第32話 力の代償 4

「おい! クラリス!」


 騎士たちは城内にそれぞれ部屋をもっているらしく、ユウヤとリーナはまずクラリスの部屋へと向かった。


 リーナが扉をバンバンと叩くが、扉は開かなかった。


「……なんだよ」


 開かない扉の奥から、ぶっきら棒な声が聞こえてくる。


「私だ! 先ほど姫様が言ったようにユウヤ殿の鎧を一緒に鍛冶屋に行って作ってきてくれ!」


 しかし、クラリスの返事はない。


「アイツ……無視しているな。おい! クラリス!」


「……うるせぇ! 俺は化物の相手なんて真っ平ごめんなんだよ!」


 リーナの呼びかけに対して、クラリスは怒鳴り声で返してきた。その瞬間、リーナの顔も怒りに歪む。


「ば、化物とはなんだ!? ユウヤ殿はこれから一緒に戦う騎士団の仲間だぞ!」


「はぁ!? 仲間だって? ふざけんなよ! アイツは化物だ! 俺は絶対、アイツとは口を利かないからな! そもそも! 俺のそばにアイツを近づけるなよ!」


「なっ……! おい! クラリス! 貴様! それでも騎士か!?」


 しかし、それ以降クラリスは返事をしなかった。リーナがどんなに扉を叩いてもまるで反応がない。


 それに、扉の鍵も閉めてしまっているようで、開けることもできなかった。

「クソ……仕方ない。次を当たろう」


 リーナは沈んだ面持ちで次の部屋へと向かった。


「……あー……クラリスは、根はいい奴なんだ。だけど、ちょっと……なんというか……粗暴な部分がある奴でな……まったく、仕方のない奴だよ。あはは……」


「うん。わかっているよ」


 なんとか取り繕うリーナに対して、ユウヤもあまり期待せずに返答したのだった。

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