第22話 聖女騎士団 3

「何ィ? コイツを騎士団に入れる!?」


 寂れた……とはいってもそこはやはり王の間。一応の豪壮さは呈していた。


 ノエル、ユウヤとリーナ、そして、騎士団の一行は王の間にて集められていた。


「そうだ。何か文句あるのか? クラリス」


「だ、だってよ!? 聖女騎士団、だろ? 聖女、っていうのは女って意味だろ? なのにコイツはどう見たってデカイ野郎だぜ?」


 その男勝りの言葉使いでそういうのか、とユウヤに突っこませながらも、先ほど虫を叩き潰そうとしていた少女はリーナに反論していた。


 短く切り揃えた赤っぽい茶色の髪の毛に、健康的な肌。


 俺のことを野郎と言ったが、言われなければ彼女も男に見えなくもない気がする。


「今はそんなことを言っている場合じゃない。少なくとも、ユウヤ殿はお前より、強いぞ、クラリス」


「はぁ? このデカブツが俺より強いって?」


 そう言われて少し苛ついたのか、リーナに食って掛かるクラリス。


「ま、まぁまぁ。二人とも、落ち着いて」


 明らかににらみ合いを続ける二人の騎士に先ほど、部屋の隅でビクビクしていた年上らしい女の子が仲介に入る。


「まず、リーナ。一体どういう経緯でこの方を騎士団に入れる用と思ったのか教えて頂戴」


「ですから、ステラ。ユウヤ殿は私の命の恩人なのです」


 リーナが少しもどかしそうに言う。


 一方のステラと呼ばれた少女……一見すると騎士には見えない。どこかのお嬢様という感じに見える金髪の品の良い少女だった。


 そのステラは、リーナの話を聞いて、仕方ないと言わんばかりに困り気味だった。


「……姫様。これは……」


 困ったステラはノエルに助けを求めるように目を向ける。ノエルは玉座に座ってその模様を眺めているだけだった。


「私は構わないと思います。既に私はその人の人となりを見定めましたから」


「そ、そうですか……」


 姫がなんとかしてくれると思ったのが当て外れだったので、ステラは少し落ち込んだようだった。


「お前らだってこんなデカブツがはいってきたら嫌だよな?」


 といって、クラリスが後ろの二人に声をかける。


 ユウヤがふとそちらに目をやる。


「ひっ……!」


 先ほど小さな虫を怖がっていた小さな女の子は――一応鎧を着ているのだが、鎧がその子を着ているといった感じである――脅えた瞳でユウヤを見る。


「わ、私は……どっちでも」


「なんだよ……ヒナノは?」


「僕もどっちでもいい」


 もう一人の女の子はユウヤそのものに興味がないと言わんばかりに先ほどからずっと本を読みふけっている。


 クラリスは呆れたように溜息をついた。


「はぁ~……そうだな。俺も正直、どっちでもいい。で、隊長も姫さんもいいって言ってんだろ? で、ステラは?」


「え? わ、私は……」


 ユウヤは、今度はステラの方に目を向ける。


 ステラはいきなりユウヤに見られてドキッとしたようで少し身をこわばらせた。


「い、いいんじゃないかしら……?」


 明らかに怖いからこれ以上関わりたくないという感じでステラは言った。


 まぁ、予想はしていたが、なんだか少しツライ。


 ユウヤは思わず溜息をついてしまったのであった。

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