友達やめる?

シオン

友達やめる?

「は?友達やめる?」


 僕は礼華さんにそう告げた。それを聞いた礼華さんは信じられないと言いたげな表情をした。


「何考えてるの?このわたしと関係を断つなんて馬鹿なの?その理由を教えてくれないとわたしは納得しないわ」


「それは……」


「言いづらいことなの?でもはっきり言ってくれないと改善しようがないわ」


 そう言われ、決心した。期待はできないけど、どうせ別れるなら言うだけタダだ。


「礼華さん、気がついたら近くにいるし、友達と一緒にいるだけで怒るし、なんだか疲れちゃって……」


「そう……わたしは、あなたに負担を与えていたのね」


 礼華さんは意外にもすんなり僕の不満を聞いてくれた。これならすんなり別れてもらえるかも?


「でもね、あなたは危なっかしいの。わかる?あなたは人が良いから人に利用されるかもしれない。あなたはいい人だってわたしは知っているから、あなたには傷付いてほしくないの」


 彼女はそう言って僕を抱き締める。甘い匂いが鼻腔に引くつく。離れようにも力強い包容から抜け出すことは出来なかった。


「わたしと初めて出会ったとき、あなたはわたしに手を貸してくれた。何の見返りも求めず、ただ善意で助けてくれた。だからわたしはあなたの力になりたいの」


 大袈裟に言っているが、実際は礼華さんが一人で日直の仕事をしているのを見かねて手伝っただけだ。彼女は多分、人の善意に慣れていないだけだ。


「でも、困るよ。気にかけてくれるのは嬉しいけど、程度が過ぎるよ。僕達はもっと距離を置くべきだよ」


 彼女の逆鱗に触れないよう、言葉を選んだ。彼女はあまりに束縛し過ぎている。僕もだけど、彼女のためにもならない。


「……誰かにそう言われたの?」


 顔を見なくても礼華さんの機嫌が悪くなったのを感じる。抱き締める腕の力が強まる。いっそ苦しいくらいに。


「そうなんでしょ?優しいあなたがそんなこと言うはずないものね。あなたとわたしとの関係にケチつけたい連中に何か言われたんでしょ?」


「ち、ちが」


「許せない、私からあなたを奪おうとするなんて」


 彼女の抱き締める腕が、痛くて、苦しかった。そんな時間が続いた後、ようやく僕は解放された。


「でも安心して。誰に何を言われようと、あなたはわたしが守るから」


「あ、礼華さん……」


「だから、もう友達やめるって言わないでね?」


 僕は礼華さんに手を引かれて校舎を後にした。その手は、もう絶対に離さないと言わんばかりに力強かった。


おわり

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