第21話 聖女騎士団 2

「い、いやぁぁぁぁぁ! む、虫いやぁぁぁぁぁ!」


 巨体のユウヤでさえ耳を塞いでしまうような声。見ると、小さな女の子がしきりに部屋の中を走り回っていた。


「落ち着け! よーし! 俺が今叩き潰してやるからな~!」


 と、その小さな女の子を背中に隠して、壁に立てかけてあった箒を掴むと、壁に張り付いていた虫に向かって振り下ろした。


 しかし、それは外れてしまい、小さな虫は小さな女の子の方に走って行ってしまった。


「きゃぁぁぁぁぁ!」


 また女の子が大声をあげて逃げ回る。


「う、うるさいわよ! アナタ達! いい加減にしなさい!」


 と、部屋の隅っこで虫にビクビクしながらも、先ほどから騒ぎ立てる二人を怒鳴りつける、二人より少し年上そうな女の子。


「君達、ホントに、朝から元気だねぇ」


 と、その隣ではその騒ぎには全く無頓着で本とにらめっこしている女の子が机に向かっていた。


「……こ、これが騎士団?」


 思わずユウヤは口に出して言ってしまった。


 リーナが顔を真っ赤にしてユウヤを見るのがわかる。そして、部屋に足を踏み入れると、耳が劈けるばかりの大声を放った。


「いい加減にしろ! お前たち!」


 ユウヤもノエルも、付き添い従者二人も驚いてリーナを見た。


 そして、先ほどから幸いでいた騎士団の面々も目を丸くしてリーナを見る。


「……だ、団長」


「貸せ!」


 虫を潰そうとしていた女の子から棒切れを奪い取るとリーナは狙い済まして棒を床に叩きつける。


「おぉ~! さすが隊長!」


「す、すごいです~!」


「さすがね、リーナ」


「お見事~」


 面々がまるで敵の対象を討ち取ったのを褒めるかのようにリーナに拍手を送る。しかし、リーナの怒りは収まらないままだ。


「……お前達! 見ろ!」


 といってリーナの指差す方向を見四人。


 たちまち四人は顔色を変え、その場にひれ伏した。


「す、すいませんでしたぁ!」


 四人が完全に同時に謝罪を述べる。


 なんというか……このリアクションを見ると、かなり謝りなれている感じだ。


 ノエルは大きく溜息をつき、困ったような顔でユウヤを見る。


「これが……わが国の全戦力です」


「あ、あはは……」


 ユウヤもただただ愛想笑いをすることしかできなかった。

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