はその行為を窘めようとする。

「だって和樹がちゃんと挨拶してくるんだよ、ってしつこく言ってたからさぁ・・・ん??」

 少しむくれ気味に返事をした彼女がふと気が付くと、目の前で佳乃がクスクスと笑いを堪えているのに気が付いた。

「インターハイ、ずっと見ていました」

 ややあって落ち着いた佳乃は、袴の裾を押さえて言った。

「お話しするのは初めてですね、小素嶋涼子(こすじまりょうこ)さん」

「うん、よろしく」

 涼子は気さくな笑みを浮かべて、佳乃が差し出した手を取った。

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